ハンディモップで叩かれて脳挫傷になるわけがない/報道記者のレベルが低すぎる
朝日新聞デジタル《84歳夫の頭や顔をモップで殴った疑い 78歳妻を逮捕 夫は死亡》[掲載日 2023年4月20日 14:52] を読んで疑問が生じた.下にスクリーン・ショットで引用する.

モップは本来,床の清掃用具である.そのため木製または合成樹脂製の柄は長くできていて,人を相手に勢いよく振り回せば強い打撃を与えることが可能だ.
上に引用掲載した朝日新聞の記事を読んだ読者は,田口よう子容疑者が夫の田口寅勝さんの頭部を何度も殴打し,そのため《脳挫傷と急性硬膜下血腫で1カ月の重傷を負わせた疑いがある。寅勝さんは入院し、18日午前9時10分ごろに死亡した。》と理解するだろう.
堅い柄のモップで頭部を殴られれば,脳挫傷を起こすのは無理ないところだ.
しかしこれが嘘なんである.
他のメディア,例えば日テレNEWSは,田口容疑者が使ったのはモップではなくハンディモップであるとしている.
ハンディモップとは,テーブルの上のホコリを払うなどに使うもので,非常に軽い.私が使っているのは重さ八十グラムで,これで殴っても全然痛くはないし,脳挫傷どころかタンコブもできない.
脳挫傷になるほどの打撃を与えるには,鈍器例えばバットなどが必要である.
なぜこんな奇妙な報道がまかり通っているのか不思議に思って「田口容疑者」で検索をかけた.
すると,テレビ報道とYouTubeなどの動画では,すべて「ハンディモップで殴った」としているが,朝日の他に産経新聞とNHKが「モップで殴った」と書いている.
それでわかったことは以下の二つ.
(1) テレビなど映像系の報道がすべて「ハンディモップ」と放送していることから,まず間違いなく警察発表の「凶器」は「ハンディモップ」であったろう.しかるに朝日新聞ほかのいくつかのテキスト系メディアは勝手に「モップ」と言い換えた.独自取材でもないのに勝手な言い換えをすることは,捏造である.ただし,捏造の動機が「ハンディモップで重傷を負わせることは不可能だ」という常識的判断があったとすれば,同情に値する.しかしその場合は警察発表の席上で「間違いではないか」と質問すればよかったはずだ.それをせずに勝手な言い換えをしたとすれば,朝日新聞の記者などには捏造体質があったと思われる.私たち年寄りは《朝日新聞珊瑚記事捏造事件》以来,朝日新聞の記事には信頼を置いていない.
(2) 映像系メディアは「ハンディモップ」がどのようなものかを,視聴者に具体的に示している.例えば日テレNEWSの画面から,下にスクリーン・ショットで引用する.
テレビ報道の多くは御丁寧にも,田口容疑者が,フワフワと軽くて柔らかい「ハンディモップ」で被害者を叩いている阿呆なアニメーションを作成して報道した.
それらの報道を伝えた記者は,こんなヤワな掃除道具で被害者が脳挫傷になったと本気で考えたのである.バカとしか言いようがない
この事件の所轄である千葉県松戸警察署は,最初の発表の時点では凶器となる鈍器を鑑定中で,特定に至っていなかったと思われ,そのため「田口容疑者はハンディモップで殴ったと供述している」と発表したのだろう.「被害者を死に至らしめた凶器はハンディモップである」とは一言も言っていないと想像される.「科捜研の女」と「相棒」を毎日熱心に視聴している刑事ドラマ愛好者としてそう断定する.ヾ(--;)コラ
本当の凶器が何であったか.本件はよくある小さな事件であるから,田口容疑者が拳で殴打したのか,あるいは鈍器を用いたのかは続報されないであろう.それは残念だが,しかしこの事件は事件報道の記者たちの知的水準があまり高くないことを世の中に知らしめた.その意味で注目すべき事件であった.
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ウクライナに自由と光あれ
(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)
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