動物を擬人化してはいけない
PRESIDENT Online《「犬は主人に対して忠誠心を持つ」は間違い…科学的研究でわかった犬が本当に考えていること【2022編集部セレクション】》[掲載日 2023年5月7日 8:15] から下に引用する.
《2022年下半期(7月~12月)にプレジデントオンラインで配信した人気記事から、いま読み直したい「編集部セレクション」をお届けします――。(初公開日:2022年11月23日)犬と接するときはどんなことに気を付けるべきか。ドッグトレーナーの鹿野正顕さんは「犬を擬人化してはいけない。あくまで動物であり、常に本能で動いている。人間側の一方的な思いや価値観で犬と接してはいけない」という――。(第3回)
※本稿は、鹿野正顕『犬にウケる飼い方』(ワニブックスPLUS新書)の一部を再編集したものです。》(引用中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
鹿野正顕氏はドッグ・トレーナーである.その立場から《犬を擬人化してはいけない。あくまで動物であり、常に本能で動いている。人間側の一方的な思いや価値観で犬と接してはいけない》と述べているが,これは犬だけでなく広く動物一般を「擬人化して接してはいけない」と言い換えていい.
コロナ禍以降,犬や猫やウサギなどを遺棄する動物愛護法違反行為が激増しているが,捨てる動機の一つに「自分 (飼い主) の思い通りにならないから嫌になった」というのがある.
酷い場合には,保護犬を引き取っておきながら,嫌になって捨ててしまう者もいるらしい.(下野新聞社《「飼いきれない」、相談寄せられる 譲渡犬引き取り慎重に 県動物愛護指導センター》[掲載日 2023年5月8日])
この,飼い主の「動物を自分の思い通りに支配したい」という気持ちこそが,鹿野氏の言うところの《人間側の一方的な思いや価値観》なのである.
犬や猫などを人間の子供のように擬人化することは,飼い主の「なんでこれくらいのことができないんだ!」「なんでこんなことをするんだ!」という怒りの原因になる.そして怒りは「しつけ」という虐待に転化しやすい.(頻発する児童虐待事件で,嗜虐傾向のある親が子供に暴力をふるう際の口実が「しつけ」だが,それと同じだ)
鹿野氏が《犬を擬人化してはいけない》と言うのは,犬を飼い主の虐待から守りたいという思いの表れであろう.
犬や猫などの動物が《常に本能で動いている》かは議論のあるところだろうが,確かなことは,人間とは同じ世界に生きているわけではないということだ.
これが理解できない人は,ペットにも人間と同じように知性や愛情という感性があると思い込む.
このことについて最近,典型例があったので紹介する.
まいどなニュース《迷子の鳥を探すチラシに「無理じゃん?」 眞鍋かをりさん、番組での“嘲笑”発言に批判集まる 「人の気持ち分からないのか」「見つかる事例もあるのに」放送回は急遽配信終了》[掲載日 2023年5月7日] から下に引用する.
《BS朝日で5月5日に放送された番組「ネコいぬワイドショー」での、女優・眞鍋かをりさん(42)の発言に批判が集まっています。眞鍋さんは迷子の鳥を探すチラシについて「(見つけるのは)無理じゃん」と笑いながら“いじる”ような発言をしました。SNSでは「愛鳥にもう一度会いたいと願っている視聴者もいるだろうに」「何がそんなに面白いのか全く理解できない」といった声が広がっています。発言があった放送回の見逃し配信は停止されています。》
眞鍋かをりさんの発言に対するSNS上の批判の中には妥当なものもあるが,ちょっとヒステリックな擬人化をした投稿があった.
批判の中からまいどなニュースの編集部が抜粋したものを,記事のスクリーンショットで下に引用する.
《鳥さんの知性、感受性、そして愛情深さ》は,鳥にとって迷惑な擬人化である.
文鳥やインコが,掌に乗ったり肩にとまったりして飼い主に馴れるとかわいいものだが,その鳥の行動は,知性とか感受性や愛情深さとは別のことだ.
私たちの頭の中の「知性」「感受性」「愛情深さ」をリアルの文鳥に投影したものが,文鳥の「知性」「感受性」「愛情深さ」なのである.文鳥が「知性」「感受性」「愛情深さ」を持っているわけではない.
いわば私たちは犬や猫やウサギや文鳥を飼うことで,自分の「絵本」を作っているのだ.
その「絵本」の中で,ピーターラビットは上着を着て走り,ごん狐は兵十にした悪戯を後悔する.
(パブリックドメイン画像,Wikimedia Commons File:Peter Rabbit first edition 1902b.jpg)
私たちは幼児期を過ぎれば,自分が思い描いた「絵本」の犬や猫やウサギがリアルではないことを自然に理解する.
しかし私たちは,自分の「絵本」をそのまま胸に残しておいて,リアルの動物を飼うことがあれば,動物たちにその「絵本」を投影することができる.
言い換えれば,動物を飼育し,擬人化せずに彼らのありのままを愛することは,同時に自分の心の中にある知性や感受性や愛情深さを愛おしむことである.
鹿野正顕氏が《犬を擬人化してはいけない》と言う通り,私たちは,虐待に繋がる《鳥さんの知性、感受性、そして愛情深さ》の類の幼児性を卒業して,動物たちのありのままを愛するように心したい.
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ウクライナに自由と光あれ
(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)
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