« ひとに責任を押し付けて逃げる教育者 | トップページ | 大衆回転寿司とかファミレスは巨大な自動販売機だ /工事中 »

2023年3月18日 (土)

アナクロ /工事中

 兵庫県の「神戸アンパンマンこどもミュージアム&モール」(日本テレビの子会社) の敷地内で,視覚障害者のための点字ブロックの中に,来場した子供と視覚障碍者がぶつかる危険性がある変形点状突起 (アンパンマンの顔が刻印されている) が交じっていた問題について,メディアが同ミュージアムに取材したところ,取材拒否という驚くべき態度に出た.
 
 まず経緯から.
 一年前の当初,この点字ブロックは好意的に報道された.
 ハフポスト日本版《点字ブロックをよ〜く探すと、アンパンマンが隠れてた。その理由とは?【画像集】》[掲載日 2022年1月30日 14:37] から下に引用する.
 
点字ブロックを設置する施設の担当者は「未就学のお子様たちは好奇心が旺盛で、施設内の大きな仕掛けから小さなものまで気づいて、見つけると『こんなところにアンパンマンがいる!』と笑顔をこぼします」と話します。
 
 しかしSNS上で,このアンパンマン刻印突起の危険性について視覚障碍者から指摘がなされた.地面の点字ブロック中にあるアンパンマン探しに夢中になっている子供と,視覚障碍者がぶつかってしまうリスクが高いのだ.
 この指摘を受けて,一部メディアが同ミージアムに取材 (質問状) をしたところ,同ミュージアムは取材拒否した.
 まいどなニュース《点字ブロックに隠れアンパンマン「危ないからやめて」視覚障害者が指摘 アンパンマンミュージアムの見解は》[掲載日 2023年3月14日 07:07] から下に引用する.
 
確かに点字ブロックは、そもそも視覚障害者の安全誘導表示を目的に設置されるもののはず。ここで視覚障害者が危険を感じることがあっては、本末転倒に思える。調べてみると、全国に5カ所あるアンパンマンこどもミュージアムのうち、同様の仕掛けが施されているのは仙台と神戸の2カ所らしい。神戸アンパンマンこどもミュージアム&モールに、以下の4点について見解を聞いた。
・点字ブロックのひとつを隠れアンパンマンにした理由
・視覚障害当事者からの「危険だ」という意見についてどう考えるか
・安全面で施設としてどのような配慮をしているのか
・導入時に内部で疑問や反対の声は全く上がらなかったのかどうか
 
 1週間後に届いた回答は、「ご質問にはお答えしかねます」だった。
 
 今時,メディアの取材に《ご質問にはお答えしかねます》という高圧的な態度には驚くが,理由を想像するに,広報担当者はネット・メディア事情に疎いのではないか.
 同ミュージアムに取材を申し込んだ「まいどなニュース」の親媒体は神戸新聞社,デイリースポーツ,京阪神エルマガジン社,サンテレビジョン,ラジオ関西の五社であり,その他に京都新聞社,山陽新聞社,北日本新聞社,山陰中央新報,高知新聞社等が媒体の垣根を越えて運営している割と大きめなメディアである.
 私の邪推だが,「まいどなニュース」ではなく神戸新聞社が取材を申し込んだとしたら,同ミュージアムは応じたのではないか.ひょっとすると株式会社ACMの広報責任者は仕事に不熱心で「まいどなニュース」の存在を知らなかったのではないか.
 
 アンパンマンミュージアム (仙台,横浜,名古屋,神戸,福岡) は事業主体社名は「アンパンマンミュージアム&モール有限責任事業組合」という.組合員は株式会社ACMと讀賣テレビ放送株式会社である.
 アンパンマンミュージアム&モール有限責任事業組合の組合員である株式会社ACM (Anpanman Children's Museum) は各地の施設の運営を行っている.
「まいどなニュース」が取材を申し込んだのは神戸アンパンマンミュージアム&モールで,回答したのは株式会社ACMだ.
 
* 以下はフィクションであり,実在の団体および人物とは無関係である.
* 担当者「ぶちょー,まいどなニュースってとこから取材申し込みがきてますけどー」
* 部長「どこの馬の骨かわからんとこの取材なんか断れ!わしは忙しいんじゃ!」
* 担当者「なんて言って断ればいいですかあ?」
* 部長「使えねえなあ,おまえはー,ご質問にはお答えしかねます,てのが定番だろうが!」
 
 冗談はさておき,隠れアンパンマン点字ブロックの件について,人事・経営コンサルタントの増沢隆太氏 (東北大学特任教授) が見解を述べている.
 東洋経済オンライン《アンパンマン施設の「スルー対応」が悪手過ぎた訳 危機対応において「お答えしかねます」はご法度》[掲載日 2023年3月17日 19:30] から下に引用する.
 
こうしてまるか食品は大逆転の成功物語となりましたが、危機管理上の観点では、結果的に大成功した同社でも、初動に失敗したことで10億の投資を余儀なくされたと見るべきだと思います。それに、失敗のツケが必ず回収される保証はありません。
 三国志時代の曹操の軍師・郭嘉(かくか)は北方征伐において、「兵(軍隊)は神速(神の如き速さ)を尊ぶ」と敵の不意を突いての奇襲を進言し、軽装での突撃による電撃的勝利を果たしました。戦いにおいて「速さ」が大切なことは、古来いわれています。
 危機との“戦い”においても同様だと思います。初動での迅速な事態収拾は絶対的に欠かせません。スルー対応はリスクを増やすことはあっても何一つ成果をもたらさないといえるでしょう。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 増沢氏の見解に異論はない.
 しかしここで三国志を持ち出すのは如何なものか.
三国志時代の曹操の軍師・郭嘉(かくか)は北方征伐において、「兵(軍隊)は神速(神の如き速さ)を尊ぶ」と敵の不意を突いての奇襲を進言し、軽装での突撃による電撃的勝利を果たしました。戦いにおいて「速さ」が大切なことは、古来いわれています。
 危機との“戦い”においても同様だと思います》がなくても増沢氏の主張は成立する.
 むしろこの三国志の話は,増沢氏が自分で行うべき論理の証明を行わず,たったの一例,魏志郭嘉伝の故事を引いて《同様だと思います》で済ませてしまった点で怠惰の極みである.
 
20230325guojia_a
(『三国志演義』の挿絵にある郭嘉;パブリック・ドメイン,Wikimedia Commons,file GuoJia.jpg)
 
 企業における危機との戦いにおけるスピードの大切さは,企業社会の実例を挙げて述べるべきなのだ.三国志を持ち出してどうする.
 私がまだ若い会社員だった頃,某ビジネス雑誌の表紙は毎号,歴史的人物の群像だった.それもかなり限定的で,徳川家康や織田信長など我が国の戦国武将,明治維新から太平洋戦争にかけての軍人たち,そして三国志の英雄たちばかりであった.
 昭和時代の後期は,ヒラのサラリーマンにもその某ビジネス雑誌は売れた.ヒラなのに無意味にビジネス誌を読んだ.
 みんな「坂の上の雲」を読み,漫画や小説にリライトされた三国志演義を愛読した.
 一日の仕事が終わると新橋の飲み屋で若い会社員たちが,

|

« ひとに責任を押し付けて逃げる教育者 | トップページ | 大衆回転寿司とかファミレスは巨大な自動販売機だ /工事中 »

新・雑事雑感」カテゴリの記事