定型判決
テレビ静岡《横断歩道で死亡事故…84歳に執行猶予付き判決 「過失大きいが免許更新せず反省」地裁沼津支部》[掲載日 2023年5月10日 20:35] から下に引用する.
《2022年 静岡県熱海市の国道の横断歩道で87歳の女性が車にはねられ死亡した事故で、裁判所は運転していた84歳の男に執行猶予のついた有罪判決を言い渡しました。
判決公判で静岡地裁沼津支部の室橋秀紀裁判官は「横断歩道にすら気づかず、注意義務を怠った過失は大きい。横断歩道を渡っていた被害者に落ち度はなく、取り返しのつかない重大な結果」と指摘しました。
一方、「被告は過失を認め、運転免許を更新せずに反省している」として、男に対し禁錮2年6カ月 執行猶予4年の判決を言い渡しました。》
発達した民主主義国家においては,法律は国民の注視の中で,複数政党の議員による議論に基づいて多数決により制定される.
このシステムにより法律は,自ずと論理的で良識的な内容となることが多い.
ところが裁判の判決文は,国民の眼の届かないところで少数の人間によって作成される.
それ故,日本語として意味不明な文章が,判決文として堂々と,しかも唐突に国民の前に現れる.
上に引用した静岡地裁沼津支部の判決文はその一例だ.
執行猶予四年ということは,刑の言い渡し後の四年間,おとなしくしていれば実質的に無罪を勝ち取ったのと同じことになる.
人ひとり殺しても,のうのうと縁側で渋茶をすすれるのである.
反省だけならサルでもできるというのは昔の流行り言葉であるが,クルマを運転している時に横断歩道も歩行者も視認できぬくらいに耄碌している人間が,そもそも人殺しをしたことの反省なんかできるはずがないじゃないか.
それに,《過失を認め、運転免許を更新》しないなんてのは反省のうちに入らぬ.過失を認めることは,反省以前の,公判に必要な単なる事実認定手続きだ.
そのような「反省以前の単なる事実認定」をすれば《取り返しのつかない重大な結果》を,なかったことにできると述べるのは,物事の軽重を判断できない小学生以下の作文力である.
まともな運転ができないのに運転免許の返納をしなかったというだけで,収監に値すると私たち国民は思う.
しかし室橋裁判官は実質無罪を言い渡した.それなら室橋裁判官は,もっと私たちにわかりやすく「被告が《横断歩道にすら気づかず、注意義務を怠った過失は》なんて大したことないし,《横断歩道を渡っていた被害者に落ち度》はないけれど,被害者は87歳だからもう死んでもいい歳だったと考えられる」とでも判決文に書けばいいのである.
被告のやったことは重大だが実質無罪である,というのは論理的におかしい.罪があるなら罰せられねばならないからだ.
室橋裁判官の理屈に従えば,交通事故で四人殺しても五人殺しても十人殺しても,《過失を認め、運転免許を更新》すれば執行猶予が付くということになる.
いったい何人殺せば収監できるのか,それを国民に示せ.
亡くなった被害者の家族は,被害者が卒寿を迎える日を心待ちにしていただろう.しかるに畳の上で天寿を全うしたならともかく,路上で殺されたのである.さぞや無念だろう.
しかし室橋裁判官にはそんな人情は一かけらもない.初犯で人を一人殺したくらいでは執行猶予を付けるという量刑相場に基づいて定型判決文を書いて恥ずかしげもない.
ここまで書くと国民は皆,例の上級国民,旧通産省工業技術院の元院長・飯塚幸三を思い起こすだろう.
飯塚は杖なしでは歩行困難かつ運転技術は車庫入れもできないほどに衰えた身でありながら,平気でクルマを運転して事故を起こし,何の罪もない母子二人を殺し,八人の通行人を負傷させ,収監免除を意図してか事故後は車椅子に乗り,無罪を主張した.
この鉄面皮な飯塚の振る舞いは,主に若い世代の国民の激しい怒りを招いた.
それなのに東京地裁下津健司裁判長は,求刑七年に対して,量刑相場 (求刑の七掛け) 通り禁錮五年の判決を言い渡した.
もしも飯塚がサルにも等しいしおらしい「反省」を示していたら,地裁は飯塚に執行猶予を付したかも知れない.
地裁判決は,飯塚が反省していないと指摘したが,反省しようがしまいが,そんなことで人ふたりを殺した男の刑が決められてなるものか.
私は高齢者であるが,あるいは高齢者であるが故に,年寄りだからという理由で高齢者の収監を免除したり,実刑に執行猶予を付したりしてはならぬと考える.
この記事の冒頭に記事を引用した沼津の事件では,老婦人を殺しておきながら被告は実質無罪を勝ち取った上に,のうのうと暮らすための年金も支給される.
これはどうにかならんのか.
若い国民に対して裁判所は,法に基づいて正義の存在を示さねばならぬ.そうでなければこの国は自壊する.
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ウクライナに自由と光あれ
(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)
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