国家資格 /工事中
管理栄養士資格は,全国に144校ある管理栄養士養成施設 (四年制大学,専門学校) を卒業すると受験資格が得られる.
これらの養成校を新卒で受験した者は,余程の阿呆でなければ試験に合格する.酷い年は合格率95%以上のこともある.
これを,いわゆる難関資格を除く他の国家資格と比較してみよう.
自動車運転免許の試験合格率は以下の通りである.
* 警察庁交通局「令和3年版運転免許統計」
年別 合格率 (%)
令和元年 75.1
令和2年 77.7
令和3年 77.1
気象予報士試験 (年二回) は,平成六年から令和四年までの平均合格率は5.5%である.直近の合格率は以下の通り.難しい試験のうちに入る.
* 気象業務支援センター「気象予報士試験」
令和元 4.5% 5.8%
令和2年 5.8% 5.6%
令和3年 4.2% 4.9%
令和4年 6.0% 4.8%
気象予報士と並んで女性に人気のある職業資格である薬剤師はどうか.薬剤師試験は六年制大学を卒業の受験資格者が受験するため合格率は高いが,合格は易しくはない.
* 厚労省「試験回次別合格者数の推移」
105回 (2020年) 106回 (2021年) 107回 (2022年)
69.58% 68.66% 68.02%
つい最近,抜群の画才と美貌で知られる田中道子さんが合格してニュースになった一級建築士は難しい資格の一つである.
* 総合資格学院「一級建築士 試験の合格率」
令和元年 12.0%
令和2年 10.6%
令和3年 9.9%
令和4年 9.9%
自動車運転免許は別として,司法試験ほどの難関試験ではないが取得が簡単ではない資格試験の例 (気象予報士,薬剤師,一級建築士) を上に挙げた.
それらに比較すると,管理栄養士の資格試験合格率は異常に高い.運転免許は非常にニーズの高い資格であるが,それでも全員合格ではない.当然だが,運転不適格者が紛れ込む危険性を排除するためである.
これに対して管理栄養士は,運転免許より遥かにニーズが少ない資格であるのにもかかわらず,大盤振る舞いというか,持ってけドロボー状態である.もしかすると厚労省は「一家に一人の管理栄養士」を目指しているのかも知れない.w
そういう有様だから,管理栄養士の中にはトンデモな者が紛れ込んでいる.そこでトンデモ管理栄養士の例を挙げる.
下のスクリーン・ショットは管理栄養士の竹内寿美恵というヨガインストラクターが書いた記事である.(引用元;ヨガジャーナルオンライン《納豆をかき混ぜるほど美味しくなるって本当?味の違いや栄養学的な違いは|管理栄養士が解説》[掲載日 2023年3月19日])
嘘の箇所を以下にテキストで示す.
(A)《一方、ポリグルタミン酸ですが、私たちが食べる時にしっかり納豆をかき混ぜることで、ポリグルタミン酸から旨味成分で有名な「グルタミン酸」が作られて、より美味しくなります。
そのため納豆を混ぜることで旨味成分が多くなりより美味しくなります。》
(B)《納豆の発酵がすすめば、より旨味となるポリグルタミン酸が多くなります。》
引用箇所 (B) から先に片づける.《納豆の発酵がすすめば、より旨味となるポリグルタミン酸が多くなります》は日本語が崩壊している.小学生に教えるが如く親切に添削して差し上げれば「納豆の発酵がすすめば、旨味成分であるグルタミン酸のもととなるポリグルタミン酸が、より多くなります」だが,こう直しても内容的に間違っている.
発酵の進行に従ってポリグルタミン酸は,「多くなります」ではなく,分解されて減少するのである.
この事実は,店頭から購入してきた納豆を保存すると,やがて糸を引かなくなることで経験的に知られているが,実験的に示したのが木村啓太郎「納豆菌の粘質物生産機構」(食糧その科学と技術45号,2007年03月27日,p.61-76) である.下にそのグラフを引用する.
上図の○は納豆菌の増殖状態を示している.培養開始から二日経過すると菌体量は定常期に入り,三日目まではポリグルタミン酸量 (●) は増加するが,それ以後は減少してしまう.
また生活経験としても,納豆のメーカーや保存条件によってかなり幅はあるが,メーカーが示した賞味期限を過ぎると糸引きは少なくなりアンモニア臭が感じられるようになり,食味風味は低下してしまう.
実験室的にも生活経験としても,納豆は発酵が進むにつれてポリグルタミン酸量は減るのである.
竹内寿美恵という嘘つき管理栄養士&ヨガインストラクターは《納豆の発酵がすすめば、より旨味となるポリグルタミン酸が多くなります》と述べているが,どうやら納豆を食べたことがないようだ.自分が食べたこともないものについてエラソーに講釈を垂れてはいけない.
次に (A) の引用箇所について説明する.
ポリグルタミン酸からグルタミン酸を生成するには,(1) 直鎖状高分子であるポリグルタミン酸の末端ペプチド結合を物理的に切断する,(2) 塩酸で加水分解する,(3) 酵素で分解する,の三手段がある.
高分子材料は,引張り応力を加えて歪を生じさせると,歪が限界を超えると破壊に至る.この時,材料内部で共有結合が物理的に切断されている.
この現象を説明している《斎藤勝政「高分子材料の破壊」(精密機械31巻12号,1965)》から下にスクリーン・ショットで引用する.
しかし納豆を箸でかき混ぜても,ネバネバに含まれているポリグルタミン酸は撹拌されているだけで,歪は生じていない.
すなわち (1) の方法でグルタミン酸を生成させることはできない.
次に (2) は,除外する.今論じているのは,私たちが食べる食品の納豆の中で,ポリグルタミン酸からグルタミン酸が生成する話だからである.
最後の (3) は可能性がある.
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