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2023年5月23日 (火)

弱者を置き捨てて銀行はキャッシュレス化を推進する

 三菱UFJ銀行は,昨年四月以降に開設された普通預金口座は「紙通帳利用手数料」を取っている.年額五百五十円だ.
 みずほ銀行はそれ以前から,新規開設口座は紙通帳発行手数料を徴収している.また古い紙通帳は自動的にデジタル口座に移行されてしまっているので,紙通帳は持っていてももう使えなくなっている.
 
 先日,ある銀行から「お客様の口座の利用目的について」というアンケートが来た.
 私はその銀行口座を,通販代金の引き落としのみに使用していて,従って残高は少額だ.
 その銀行は私の個人情報を把握しているわけだからアンケートに嘘を書いても仕方がない.調べられればわかることだから,その旨 (通販代金用支払い用の口座である) を回答して返送したのだが,その銀行は,アンケートを取って何をしようとしているのか.
 以前から言われていることだが,銀行にとっては余計なコストでしかない個人口座 (私の口座がまさにそれだ) は,維持費用を徴収したいのだろう.
 そう遠くない時期に,少額残高口座からは維持費用を徴収すると言ってきそうだ.
 
 また先日,三菱UFJ銀行は銀行振込手数料を大幅に値上げした.メディアの報道によると,みずほ銀行と三井住友銀行も追随するだろうとのこと.
 この値上げにより,例えば古書通販のように銀行振込を主たる送金方法にしてきた商売は大きな影響を受けると思われる.例えば三百円の古書を買う人はそれを上回る振込手数料と送料を払うことになり,それなら新刊書店で買うほうがよいからである.
 このように,銀行振込手数料の大幅値上げは,通販代金のキャッシュレス化を促進するだろう.
 
 未確認情報だが,メガバンクは店舗外に設置してあるATMを撤収し始めているという.銀行ATMは,銀行にとってお荷物以外の何物でもないというのだ.
 そのうちに,銀行の実店舗に設置してあるATMはさすがに撤収できないから,使用料を大幅値上げするのではないか.
 こうして「紙通帳+キャッシュカード」を基礎とする現金払いの時代は終わる.
 高齢者は否応なく「ネットバンキング+キャッシュレス決済 (クレカ含む) 」に適応しなければならない.
 ある日,テレビを観ていたら,近畿地方の日本海側のある小さな町のことがドキュメンタリ番組で放送されていた.
 その町は高齢者が多く,また商店もないので買い物難民ばかりであるが,ありがたいことに軽トラの移動スーパーがやって来る.
 その町の老人たちは,振り込まれた年金をATMで現金に換え,日々のお惣菜やお菓子を移動スーパーで買うのを楽しみにしているという話だった.
 しかしこういう暮しにも,町からATMがなくなり,キャッシュレス決済の波が押し寄せてくると,買い物の代金をオンライン決済し,その決済手数料を,半分社会事業みたいな零細移動スーパーと,年金暮しの老人たちの,どちらが負担するのかという話になって来る.
 もちろんそれに加えて,老人たちはスマホを購入した上に,乏しい年金から通信費を払わねばならない.
 しかしそんな時代になっても,銀行は自分が儲かればいいのであって,キャッシュレス化の結果,たとえ老人たちが日常生活で困っても痛痒を感じない.
 だとすれば,政府と通信事業者は,老人用のツールと通信プランを考えるべきではないか.
 
 ちなみに私は現在,日常の買い物には交通系電子マネー (Suica) を使用しているが,クレジットカードからのチャージは,駅に設置されている VIEW ALTTE (ビューアルッテ) か多目的券売機で行う.コンビニでもチャージできるけれど現金が要る.
 この点が,システム的に無理なのかも知れないが,微妙に中途半端.
 交通系電子マネーは,ユーザー側にはなんの操作もいらないので,その点はいいのだが,チャージに現金が必要な場合があるという難点がある.
 じゃモバイルSuicaはどうか.重い財布を持ち歩きたくないのに,もっと重いモバイルSuicaは嫌いだ.引きこもり老人である私は,必要もないのにスマホを持ち歩きたくない.ヾ(--;) 
 いずれにせよ,高齢社会の年金生活者や,過疎化地域の買い物難民に一番やさしいシステムは現金払いである.
 現金払いに手数料はかからないからだ.
 そういえば,米国の諺 (proverb) で「現金は貧民のクレジットカードである」というのがあった.
 カード社会の米国では,銀行口座も,銀行口座に紐づけられたクレジットカードも持っていない貧困層の最後の手段が手持ち現金だという意味である.
 その英語原文を知りたいと思って検索しているのだが,出てこない.これは「忘れられた諺」なのかな.
 
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ウクライナに自由と光あれ
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(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)


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