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2023年8月 1日 (火)

クーラーは体によくないという妄念

 テレ朝news《高齢夫婦が自宅で死亡 エアコン使わず熱中症か…修理待ち? 90代夫「冷たすぎて嫌」》[掲載日 2023年7月31日 12:21] から下に引用する.
 
東京都内で、高齢の夫婦が自宅で死亡しているのが見つかりました。部屋にはエアコンがあったということですが、使われておらず、熱中症で亡くなった可能性があります。取材をすると、夫婦がエアコンを使用しなかった理由が見えてきました。
 
 ■エアコン電源入っておらず…熱中症死か

 この週末は、危険な暑さによる死亡事故が相次ぎました。
 29日、東京・東村山市の住宅で90代の夫と80代の妻がベッドで倒れているところを、自宅を訪れた介護事業者が発見。その後、死亡が確認されました。
 寝室に設置されたエアコンは電源が入っていなかったため、熱中症の可能性があります。
……(中略)
 日中は、エアコンを使用していたといいます。
 警視庁によりますと、電気を止められていたなど経済的な事情はなかったということです。
 
■エアコン修理は混雑?「早くて2、3日…」

 一方、番組の取材では新たな事実が分かりました。
 近所の方によりますと、夫はクーラーの風が直接当たると冷たすぎて嫌だと話していたということです。
 近所の人:「1週間前ぐらいですかね。ご主人の寝室のクーラーが風が当たりすぎて、『ご主人が冷たいって言うから、エアコンの移動を頼んでいる』って、(奥さんが)言っていました。風が当たらないように」
 エアコンの工事は混雑しているのでしょうか。市内のエアコン修理業者に聞いてみました。
 東村山市のエアコン修理業者:「今の時期だと早くても2日~3日お待たせしています。本体の交換となってしまうと、1週間以上お待たせしてしまうこともあります」
 業者を待っている間、夜はエアコンを止めてしまっていたのでしょうか。
 警視庁によりますと、夫婦が発見された際、窓は閉められていて、扇風機だけ動いていたということです。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 テレ朝ニュースは《取材をすると、夫婦がエアコンを使用しなかった理由が見えてきました》として《ご主人の寝室のクーラーが風が当たりすぎ》るので《エアコンの移動を頼ん》だのだが《今の時期だと早くても2日~3日》かかるので《業者を待っている間、夜はエアコンを止めてしまっていた》のが死亡原因だと推測している.
 
 しかし私はそうは思わない.
 三十年前の古い機種でもない限りは《クーラーが風が当たりすぎ》ることはあり得ない.
 現在のエアコン高級機は風向および風量を,リモコンで自由自在に変えられるし,AIで最適状態に自動運転もできる.
 普及型のエアコンでも,左右の風向調節は手動だとしても,上下方向の風向および風量はリモコンで細かく調節できる.それでも不満なら,部屋の上層と下層の空気を撹拌して均一にするためのサーキュレーターが市販されていて,それは安価だ.
 つまり《寝室のクーラーが風が当たりすぎ》るので,電器店に《エアコンの移動を頼ん》だという辺りで既に老夫婦は正常な判断力を失っていたのである.
 この夫婦は,エアコンの風が体に当たらぬように風向を調節できる,あるいは調節して使用するのがデフォルトだという知識がなかったのだ.
 おそらく取り扱い説明書を読んだこともなく,リモコンの使い方もわからなかったに違いない.
 この夫婦は,エアコンの正しい使い方 (もちろん就寝時用にタイマーがついていることも知らなかっただろう) がわからないので,寝る時はエアコンを切って扇風機を使ったのだ.しかも連続運転で.
 
 亡くなった男性は九十代だから私よりも二十歳くらい高齢であったが,この世代の高齢者 (もし九十歳だとすれば昭和八年生まれの戦前派だ) は「クーラー (戦前生まれ世代はエアコンを「クーラー」と呼ぶ) は体に悪い」「扇風機の風は体によい」という誤った考えに凝り固まっている人が多い.
 事実はその逆である.
 就寝時に扇風機を連続で運転し,風を体に当てたまま寝るのは体温の低下を招くから非常に危険なのである.いくら首振りにして間歇的に風が当たるようにしてもだめなのだ.「扇風機の風は体に悪い」のである.
 起きている時に扇風機を使用するとしても,寝る時は扇風機が短時間で切れるようにタイマーをセットしなければいけないというのはほぼ常識だが,「クーラーは体に悪い」「扇風機の風は体によい」との妄念に憑りつかれた高齢者は,もう誰がどのように説得しても聞く耳を持たない.扇風機をつけっぱなしにして,体が冷えて死に至るのである.
 
 先日,近所の高齢者知人から私の携帯にSOSのメッセージが着信した.
 クラクラと意識が遠くなって起き上がれない,動けない,というのである.
 慌てて駆けつけて居間に入ると,異様に室温が高い.エアコンの設定温度は29℃になっていた.
 ぐったりしている知人の体温を測ると37℃で,血圧を測定したら上が140を超えている.普段の血圧を訊いたら120くらいだという.
 明らかに熱中症である.
 ただちにエアコンの設定を26℃に変え,扇風機を「強」にして室内の空気を撹拌し,室温をがんがん下げた.
 そして血圧を測定しながら様子を見ていると,三十分ほどで意識がはっきりしてきたという.
 あぶないところだった.水を飲ませても大丈夫のようなので,舌を湿らすようなやり方で,少しずつ水分を摂らせた.急に水を与えると誤嚥して危険だからである.
 状態が安定してから,あれほど毎日のようにNHKがニュースの時間に「室温は28℃以下に」と言っているのに,なんでエアコンを29℃に設定したのかと訊ねた.
 すると「28℃に設定すると寒いのだ」と言う.
 私は「そもそも28℃を寒いと感じることが,熱中症の入口に立っているということなんだ」と説明した.
 高齢者は暑さを感じにくくなっているのである.適温をむしろ寒いと感じるのだ.(その解説は《高齢者はなぜ夏に寒がるの?なぜ年をとると暑さを感じにくくなるの?》[掲載日 2022年7月25日])
 それに,「室温は28℃以下にしましょう」の根拠は労働安全衛生法の「事務所衛生基準規則」であり,若い働き盛りの人たちの職場環境の話だ.体温調節機能が衰えた高齢者は,27℃以下にすべきだと私は考える.
 私は「エアコンの設定温度と室温が異なることはよくある」と説明し,正確な室温計を買えと指示した.(実は血圧計も私のものだ.意識がぼーっとしているとのことなので,最初は一時的な高血圧を疑い,私のものを持って行ったのである)
 
 話を元に戻すと,冒頭に示したテレ朝newsは大きな間違いを犯している.
 老夫婦の死亡理由は,彼らがエアコン嫌いで,扇風機を好んだことにある.死因は扇風機の連続使用だ.
 高齢者が就寝時に扇風機を連続使用したら,体温低下で死に至るのである.
 扇風機連続使用の原因となった「寝る時にエアコンの風が当たるから室内機の位置を変える」という非科学的妄念が大きな間違いであることを指摘するのが,責任ある報道というものである.
 
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ウクライナに自由と光あれ
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(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)


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