武田アナの反省
ハフポスト日本版《武田真一アナ、性加害が告発されたジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子社長の対応にコメント。締めの一言に「本当にその通り」の声》[掲載日 2023年5月15日 12:12] から下に引用する.
《武田アナ、ジャニーズ性加害疑惑報道への考えと反省述べる
武田アナは「私も報道の現場に長くいましたけれども、この間、こうしたことで、ニュースとして伝えるべきことなのかどうかということをですね、突き詰めて議論したり、考えたりすることをしてきませんでした」と話を切り出した。
続けたのは、ニュースを報じるメディアとしての責任に対する言葉だった。武田アナは「藤島氏が、自らも積極的に知ろうとしたり追求しなかったことについて責任があると考えているとしていますけれども、同じ責任を伝える側としても今感じています」とコメント。武田アナは、メディアの責任に触れた上で「わだかまりなく(タレントを)応援できる状況を作って欲しいと思います」と伝え、ニュースを締めくくった。
この言葉に対し、SNSでは「本当にその通り」「伝えてこなかったメディアにも責任がないとは言えないからね」などとさまざまな反応が寄せられた。特に、武田アナの締めの一言は、結果として、ジャニーズ事務所の所属タレントを応援するファンの言葉を代弁するかたちにもなっていた。》
ハフポストの記事に違和感がある.
武田アナは,テレビの責任について述べているのであって,全メディアの責任について反省の弁を述べているのではないのだ.
私がまだ大学生だった1960年代から,一部週刊誌がジャニー喜多川のタレントに対する「少年愛」と変態性欲的行為について散発的に報道していた.
ジャニー喜多川の変態的ハラスメントを世に知らしめたのは,やはり『噂の眞相』と週刊文春だろう.
両誌とも影響力の大きい雑誌だったから,芸能界に無関心だった私でも,ジャニーズ事務所を舞台にしたこの醜聞のことは知識として記憶に残った.
それは私だけではなく,この大スキャンダルは広く国民のあいだに知れ渡った.すべての新聞と,NHKを含む全テレビメディアはジャニーズ事務所のスキャンダルを報道しなかったが,週刊文春は,芸能界の一大権力と化したジャニーズ事務所と対峙した.
Wikipedia【ジャニー喜多川】には次の通りに書かれている.
《週刊文春への民事訴訟
1999年(平成11年)、『週刊文春』がジャニーズ事務所に関する特集記事、「ホモセクハラ追及キャンペーン」を掲載し、喜多川が所属タレントに対して性的虐待を行い、事務所では未成年所属タレントの喫煙などがあると報道した。これらの記事は衆議院の特別委員会でも取り上げられ、自民党所属の衆議院議員だった阪上善秀が2000年(平成12年)に、この問題を衆議院の「第147回国会青少年問題に関する特別委員会」で取り上げた。これに対し、ジャニーとジャニーズ事務所側は記事が名誉毀損であるとして、文春に対し1億円あまりの損害賠償を要求する民事訴訟を起こした。
2002年(平成14年)3月27日の一審判決では記事で証言した少年2人も出廷したものの東京地裁は、文春側に880万円の損害賠償を命じた。そのため、文春側はこれを不服として東京高裁に控訴した。地裁は少年らの供述の信用性を認めず、週刊文春が一審で敗訴した際には、日本のテレビや新聞などメディアは大きく取り上げた。
2003年(平成15年)7月15日の二審判決では、「ジャニーが少年らに対しセクハラ行為をしたとの証人少年A、同少年Bの各証言(一審と共に法廷で証言)はこれを信用することができ、これらの証拠によりジャニーが、少年達が逆らえばステージの立ち位置が悪くなったりデビューできなくなるという抗拒不能な状態にあるのに乗じ、セクハラ行為をしているとの本件記事は、その重要な部分について真実であることの証明があったものというべきである」としてジャニーによる所属タレントへの性的虐待を認定した。このため、性的虐待部分の勝訴は取り消され、損害賠償額は一審の850万円から120万円に大幅に減額された。今度は、ジャニー側が損害賠償額を不服として最高裁に上告したが、2004年(平成16年)2月24日に最高裁から棄却された(藤田宙靖裁判長)。最終的に120万円の損害賠償・ジャニーによる所属タレントへの性的虐待は事実であるとの認定が確定した。
2005年に『ニューヨーク・タイムズ』、『オブザーバー』などの世界各国のメディアでも週刊文春との裁判結果取り上げられ、ジャニーの性加害問題をタブー視して、一切報道しない日本のテレビや新聞の姿勢を指摘した。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
このように,週刊文春vsジャニーズ事務所の争いは,二審判決で文春の勝利に終わったが,それ以後も新聞とテレビはジャニーズ事務所に忖度して,ジャニー喜多川の死以前には,同氏の変態性癖を報道することはなかった.
この頃から,それまで二流のメディアと目されていた週刊誌の威力が国民の注目するところとなった.現在の,いわゆる文春砲の誕生であった.
権力内部の醜聞には決して触れようとしない新聞とテレビの地位は,大きく下落した.そして権力内部にいる国会議員は,文春発売日の前日になんとかして同誌を入手しようとするまでになった.(書店店頭に並べられる前に文春は,出版物の流通経路から国会議員の手に入るようになったことは周知の通り)
繰り返すが,ハフポスト日本版の記事にある武田アナの述懐は,事実報道媒体としてのテレビが地盤沈下し,週刊誌メディアの後塵を拝するまでになったことに対する,テレビ人としての反省に違いない.しかるにSNSのユーザーたちが武田アナの反省を歪曲して《伝えてこなかったメディアにも責任がないとは言えないからね》などと,週刊誌の健闘をなかったかのように言うのは笑止としか言いようがない.
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ウクライナに自由と光あれ
(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)
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