うろ覚えの知識を披露して間違ってしまった栄養士
NEWSポストセブン《中谷美紀「2010年からお砂糖を摂取していません」砂糖断ち生活で何が変わるのか》[掲載日 2023年2月3日 11:15] に腰を抜かすようなことが書かれていた.
《「砂糖抜き」は心身の健康の鍵となるという。
国立健康・栄養研究所が2019年に行った調査によると、私たちは知らず知らずの間に、砂糖を1日平均6.3g、つまり、小さじ1(5g)よりも多い量を摂取しているという。また、女性の場合、40代が平均以下の6gに対して、50代は6.3g、60代は6.6g、70代は7.1gと年齢を重ねるごとに摂取量が増えていく傾向にある。
そもそも砂糖は、サトウキビやテンサイを加工したもので、自然界には存在しない食品だ。砂糖の栄養素について、健康検定協会栄養士の神原李奈さんが解説する。
「加工の段階で、ビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養がほぼ排除されてしまいます。砂糖をエネルギーとして利用するには、体内のビタミンやミネラルなどほかの栄養素を使う必要があります。そのため、砂糖を摂りすぎるとそれらのバランスが崩れ、消費により不足した栄養素の欠乏症や肥満、免疫力低下などのリスクがあります」》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
まず,「砂糖」とは何かについて.わかりやすい解説が農水省のサイトに掲載されている.
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砂糖の種類
砂糖にはたくさんの種類があります。砂糖はまず、分みつ糖と含みつ糖に分けられますが、その種類ごとに紹介していきます。
[分みつ糖]
分みつ糖とはさとうきびやてん菜の搾り汁から糖みつを分離したもののことをいいます。主な分みつ糖は以下の8つです。
上白糖
日本人好みのソフトな風味。しっとり感を出すためビスコ(糖液)をかけている。何にでも合い、国内の砂糖消費量の約半分を占める。
グラニュー糖
結晶が上白糖よりやや大きく、サラサラとしたクセのない甘みを持つ。コーヒー、紅茶に最適。
三温糖
上白糖やグラニュー糖の結晶を取り出した後の糖液をさらに煮詰めて作るため黄褐色となっている。特有の風味を持ち甘さも強く、煮物、佃煮に最適。
中ざら糖
純度が高く、表面にカラメルをかけているため黄褐色であり、独特の風味がある。醤油との相性が良く、煮物、すき焼きなどに最適。
白ざら糖
結晶がグラニュー糖より大きくクセがなく上品な味。純度が高く、光沢がある。高級な菓子やゼリー、綿飴、飲料に最適。
角砂糖
グラニュー糖を固めたもので、コーヒー、紅茶に使用。1個の重量が決まっていて、料理や菓子作りに便利。
氷砂糖
ゆっくり時間をかけて結晶を大きくした砂糖。溶けるのに時間がかかるため果実酒用に最適。
液糖
溶かす手間が省けるため、ガムシロップ、清涼飲料、ソース、焼き肉のたれなどに使用。
[含みつ糖]
含みつ糖とは砂糖を作る工程で糖みつを分離せず、糖みつを含んでいる砂糖のことです。主な含みつ糖は以下の4つです。
黒糖
さとうきびの搾り汁をそのまま煮詰めたもの。濃厚な甘さと強い風味がある。
加工黒糖
原料糖や糖みつ等に黒糖を加えて加工したもの。黒糖と外見が似ており、濃厚な甘さと強い風味がある。
和三盆
日本の伝統的製法で作る砂糖。結晶が非常に小さく独特の風味を持つため、和菓子の原料として珍重。香川県や徳島県などで生産。
赤糖
原料糖や糖みつ等を主原料に加工したもの。糖みつ分を多く含み、特有の風味を持ち甘さも強い。煮物、佃煮などに最適。
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料理をしない人は勘違いしやすいのだが,沖縄県や鹿児島県奄美地方の特産品である黒糖は,黒砂糖ともいい (私は小さい頃,黒砂糖と呼んでいて,黒糖という呼び名を知ったのは長じてからである),歴とした砂糖である.サトウキビの搾り汁からゴミを除去して煮詰めて作る.
料理をしない栄養士である神原李奈さんは,砂糖といえば上白糖 (白砂糖) しか見たことがないのだろう.《加工の段階で、ビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養がほぼ排除されてしまいます》と知ったかぶりをしているが,黒糖からビタミン、ミネラル、食物繊維等は排除されていない.砂糖には色々なものがあるという料理の常識をしらないと,こんな大ボケをかまして恥をかく.
また《そもそも砂糖は、サトウキビやテンサイを加工したもので、自然界には存在しない食品》とも書いてあるが,この文言には何か意味があるのだろうか.この文言は《自然界には存在しない》と表現することで,砂糖が何かしら不自然な,体に悪い食品であるという事を読者に無理やり思い込ませようとしているのである.
だが,食品の多くは原材料を《加工したもので、自然界には存在しない》のである.
例えば,以下の通り.
そもそも豚肉は,豚を加工したもので,自然界には存在しない食品
そもそも小麦粉は,小麦の種子を加工したもので,自然界には存在しない食品
そもそも胡麻油は,胡麻の種子を加工したもので,自然界には存在しない食品
……
そもそも w 食品の多くは,そのままでは食べられない動植物を,食べられるように加工したものだから,自然界には存在しない.(もちろん,自然界に存在し,そのままで食べられる動植物も食品の一部であり,特に区別して「食料品」「生鮮食料品」と呼ぶことも多い)
パンなどは,自然界に存在しない小麦粉や砂糖やバターなどの原料をさらに加工したもので,人工物の極みであるが,それがどうした,健康に悪いのかと言いたい.
ついでに言うと,砂糖は私たちの食文化において極めて重要な位置を占めている.食生活において広範に使われているため,口にしても気が付かないことが多い.
栄養学の分野で「見える油と見えない油」ということがあるが,中谷美紀さんが「砂糖断ち」をしているといってもおそらく「見える砂糖」を排除しているのだろうと思われる.
もし完全に食生活から砂糖を排除したとすると,かなりストイックな食事になるだろう.
しかも,仮にそうしても人体を構成するタンパク質の糖化は防げないから話は難しい.砂糖以外の糖を摂取しても血中のブドウ糖 (血糖) は増えるからである.そして糖化を回避するために極端な糖質制限食を摂るようにすると,私たちの体は自ら糖質を体内に作り出してしまうのである.(ここでは糖質制限に関する詳しい議論は避けるので,関心ある向きはウェブを検索されたい)
NEWSポストセブンのような科学とは無縁のメディアが「砂糖がどうのこうの」と書いても,所詮それは芸能ニュースなのであるから,私たち一般人は,その記事が栄養学と関係があるとは信じぬことが必要である.
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ウクライナに自由と光あれ
(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)
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