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2023年5月 9日 (火)

ルパンたちは平気で吸い殻ポイ捨てをする

 先週の日本テレビ《金曜ロードショー》で《ルパン三世 カリオストロの城》を放送した.
 これは何しろ古い映画 (1979年) で,ストーリーの記憶も薄れていたのだが,観直してみて「やっぱりなー」と思ったのは喫煙シーンの多さである.昔の映画では,喫煙シーンのない作品のほうが珍しいのだ.
 言わずもがなであるが,映画作品に喫煙シーンがあることには何の問題もない.これは合法とか非合法とかの問題ではなく,表現の自由の問題である.小説や映画の中なら,登場人物は麻薬でも覚醒剤でもやり放題なのだ.なんならトトロが猫バスのバス停でシャブを打っても構わない.
 ただし,その喫煙シーンに必然性があるかどうかが,作品の評価において問われる.
《カリオストロの城》では,次元大介もルパンも,やたらに吸い殻をポイ捨てするのだが,この吸い殻ポイ捨てが,この物語にとってどうしても必要なことなのか,が問われるのである.
 宮崎駿監督はヘビースモーカーとして知られ,他の作品でも登場人物が傍若無人な喫煙者であることが有名だ.
 例えば『風立ちぬ』では医師や薬剤師らで構成する禁煙推進団体「日本禁煙学会」がクレームを付けている.
 この件について,弁護士ドットコム《宮崎駿監督の「風立ちぬ」は「未成年者喫煙禁止法」に違反するのか》[掲載日 2013年9月8日 19:30] から下に引用する.
 
引退会見を行ったスタジオ・ジブリの宮崎駿監督。その最後の長編映画となった『風立ちぬ』をめぐって、夏休み期間中にネットをにぎわせたのが「タバコ論争」だ…
……
 発端は、禁煙学会が8月12日、映画の制作者に対して提出した要望書だ。そこでは、『風立ちぬ』のなかに喫煙のシーンが何回も登場することを問題視。特に、結核患者のすぐ横でタバコを吸ったり、学生がもらいタバコをするシーンが問題だと指摘していた。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 弁護士ドットコムの記事中で弁護士が『風立ちぬ』に法的な問題はないと述べている.
 その通りである.結核患者のすぐ横で喫煙しても法的な問題はない.このシーンは表現の自由で守られる範囲のことだ.
 だがしかし,宮崎監督は「表現の自由のためなら結核患者に副流煙を吸わせても構わない」「表現の自由のためなら吸い殻をポイ捨てしても構わない」という人物であることを私たちは知っておく必要がある.
 私はかつて喫煙者だったが,吸い殻のポイ捨てはしたことがない.吸い殻のポイ捨ては喫煙者として見苦しい行為であると思うので,《カリオストロの城》の吸い殻ポイ捨てシーンに,作品上の必然性があるとはどうしても思えない.
 もちろん作品と作者の人間性は切り離して評価されるべきである.ロクデナシでも後世に残る文学作品を残した例はある.
 ついでにいうと,教祖がロクデナシでも,法律上,信仰の自由は守られねばならないのと一緒である.サリンを撒けば死刑になるが,壺を売って信者からカネを巻き上げたくらいでは,我が国は教団を解散できないのが現実だ.
 閑話休題
 倉本聰もヘビースモーカーで,宮崎駿と同じ考えを持っている.
 例えば名作『北の国から』が喫煙シーンまみれであることは有名だ.
 これについては,JCASTニュース《倉本聰「タバコの表現削れと言われたら筆を折る」 ネットで「時代の変化が分かっていない!」と大バッシング》[掲載日 2013年10月31日 18:29] から下に引用する.
 
ドラマを作るうえで喫煙シーンは重要だし、愛煙家が逆賊的な扱いを受ける風潮は許せない、とし、「タバコのシーンを削除するように言われたら台本は取り下げる」とインタビューで語った。ネットでは改めて喫煙シーンをどうあるべきかの議論が再燃している。
 倉本さんのインタビューが掲載されたのはウェブサイト「NEWSポストセブン」が2013年10月30日に配信した「喫煙シーン検閲『たばこ描けないなら作品書かぬ』と倉本聰氏」というタイトルの記事だ。最近は過剰ともいえるタバコバッシングに制作者サイドが配慮するようになり、時代背景や世相を映す小道具としてさえ使いにくくなっている、などと説明している。
 倉本さん自身は1日に60本から80本、50年以上も吸い続けていて「3本目の腕、2個目の脳」と公言するほどの愛煙家だという。心の豊かさを与えてくれる必需品であり、自分にとって作品を書くのに欠かせないもの、
「百害あって一利なしと理解してもらえないなら、筆を折るしかないですね(笑い)」
僕の作品でたばこを吸うシーンを削ってくれなんて注文されたら、その台本は取り下げますよ」と憤慨している。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 倉本聰の《最近は過剰ともいえるタバコバッシングに制作者サイドが配慮するようになり、時代背景や世相を映す小道具としてさえ使いにくくなっている》《僕の作品でたばこを吸うシーンを削ってくれなんて注文されたら、その台本は取り下げますよ》という意見は何ら間違いではない.同感だ.『北の国から』が喫煙シーンまみれなのは,表現の自由の範囲のことだからである.
 ただし,『北の国から』には,純がファミレスの禁煙席で喫煙するシーンがある.
『北の国から』という物語にとって,禁煙席での喫煙にどんな意味があるのか.私にはどうしても理解がゆかぬ.
 
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ウクライナに自由と光あれ
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(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)


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