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2023年5月25日 (木)

クドア食中毒

 山陰中央テレビ《飲食店で食中毒「海鮮丼」を食べた6人が嘔吐などの症状「ヒラメ」の刺身に寄生虫》[掲載日 2023年5月25日 19:46] から下に引用する.
 
22日、浜田市の医療機関から保健所に食中毒が疑われる患者が受診したと連絡があり、保健所が調査したところ、22日午後2時から午後10時の間に、大田市の飲食店で海鮮丼を食べた60代から70代の男女6人が嘔吐や下痢、発熱などの症状が訴えていることが分かった。
 さらに検査したところ、患者の便から寄生虫「クドア・セプテンプンクタータ」が検出され、保健所はこの飲食店が原因の食中毒であると断定、2日間の営業停止処分とした。
……
 寄生虫「クドア・セプテンプンクタータ」はヒラメに寄生することが知られていて、海鮮丼にもヒラメの刺身が入っていた。
 保健所によると、この寄生虫は冷凍(ー20度で4時間以上)か、加熱(中心温度75度で5分以上)することで病原性が失われることが確認されている。
 
 クドアは海産魚類に寄生することで知られる粘液胞子虫である.そのうちのクドア・セプテンプンクタータは和名ナナホシクドアといい,食中毒寄生虫として知られている.
 Wikipedia【クドア】に《2011年に愛媛県で韓国産養殖ヒラメの生食を原因とする集団食中毒が起きたことで発見された。症状は下痢や嘔吐であるが、軽症で自然回復し、周囲へ拡大することもないため社会的リスクとしてはごく小さい》と書かれている.
 クドアは,ジェリーミートの原因としても有名である.ジェリーミートは「スーパーや鮮魚店で買ってきた魚を煮たり焼いたりしたら身が融けてしまった」という現象で,そう頻繁に消費者が遭遇するわけではないが,レアではない.パル・システムのサイトから下に引用する.(引用元)
 以下,ジェリーミートについて記す.
 
魚を焼いたら身がドロドロに溶けてしまいました。2022/6/17更新
 ゼリーミートと呼ばれる現象が考えられます。
もともと魚に寄生した胞子虫に由来するタンパク質分解酵素が、お魚が死んだ後に働きだすことで、生じる現象です。 どの魚でも起こり得るものですが、中でもさば、鮭、銀だらなどに多く見られる傾向があります。
 ゼリーミート現象は30~60℃の温度帯で進みます。そのため冷凍状態で発見する方法は確立されておらず、製造工場での発見は困難となっております。
胞子虫はヒトには寄生しないため、ゼリーミート現象を起こした魚を食べたとしても人体に影響はございません。
 しかし本来は商品としてお届けすべきではない品質のため、このような商品を発見した場合は、お手数ですがご連絡ください。
 
 粘液胞子虫に寄生された魚体には,液化した小豆粒大の空洞が見られる.
 この空洞は,加工せずに販売する魚では発見できないが,おろしたり切り身にしたりすれば発見できると鮮魚店の専門家はいう.
 魚が死んだあと,筋肉の融解が始まっていれば,魚屋の者には「これはジェリーミートだ」と判別できるという.
 ところが「この切り身を買った客は,煮魚にしたらスライムになっちゃうから驚くだろーなー」と思いつつ,販売する魚屋がいるのである.
 私が初めてジェリーミートを見たのは,東海道線藤沢駅北口にあるデパート「さいか屋」の地下にある「魚の北辰 藤沢さいか屋店」で購入したカレイの切り身を煮たときである.
 鍋にカレイの切り身を入れ,ヒタヒタの水と調味料を加え,それにアルミホイルで作った落し蓋を載せて火を着けた.
 そろそろ煮上がっただろうと思って落し蓋を取ったら,鍋の中にあったのはスライムだった.カレイが転生したらスライムだった件だ.w
 これが初見だったので驚いてウェブを検索したら,これがジェリーミートだった.
 料理初心者のお嬢さんが煮魚を拵えたとしよう.しかし鍋の中を覗いたら,そこにはドロドロのスライムが……
 これを見たら必ずや長きにわたるトラウマとなるであろう.そのくらいにジェリーミートは不気味である.
 サルモネラ菌とかカンピロバクターとか,細菌は肉眼では見えないからホラー的な怖さはないが,寄生虫は心理的に怖い.
 実は,クドア・セプテンプンクタータは一個体では肉眼では見えない.しかし「偽シスト」という形態を取った時は魚肉に小斑点として観察されるので感染がわかる.《食品安全委員会微生物・ウイルス専門調査会 (第54回) 「資料2 クドア属粘液胞子虫について」(平成24年9月10日)》
 ところがヒラメの場合は特殊で,クドア・セプテンプンクタータの偽シストは判別しにくく,かつジェリーミートにもならないという.
 そのため,クドア・セプテンプンクタータ感染したヒラメを喫食したことによる食中毒が後を絶たない.
 しかも,冷凍するとクドア・セプテンプンクタータは死滅するのだが,ヒラメは冷凍すると食味が劣化するため,冷凍せずに提供される.
 マグロもクドアに感染するが,マグロは冷凍技術が確立しているので,冷凍することでクドア食中毒を回避できる.これに比較して,食中毒防止の観点からするとヒラメは非常に困った魚なのだ.
 この記事の冒頭に紹介した山陰中央テレビの報道記事だが,これは「後を絶たないヒラメの食中毒」の一事例なのである.
 厚労省は公式サイトに「ヒラメのクドアによる食中毒」発生状況を記載している.
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     事件数 患者数
平成25年  21   244
平成26年  43   429
平成27年  17   169
平成28年  22   259
平成29年  12   126
平成30年  14   155
令和元年  17   188
令和2年   9    88
令和3年   4    14
令和4年  11    91
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 これを見ると,令和二年以降,「ヒラメのクドアによる食中毒」発生が減少しているように見える.
 厚労省はこの理由を《農林水産省及び水産庁では、食中毒防止策として、ヒラメの養殖場での適切な管理により、クドアがヒラメに寄生することを防止する取組みを行っており、食中毒数は低下しています》としている.(厚労省《クドアによる食中毒発生状況
 幸いなことに「ヒラメのクドアによる食中毒」の症状は軽いのだが,しかし体力の低い高齢者はどうなるか保証の限りではない.
 残り少ない余命を全うしたくば,ヒラメの入っている海鮮丼に手を出さぬのがよい.ヒラメの刺身や握りずしもね.
 
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ウクライナに自由と光あれ
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(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)


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