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2023年2月13日 (月)

どんな片田舎でも移住を歓迎しているわけじゃない

 福井県の池田町が昨年十二月に作成して一月に町の広報誌に掲載した「池田暮らしの七か条」が物議を醸した.日本テレビ《スッキリ》で,この事件を取り上げた際の様子をJ-CASTニュースに掲載した.
 J-CASTニュース《移住者への「7か条」が物議の池田町 大橋未歩が「これだけで判断するのは酷」と感じたワケ》[掲載日 2023年2月13日] から下に引用する.(ただし「7か条」は誤りで,正しくは「七か条」である)
 
阿部リポーター「区長さんたちを取材すると、『移住者は大歓迎』というところはブレていない。例えば、夢を抱いて移住してきてはいいけど、すぐ帰ってしまう。町としては移住者に色々なことをしてあげるのに、それも無になってしまう。双方が不幸にならないようにということで、7か条を提示したということです」
 大橋未歩(フリーアナウンサー)「リスクを事前に説明して同意を得るのは、とても誠意ある対応だと思う。ホームページを見るとウエルカムな雰囲気がすごく漂っていて、きめ細やかな支援がある町だとよく分かったので、これだけで判断するのは酷。今、移住がファッションのようになっているところがあるので、移住する側も自覚しないといけない」
 司会の加藤浩次「『7か条』については、『そういう人もいるよ』って思った方がいいだけ。田舎の人が全員関わってきて、『来た来た来たー!!』って囲まれるワケじゃいからね」
 池田町は、この7か条の文言を変えることを検討しているそうだ。
 
 そもそも,の話だが問題の「池田暮らしの七か条」が「切り取り」で報道されている.
 例えば東京新聞《都会風吹かすな、…「正直すぎる」移住案内はアリ? 福井・池田町「七か条」がネットで炎上》[掲載日 2023年2月11日 12:00] は次のように伝えたが,あとで編集されてもいいようにスクリーン・ショットで引用する.
 
20230213b
 
 上記の要約版に対して,オリジナルの「七か条」はもうちょっと詳しい記述である.テキストで引用紹介する.もしかすると改定されるかも知れないが,以下のテキストがオリジナルである.
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「池田暮らしの七か条」
 私達は、池田町の風土や人々に好感をもって移り住んでくれる方々を出迎えたいと思っています。
 しかし、池田町への思い込みや雰囲気だけで移り住まわれることには不安も感じています。移住者、地元民双方が「知らない、聞いてない」「こんなはずではなかった」などによる後悔や誤解からのトラブルを防ぎたいと思っています。
 そこで、⾧く池田町で暮らし続けて頂くための心得や条件を「池田暮らしの七か条」として作成しました。ご理解をお願いいたします。
          池田町区長会
 
第1条 集落の一員であること、池田町民であることを自覚してください。
 ○総人口の少ない池田町ではありますが、私たちは 33 の集落において相互扶助を土台に安全で豊かな共同社会を目指しています。
第2条 参加、出役を求められる地域行事の多さとともに、都市にはなかった面倒さの存在を自覚し協力してください。
 ○池田町の風景や生活環境の保全、祭りなどの文化の保存は、集落毎に行われる共同作業や集落独自の活動によって支えられています。共同して暮らす場を守るためにも参加協力ください。
 ○草刈り機は必需品です、回を重ね使い込むことで技術上達が図れます。
 ○このことを「面倒だ」「うっとうしい」と思う方は、池田暮らしは難しいです。
第3条 集落は小さな共同社会であり、支え合いの多くの習慣があることを理解してください。
 ○生活の基盤は集落であり、長い年月に渡って様々な行事や集まりを通して暮らしを支えてきました。
第4条 今までの自己価値観を押し付けないこと。また都会暮らしを地域に押し付けないよう心掛けてください。
 ○集落での生活は、ご近所などとの密な暮らしの日々があります。都市では見られなかったルールや仕組みもありますが、皆で折り合いを付けながら培ってきたものです。
 ○これまでの都市暮らしと違うからといって都会風を吹かさないよう心掛けてください。
第5条 プライバシーが無いと感じるお節介があること、また多くの人々の注目と品定めがなされていることを自覚してください。
 ○どのような地域でも、共同体の中に初顔の方が入ってくれば不安に感じるものであり「どんな人か、何をする人か、どうして池田に」と品定めされることは自然です。
 ○干渉、お節介と思われるかも知れませんが、仲間入りへの愛情表現とご理解ください。
第6条 集落や地域においての、濃い人間関係を積極的に楽しむ姿勢を持ってください。
 ○静かでのどかな池田町ならではの面白さとして、ご近所や色々な出会いの中での会話を楽しんでください。
第7条 時として自然は脅威となることを自覚してください。特に大雪は暮らしに多大な影響を与えることから、ご近所の助け合いを心掛けてください。
 ○池田町は 2004 年の福井豪雨災害で大きな被害を受けて以来、集落防災隊長を設置し地域防災力を高める取り組みを推進しています。
 ○また、池田町には「雪で争うな、春になれば恨みだけが残る」という教えがあります。積雪時、大雪時での譲り合い、助け合いを心掛けてください。
 
 以上、共同する社会の豊かさの充実のため、ご理解ご協力ください。
    2022年 (令和4年12月)
        池田町区長会
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 東京新聞の取材に対して池田町総務財政課の森川弘一課長は「移住者を排除する意図は全くない」と述べているが,まあこの七か条を読んで正直な感想を述べれば,池田町は移住者を歓迎していないのがあからさまである.
「七か条」のうちの,例えば《時として自然は脅威となることを自覚してください。特に大雪は暮らしに多大な影響を与えることから、ご近所の助け合いを心掛けてください。》は誰でもその通りだと納得するだろうが,《○どのような地域でも、共同体の中に初顔の方が入ってくれば不安に感じるものであり「どんな人か、何をする人か、どうして池田に」と品定めされることは自然です。○干渉、お節介と思われるかも知れませんが、仲間入りへの愛情表現とご理解ください。》はどうなんだろう.アプリオリに《「どんな人か、何をする人か、どうして池田に」と品定めされることは自然です》と言い切っているが,それのどこが自然なんだ.高圧的過ぎる.警察かお前は.仮に余所者の身許を調べるにしても「当然のことではないけど,池田町では昔から余所者の品定めをやってきたので,移住者は受け入れてくだい」と言うのが大人の良識というものだ.
 しかし池田町は,彼らの警察的行為を「品定めするのは自然だ」と正当化して,移住者を排除しようとしている.それが区長会 (地区有力者たち) の真意なのだ.
 それを読み取らなきゃいけないのに,大橋未歩アナは現地調査もせずに地元有力者の言い分を丸呑みして《誠意ある対応だ》と評価した.
 また阿部リポーターは《「区長さんたちを取材すると、『移住者は大歓迎』というところはブレていない。例えば、夢を抱いて移住してきてはいいけど、すぐ帰ってしまう。町としては移住者に色々なことをしてあげるのに、それも無になってしまう。双方が不幸にならないようにということで、7か条を提示したということです」》と述べたが,「七か条」を読む限り町は移住者に《色々なこと》を要求しているだけだ.それじゃみんな移住をやめて帰っちゃうよ.特に「品定め」が酷い.共同作業への参加を強制するのは構わぬが,「品定め」は人権侵害だ.それを大橋アナみたいに《誠意ある対応》とか言うのはどうなのか.
 田舎 (特に西日本) というのは昔から《「どんな人か、何をする人か、どうして○○に》との質問で余所者を露骨に「品定め」することによって被差別部落出身者を排除してきたのだ.大橋アナら《スッキリ》出演者はそのことを隠してはいけない (というより無知なんだろう).福井県の県公式サイトにも《同和(部落差別)問題は具体的にどんな形で現れるのか》との記述があって,県民に啓蒙が行われているくらいなのに.
 
 昔話を一つ.
 私は現在の家に四十年近く前に住み始めたのだが,当初は驚かされることが多々あった.
 地域共同体を維持するのにカネがかかる.私の住む地域に神主のいない鎮守様があって,維持費は町内会費から支出していた.また年に一度祭礼が行われていたのだが,神社の維持と祭礼は昔から町内の有力地主たちが話し合いで行ってきた.
 ある年,祭りに神輿がないのはおかしいという話になって,新規に建造することになり,町内会が寄付金を募った.
 地主にも格式があって,トップの地主はキャッシュで百万円単位の寄付をした.
 私のように所得を税務署に完全捕捉されている会社員にはうらやましい限りだが,農家はどんなに裕福でも所得を捕捉されないから,所得税の埒外にあり,キャッシュで寄付金なんぞは屁でもない.(Wikipedia【クロヨン】)
 そうこうしているうちに私のうちにも,地主たちがウン百万円の寄付をしたことを大きく記した廻状が廻ってきたので,素知らぬフリもできない.泣く泣くそれなりの大金を支払った.
 神輿を新造して暫くは,祭礼の時に担ぎ手もやらされた.鎮守様の境内の掃除にも動員された.その行事が済むと,町内会の主だった人々は公民館で宴会を催した.費用は町内会費から支出された.会計報告はもちろん行われなかった.
 こういうことがあったが,それでも私の居住地域は新しい住人のプライバシーに踏み込んではこないので,その点はよかった.
 しかし東海北陸以西の西日本では,すごいことが行われている.
 それに関して私が今でも覚えている話がある.かなり前の平成初期のことだが,私の知人が移り住んだ地域社会で受けた理不尽な扱いのことである.
 静岡県東部出身の人が,念願のマイホームを建てた.県内西部の某市の郊外に中古住宅が売りに出て,それを買って更地にし,新築を立てたのである.
 新居の建築は滞りなく行われて,出来上がった我が家で知人が喜びに浸っていたら,ズカズカと何人もの男たちが挨拶もなく上がり込んできた.
 家の持ち主を無視して彼らは間取りや家の向きなどを何やら調べていたが,やおら知人を取り囲んで畳に座らせ,尋問が始められた.
 尋問はまず,知人が《「どんな人か、何をする人か、どうして○○に》から始まった.そしてどこから移住してくるのかは執拗に調べられた.
 被差別部落出身者でないことを確認したのである.
 次に,「なぜこの地域のオキテを破ったのか?」が調べられた.
 知人は問われて初めて知ったのだが,驚いたことにその地域では,平安時代のような陰陽道に基づく「かたたがえ (方違え)」の風習が残っていたのである.(Wikipedia【方違え】)
 そして,引っ越しの日時を決めるのは引っ越しする本人ではなく,地域の有力者なのだと言った.
 もし指定された日に引っ越しできない場合は,地域有力者たちの許可を得て,指定日に履物だけを新築家屋の玄関三和土に置くのがこの地域のオキテだとのことだった.
 上がり込んできた連中の言い分に従わなければ,集落に災いをもたらす者として「村八分」になるらしく,これを知って事態の紛糾を怖れた知人は,一升瓶を携えて有力者たちの家に行き,詫びを入れたのであった.
 以上が,私の知人が受忍した理不尽の顛末である.
 方違え,オキテ,村八分,部落差別,余所者の品定めと排除 …… こういうことが現代日本にまだ存在しているのだ.
《スッキリ》司会の加藤浩次は《「『7か条』については、『そういう人もいるよ』って思った方がいいだけ。田舎の人が全員関わってきて、『来た来た来たー!!』って囲まれるワケじゃいからね」》と発言しているが,池田町の「品定め」の実際について,人権侵害の有無について調査してからそう発言するのがよい.

 ところで,人口の少ない田舎に引っ越してきた移住者が面食らうことの一つは,近隣にあった葬儀ではないか.
 栃木県の某地区では,珍しい通夜の風習がある.
 まず,隣県の茨城県で行われている「辻ぐり」という風習の写真を見て見よう.画像と説明は《古河歴史見聞録 ぐるぐる左に》に掲載されている.
「辻ぐり」は,座敷に座った十数人が大きな数珠を輪にして手に持ち,念仏を唱えながら数珠を反時計回りにぐるぐる回すのである.
 栃木の風習というのは,通夜の座敷で部屋の真ん中に棺桶を安置し,それを十数人が取り囲むようにして数珠を持つのは似ているが,違うのは栃木の場合は通夜の客たちが座らずに立つことである.
 そして「辻ぐり」と大きく異なる点は,数珠を回すのではなく,通夜客たちが念仏を唱えながら棺桶の周りをぐるぐると歩くことだ.
「辻ぐり」は関東では比較的知られているように思われるが,栃木某地域の通夜の風習は,奇習ではないか.
 私はその奇習を見たことはないが,もう絶版になった清水ちなみさんの『OL委員会秘宝館スペシャル 日本一の田舎はどこだ編』で読んだ記憶がある.
 で,その某地域に移住してきた人が近所のお付き合いで近くの家の通夜に御線香を上げに行ったとする.
 すると座敷に案内されて棺桶の周りに立たされ,数珠を持つ破目に.
 念仏を唱えさせられて,ぐるぐると回っているうちに,ふと輪になった人々を見ると,その中に白い経帷子を着て青白い顔の人が加わっている.
 額には天冠 (「てんかん」という三角巾) をしている.
 というのが,この奇習にまつわる都市伝説のオチである.こんな最低映画「死霊の盆踊り」みたいな通夜に来るんじゃなかったと思っても後の祭りだ.
 であるからして,移住先の風習はよく調べてから引っ越しするのがおすすめである.
 
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ウクライナに自由と光あれ
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(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)


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