痛々しい
アルテイシアという作家が書いたプレジデント ウーマン《ミイラのような遺体で発見された母、自殺した父…大人になってわかった両親の命を奪ったものの正体》[掲載日 2023年2月23日] を読んで,ほんとにこの女性は作家なんだろうかと思った.
このかたは著書が三冊あるので,その点では立派に作家であるが,メディアによってはコラムニストとしていることもある.微妙な立ち位置にいるらしい.
で,アルテイシアさんは自分の両親の死に触れて次のように書いている.
《私の母は50代の時に拒食症で亡くなった。母は23歳で結婚して専業主婦になり、40歳目前で夫から離婚されて、酒におぼれて自傷行為をするようになった。
当時中学生だった私は「お母さん、ちゃんと自分の足で立ってよ」と思っていた。でも大人になって「母は自分の足を奪われたんだ」と気づいた。1950年生まれの母には、結婚して夫に養われる以外の選択肢がなかった。つまり、自己決定権がなかったのだ。
ミイラみたいにやせ細った母の遺体が発見された部屋は壁一面に20代のギャルが着るような服がかかっていて「母はジェンダーの呪いに殺されたんだな」と思った。
「若く美しい女が男に選ばれてハッピーエンド」という呪いにかかったまま、死んでしまったんだと。》
《一方の父は浪速(なにわ)の石原慎太郎みたいな人物だった。私は故慎太郎氏を見るたびに「なつい」と感じていた。「なつい」は若い子に教えてもらって最近覚えた。
体育会系マッチョで昭和のモラハラ親父だった父は、男らしさの呪いをじっくりコトコト煮込んだような人物だった。彼は家庭に無関心な仕事人間だったが、商売がうまくいかなくなり自殺してしまった。
父も「稼げないなんて男失格」という呪いから絶望したのだろうし、「男は強くあるべき」という呪いから弱音を吐けず、助けを求められなかったのだろう。また生前に父が住んでいた部屋はゴミ屋敷状態で「セルフケアできない男性は世話係の女性がいないと死ぬ」という呪いのお手本のようだった。》
アルテイシアさんの母親は拒食症で亡くなったというのだが,その母親という人は1950年生まれというから私と同年の生まれだ.
よく知られているように拒食症 (神経性無食欲症) という精神障害は,若い女性に多い.五十代で拒食症になるというのはかなり特殊な症例だろう.
アルテイシアさんは《ミイラみたいにやせ細った母の遺体が発見された部屋は壁一面に20代のギャルが着るような服がかかっていて「母はジェンダーの呪いに殺されたんだな」と思った》と書いているが,《20代のギャルが着るような服》への偏執は,私と同年生まれの女性の精神障害の症状として大変興味深い.読者としてはもう少し詳しく知りたいと思うが,アルテイシアさんの著書には母親の《ジェンダーの呪い》についてもう少し詳しく書かれているのだろうか.そして,はたしてそれは《ジェンダーの呪い》だったのか,説得力ある説明が必要だ.
父親については《彼は家庭に無関心な仕事人間だったが、商売がうまくいかなくなり自殺してしまった》と書いている.しかし人間は《商売がうまくいかなく》なったくらいでは普通は自殺しない.自殺の動機には公的統計があり,それを読んでからそう書いたほうがいい.
また《セルフケアできない男性は世話係の女性がいないと死ぬ》というのは根拠のある話なのか.その説の出典を示せと言われたら,ちゃんと提出できるのか.ただの都市伝説ではないのか.アルテイシアさんの親世代の者としては,人生の実感として,懐疑的にならざるを得ない.
それらのツッコミどころを読むと,アルテイシアさんは物書きとしてはかなり未熟である.
それは言葉遣いにも表れている.(以下,文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
《両親ともに遺体で発見された女、という中二が濡れる設定を持つ私は20代前半でフェミニズムに出会った。》
《そんな思いでやっとりますが、最近はヘルジャパンにバチギレつつも希望を感じている。20代の頃はフェミニズムの話ができる友達がいなくて孤独だったけど、最近はフェミに目覚める人がどんどん増えてフェミ友がいっぱいできた。1人でバチギレるのは寂しいけど、一緒にバチギレる仲間がいると楽しいし心強い。》
まず《中二が濡れる設定》だが,《中二》はよく知られた言葉だけれども《中二が濡れる設定》はネットスラングなのだろうか.
検索語を色々と変えてウェブを探すと,アルテイシアさんの文章がヒットする.辞書の同義反復に似ている.w
おそらく《中二が濡れる設定》は,アルテイシアさんより年上の人々には理解できないと思われる.調べてもわからない言葉,スラングを使うのは物書きとして反則だ.
《ヘルジャパン》もネットスラングだろう.元々は七,八年前に流行った「ヘル朝鮮」というスラングを日本に置き換えたものだが,「ヘル朝鮮」ほど広く流通している言葉ではない.「ヘルジャパン」を検索語にして調べると,またまたアルテイシアさんの名前がヒットする.これも辞書の同義反復に似ている.ww
《バチギレ》は,ネット上で使われるだけではない口語だが,幼稚なスラングではある.
その他にもアルテイシアさんのこの文章には「ツイフェミ」が唐突に使用されていて,それもネットスラングだ.
微妙だが「バルスと唱えて」もスラングに近い.
若い人たちが,年上の大人たちには理解できないように敢えて文章中にスラングを用いるのは仕方ないが,アルテイシアさんはもう若くない.
例えば会社で,中年の女性社員が会議で「バチギレ」と発言したら,ちょっと痛々しい.大人には大人の言葉があるからだ.せいぜい「ブチギレ」にとどめておいたほうがいい.www
それでもアルテイシアさんが,短い文章中にスラングを多用するのは,部屋の壁一面に《ギャルが着るような服》をかけているような印象を受ける.
つまり私のような年寄りから見ると,アルテイシアさんは「ジェンダーの呪い」にかかっているように思われるのだ.
アルテイシアさんは田嶋陽子先生の著書を読んだことがきっかけでフェミニズムを知ったのだそうだ.
その田嶋陽子先生が若い人のスラングを多用して文章を書くのは想像するだに困難だ.田嶋先生は大人だからである.
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ウクライナに自由と光あれ
(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)
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