「内部留保を配れ」の趣旨を歪曲する論破王 /工事中
中日スポーツ《ひろゆきさん、内部留保配布論者に”反論”「言っている人を頭の悪い人以外見たことない」》[掲載日 2023年1月10日 21:58] に,ひろゆき氏の発言が載っている.もう若くはないのに,いつもながらの幼稚な揚げ足取りであるなあと呆れつつ,以下に引用紹介する.
《インターネット掲示板2ちゃんねるの開設者で実業家の「ひろゆき」こと西村博之さん(45)が10日、ツイッターを更新。昨年11月の実質賃金が前年比3.8%減少したことを報じたニュース番組で自らがコメントした動画を添付し「『企業の内部留保を配れ』と言ってる人を頭の悪い人以外に見たことないです」などと私見を述べた。
実質賃金が8年ぶりの減少になったと発表された6日に「働き続けても、物価が上がって給料が上がらないので、生活がどんどん苦しくなっていく国が先進国で一つだけあるそうです」などとツイートで皮肉を込めたひろゆきさんは「『企業の内部留保を配れ』と言ってる人は『内部留保=余剰の預貯金』という間違った理解をしてる人しかいない気がします」と指摘した。
内部留保とは企業が生み出した利益から税金や配当などの社外流出分を差し引き、社内に蓄積されたものを指す。損益計算書では利益準備金や任意積立金、未処分利益、退職給与引当金に相当し、法人企業統計では利益剰余金のことを指す。内部留保が多いと財務基盤が強化され経営は安定するが、その一方で利益が賃上げや投資、配当などに回っていないと批判されることがある。
「まともに会計の知識があって内部留保を配れという人って居ます?」とたたみかけるひろゆきさんに、フォロワーは「簿記の意識があれば簡単に理解できる」「簿記を高校の必修科目にした方が良いですね」「内部留保が会計上どの項目に該当するか多分9割の配布信者は答えられない」「利益剰余金が確かに余剰現金とは関係がないですね」などと理解を示した。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
ひろゆき氏は《『企業の内部留保を配れ』と言ってる人は『内部留保=余剰の預貯金』という間違った理解をしてる人しかいない気がします》と書いているが,それはひろゆき氏の幼稚な勘違いである.およそ,ちゃんと仕事のできる会社員であれば《内部留保=余剰の預貯金》などと誤解しているはずがないからである.巨額賠償金踏み倒し国外逃亡男 (後述) のくせにエラソーな態度だ.会社員を馬鹿にするなと言いたい.
私は昭和四十三年に,従業員が千人を超える (社員が多いこと自体は単純にほめられた話ではないのだが) 食品分野の上場会社に技術研究職として就職した.そして入社してすぐの研修中に財務諸表 (貸借対照表,損益計算書,キャッシュフロー計算書) の読み方を教えられた.文系出身者には常識でも,理系の人間には財務諸表は初めての知識であったが,これがわからないことには自分の会社がどんな状態なのか理解できないのであるから,会社に就職したらまずは技術屋だろうが営業マンだろうが,最低限の財務の知識は必須なのである.
しかるに,ひろゆき氏はなぜ《『内部留保=余剰の預貯金』という間違った理解をしてる人》などと妙なことを言い出したのか.
想像だが,ひろゆき氏の知り合いが「『内部留保=余剰の預貯金』という間違った理解をしてる人がいるんだよなー」とかいう冗談 (もちろん作り話だ) を言ったのを真に受けて,さも自分の経験談として,そういう人間が実際にいるかのように浅はかなホラを吹いたのではなかろうか.
ところで,ひろゆき氏の発言を取り上げるメディアは夕刊紙とかスポーツ新聞に限られていて,まともな言論誌,全国紙はひろゆき氏を全く相手にしない.それはなぜか.
それは,ひろゆき氏は口は達者だが,愚かで幼稚で年齢が若い彼のフォロワーたちが思っているほどには頭がよくないからである.頭がよくない上に社会常識的な知識がおそろしく乏しい.それを真っ当なメディアの人々はよく知っているので,ひろゆき氏を相手にしないのだ.
ついこの間も,株式会社のらねこバンクの事業「ねこホーダイ」が,月額380円の会員制サービスの内容説明に《会員様は提携シェルターの猫を無料で譲り受けることができます》と譲渡であることを明記し,レンタルではないと強調したにもかかわらず,ひろゆき氏は「レンタル猫」と書き,いい歳こいてレンタルという言葉の意味を知らないことがバレて,世人に笑われた.若い時から虚業の世界で生きてきたから,普通の仕事に必要な一般常識がないのである.
そこで下に「ねこホーダイ」の事業説明と,ひろゆき氏の発言を,スクリーン・ショットで引用紹介しておく.
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↑ スクリーン・ショット1
株式会社のらねこバンクの公式サイトから「ねこホーダイとは」を引用.
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↑ スクリーン・ショット2
モデルプレス《ひろゆき氏、『ねこホーダイ』反対派に苦言 「口だけでなく行動でどうぞ」》
[掲載日 2022年12月24日 22:00] から引用.
ところで話を元に戻すと,ひろゆき氏が書いている《『企業の内部留保を配れ』と言ってる人》が誰なのかは詳らかでないが,おそらく政治家だろうと思われる.政治家が何ゆえに企業の内部留保に言及しているか.それから話を始める.
まず財務省の広報誌に掲載されたコンテンツから紹介する.
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財務省広報誌「ファイナンス」2022 Nov.
特集
「年次別調査と四半期別調査を実施 法人企業統計調査に見るコロナ禍の日本企業の姿」
【2021年度法人企業統計調査に見る企業のバランスシート】
* 利益剰余金(内部留保)残高は増加したものの有利子負債の増加で自己資本比率は低下
……
[内部留保は32.1兆円増 自己資本比率は2年連続減少]
内部留保の推移をみると、2012年以降増加が続いており、2021年度の残高は対前年度差 32.1兆円増(うち大企業:14.4兆円増、中小企業:9.5兆円増)となった。しかし、業種別にみると、サービス業や不動産では、対前年度差で大きく減少した。また、配当金は近年着実に増加している。
一方で自己資本比率は、内部留保の蓄積に伴い2019年度まで 8年連続で上昇し、過去最高を更新していたが、2020年度以降は利益剰余金の増加幅に比べて、有利子負債の増加に伴う総資産の増加幅が大きかったことから、2年連続で自己資本比率が減少、2021年度は対前年度差 0.2%pt減となった。また、中堅企業の自己資本比率は着実に増加しており、初めて大企業を上回った。
業種別では、製造業よりも非製造業の方が、自己資本比率は低い。対前年度差でみると、娯楽(19.8%pt減)や宿泊(6.2%pt減)で下落幅が大きくなっている。
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上に引用した文章には下図 (図表14) が付記されている.これを見ると,2011年以降,一本調子の右肩上がりに企業の内部留保 (利益剰余金) が増加し,2021年度では遂に五百兆円を超過した.

次に労働分配率の推移を示す. 企業規模によって大きな差があるが,その理由は単純ではないので,検索してヒットするコンテンツを読んで頂きたい.
実質賃金は,厚労省の雇用・賃金福祉統計室が公表している「毎月勤労統計調査 令和3年分結果速報の解説」から最新データを下に引用する.
実質賃金も名目賃金も,平成十八年から平成二十五年までの期間,残業手当の減少や非正規雇用の増加等により大きく減ったが,それ以降は消費者物価の上昇がさらに追い打ちをかけ,名目賃金がわずかに上がったものの実質賃金は低下を続けた.

以上のデータを見れば,日本の企業経営者の消極経営があからさまである.
日本の経営者は,賃金を上げて労働市場から優秀な人材を確保したり設備投資を行う等の積極経営には関心がない.
企業経営の果実を従業員や株主に報いる気もなく,ただ漫然と積み上がる内部留保を眺めているだけである.
しかしそれだけならまだよしとしよう.話は 少し 大幅に横に逸れるが,暇でやることがない経営者は,下卑た公私混同を始めるのである.
静岡県内でエネルギー事業などを展開する「TOKAIホールディングス」(静岡市) の鴇田勝彦元社長はその一人で,乱痴気経営の結果,解任された.日刊ゲンダイDIGITAL《会社のカネでコンパニオンと混浴露天44回…年収2億円・元通産官僚社長の“たかり三昧”生活》[掲載日 2022年12月17日 11:32]》から下に引用する.
《鴇田氏は会社名義の葵区呉服町の高級マンションに居住し、移動には社有車のセンチュリー、アルファード、ベンツを利用。ゴルフ練習場代や妻のマッサージ代まで会社に支払わせていた。鴇田氏が2019~21年の3年間に行った会食は計614回あり、会社が負担した経費は3392万円。会食相手には家族や知人も含まれていた。内部通報により、不適切な経費処理が発覚し、不正が疑われる経費は、少なくとも1100万円余りに上る。
「CEOとしてあるまじき品位を欠く行為」として解職理由のひとつに挙げられたのが、長野県内のゲストハウス「VILLA蓼科」に出張コンパニオンを呼んで、繰り返し行っていた露天風呂混浴。ゲストハウスが完成した16年から続けられていた。
「男性はタオルで局部を隠し、コンパニオンは湯あみを着用して入浴していたそうですが、44回出張コンパニオンを手配し、ほぼ毎回、混浴させていました。次第に社内でもゲストハウスでコンパニオンと混浴をしているという噂が広まり、地元住民の間でも話題になっていた。》
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