ラーメン黒歴史
ロケットニュース《【突撃取材】黒歴史トリオが話題の日清に「本当の黒歴史はタコヤキラーメンじゃないんですか?」と聞いたらこうだった》[掲載日 2017年6月27日] におもしろい記事が載っていた.以下に引用する.
《いま、日清の「黒歴史トリオ」が熱い。2017年6月、日清が「全く売れなかった3商品を再販します」と発表したところ、ネットを中心に大きな反響を呼んでいる。本来なら触れられたくない黒歴史を自らさらけ出すとは……さすが天下の日清さんとしか言いようがない。
──だがしかし、ネットの一部からはこんな声もチラホラ聞こえてくる……。「日清の本当の黒歴史は『タコヤキラーメン』なのではないか?」と。むむむ、遥か昔に発売された話題のラーメンであったが、確かに『タコヤキラーメン』という響きから漂う黒歴史臭はエゲツない。これは直接聞いてみるしかあるまい……日清さんに。》
《──黒歴史トリオが話題になっていますが、ネット上では「タコヤキラーメンこそ黒歴史だろ」という声があがっています。
「そのような声があること自体は存じていました」
──なるほど。正直、今回発表された黒歴史トリオよりもタコヤキラーメンの方が黒歴史っぽい感じがするのですが、日清さん的にはどうなのでしょうか?
「はい。まずタコヤキラーメンは、1985年から2年間に渡り販売されております。30年以上前とはいえ、2年もの間発売し続けたということは、簡単にいえば売れなかった商品ではありません」
──確かに。今だと2年も販売する商品なんてレアですもんね。
「はい。新商品の数が今とは違うので一概には言えませんが、それでも我々としては手応えのあった商品の中に入るかと思います」
──なるほど。
「ご承知の通り、ダンプ松本さんのCMはかなりの話題になりましたし、いまだに皆様のご記憶にあること自体が黒歴史ではなかった証明ではないでしょうか? 残念ながら、今回発表した黒歴史トリオをご記憶の方は、ほとんどいらっしゃらないでしょうから……」
──な、なんかすみません……。
言われてみれば、30年以上前に発売され、そして姿を消したにもかかわらず、いまだに忘れられていないカップラーメンなどそう多くはあるまい。つまり日清的には、タコヤキラーメンは黒歴史でも何でもなく「人類に忘れ去られていた黒歴史トリオの方がよっぽど黒歴史」とのことであった。
というわけで、タコヤキラーメンは黒歴史じゃない! むしろ輝かしい歴史!! 本当の黒歴史たちは、7月3日から発売されるぞ。気持ちよく回答してくれた日清さん、どうもありがとうございました。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
私が研究開発部門に所属していた1990年頃,技術屋でもマーケティングの知識は必要だというわけで,民間業者が開催した有料セミナーに何度か参加したことがある.
そのうちの一つで「市場調査と商品開発」というセミナーがあった.
その当時に使っていた手帳をみると,幾つかの講演の一つは,日清食品のかたが講師であった.
今から三十年以上も前のこと.その昔の食品業界では,商品開発はプロダクトアウト式ばかりであった.要するに「一人よがりの思い付き」だ.
しかし日清食品は先進的に「市場ニーズ」の調査に基づく商品開発に取り組んだ.以下に,その概略をセミナー受講した際のメモ書きを基に記す.
カップ麺の具材に何がいいだろうか?
そういう消費者の嗜好について,日清食品は都市部で街頭調査 (街頭アンケート) を実施した.
その結果,「タコヤキ」が具材の候補に浮かび上がった.
しかも「タコヤキ」は,若い女性の強い支持があった.
調査に応じてくれた消費者をセグメンテーションすると,「若い」×「女性」という属性のセグメントにおける「タコヤキ」支持が突出していた.つまり今の言葉でいうと商品コンセプトが「とがっている」のが「タコヤキラーメン」だったのである.
昔も現在も,都会の若い女性たちは流行の担い手だ.
「タコヤキラーメン」はきっと売れる.そのように自信をもって日清食品は「タコヤキラーメン」を世に送り出した.
しかし結果は期待を裏切った.
発売当初はそこそこ売れたが,すぐに失速した.
だが,期待の商品だっただけに,終売の決定までに二年を要したのであった.
セミナーで,講師の日清食品のかたは「なぜ市場調査に反してタコヤキラーメンは失敗したのか」という理由は述べなかったが,今ならおよそわかる.
すなわち「若い」×「女性」という属性のセグメントの性質を把握できていなかったのである.
若い女性たちは,次から次に現れる新しい食べ物に群がるが,暫くすると興味関心を無くす.
新しい流行を取り入れて古いものをどんどん捨てて顧みないのが,当時も今も彼女らの消費行動原理だ.
そのような消費行動を見定められなかったのが,タコヤキラーメンの敗因だったといえる.
《タコヤキラーメンは、1985年から2年間に渡り販売されております。30年以上前とはいえ、2年もの間発売し続けたということは、簡単にいえば売れなかった商品ではありません》と日清食品の現在の広報担当は言うが,それには少し無理がある.当時の食品業界では,セミナーで失敗のケース・スタディに取り上げられるくらいタコヤキラーメンは商品開発の失敗例として認識されていたからである.
さて,街頭調査を用いた商品開発の失敗例としてタコヤキラーメンが有名だが,調査データと実際の消費行動の食い違いについて説明するのが行動経済学だ.
東洋経済オンライン《名だたる企業が「アンケート調査」に大失敗する訳 あのマクドナルドでも苦戦してきた》[掲載日 2023年6月16日 14:00] が行動経済学について解説しているので下に引用して紹介する.
《多くの企業でマーケティングリサーチとして取り入れられている「アンケート調査」。一見、消費者のニーズを吸い上げる最適な方法に思えますが、実はあの「マクドナルド」もアンケート調査で失敗するといった結果が出ています。
私たちはついつい消費者に直接聞けばいいと思いがちですが、しかし、「アンケートを書いているときの消費者」と「実際に商品を買うときの消費者」は果たして同じでしょうか。その齟齬が、マーケティング調査の失敗を生み出しています――。》
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ウクライナに自由と光あれ
(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)
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