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2023年1月13日 (金)

日本でもコロナとインフルの同時流行が始まった (補遺)

 先日掲載した当ブログの記事《日本でもコロナとインフルの同時流行が始まった》に,元衆院議員でテレビ番組でコメンテーターをしている金子恵美氏の発言が批判を呼んだ件について記した.
 最近,新型コロナウイルス感染症の第八波が始まって以来,突然高齢者の死亡が急増した.この現象について金子氏は,
 
『コロナ死亡者急増』というテレビ画面に記された表記にいたずらに恐れることはないのではないか。亡くなった方の数字の内訳で判断すべきで、これが急に10代〜30代の元気な世代で死者が急増しているのだったら、これは今までと傾向が変わってきたこととして考えないといけないですが、データででている9割以上が高齢者だとするならば、それは従来言われてきたハイリスクの世代の方であり、『急増』というワードに動揺することなく冷静に見るべきだ
 
とブログに書いたのである.(金子恵美オフィシャルブログ《ゴゴスマでの発言について説明します》[掲載日 2023年1月10日 22:16:26])
 有体に言えば彼女のテレビでの発言を聞いた限りでは,自然科学の教育を受けていない金子恵美氏の感染症に関する知識は,甚だ心もとない.というか,ないに等しい.
 であるからして,彼女はコロナ禍については口をつぐんだほうがよいのである.このことについて私は以下のように書いた.
 
この発言を,金子氏は自然科学の教育を受けていない人だから仕方ない,と見過ごしてはいけない.
 高齢者の死者が急増しているということは,高齢者ではない世代の人々にも,今までと異なる事態が生じているのであり,感染症専門医はそれを心配している.
《日本社会全体のことを、人の命と経済のバランスを考えながら政治は進めていかなければならない》は一見すると正論のようだが,実は勤労世代に迫っているリスクに対して鈍感であると言わざるを得ない.
 しかしまあ金子氏が何を言おうと,そこら辺の井戸端会議みたいなものであり,政府の方針に影響があるわけではないからいいのだが,新型コロナとインフルエンザの重複感染に無関心な人がテレビに出てくるのは困ったことである.
 
 金子氏がもう少し感染症の専門家の発言に興味関心を持っていれば,高齢者の死亡者数が第八波で急増していることの重大な意味を認識したであろう.
 しかし残念ながら金子氏の 知的 知識レベルは,感染症についてコメントできるほど高くはない.彼女に,論文誌に掲載された原著論文を読めとまでは言わぬが,テレビに出て門前の小僧が経を読むが如き講釈を垂れてギャラを稼いでいるのなら,著名な専門家による一般人向けの解説くらいは読む努力をして欲しいと思う.
 例えば有名な京都大学大学院の西浦教授は昨秋,下のような講演を行った.
 m3.com《「コロナ感染で循環器疾患誘発、相当数亡くなっている可能性」》[掲載日 2022年10月16日] から下に引用する.
 
京都大学大学院の西浦博教授が10月7日、甲府市で開催された第81回公衆衛生学会総会で新型コロナウイルス感染症の中長期のリスク分析について講演を行った。
 2022年の人口動態統計の速報値を基に西浦氏は、「オミクロン株の流行が起きた2月、3月は死亡者が急増し、通常よりも(死者が)2万~3万人多い。単純計算で、夏にもう一度この規模の死者が発生したと考えると、日本でも出生時平均余命が2年は短縮されるだろう」と分析。
 また、「Long COVID-19に伴う循環器系疾患のハザードが相当に高いことが分かってきている」とした上で。「静脈系の肺塞栓等だけでなく、血栓や血管炎に伴う動脈系疾患の患者が増えている。急性心筋梗塞や脳梗塞のリスクが感染直後は10~20倍、感染から10週間が経過してもハザード比が2になっている」と分析。「COVID-19に罹患することで循環器疾患が誘発され、相当数の人々が亡くなっている可能性がある」と現時点ではっきりと見えていないコロナ感染拡大のインパクトについても言及した。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った:註;Long COVID-19 とは一般に「コロナ後遺症」と呼ばれる症状のこと)
 
 新型コロナウイルス感染症がパンデミック化したことにより,膨大な臨床データが蓄積された.
 Wikipedia【Long COVID】 には次の記述がある.
 
Long COVID(日: コロナ後遺症)とは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の回復期以降に現れる典型的な疾患、あるいは持続する長期的な後遺症を特徴とする疾患である。 Long COVIDは、呼吸器系障害、神経系および神経認知障害、精神障害、代謝障害、心血管障害、消化器障害、倦怠感、疲労、筋骨格痛、貧血など、ほぼすべての臓器系に影響を及ぼす可能性がある。一般的には、疲労、頭痛(英語版)、呼吸困難、無嗅覚症(嗅覚の喪失(英語版))、刺激性異嗅症(嗅覚の機能不全)、筋力低下(英語版)、微熱、認知機能障害など、さまざまな症状が報告されている。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 上に引用した Wikipedia に書かれているように,コロナ後遺症は,ほぼすべての臓器系に影響を及ぼす可能性がある.
 同じことを東京大学の山内一也名誉教授は,一般社団法人予防衛生協会の公式サイトの連載記事《生命科学の雑記帳 136.新型コロナウイルスの体内分布》[掲載日 2021年11月2日] で,次のように述べている.
 
新型コロナウイルスは呼吸器から感染し、咳、高熱、呼吸困難などの症状を中心とする呼吸器疾患を起こす。しかし、呼吸器以外の臓器にもウイルスが広がっている知見が蓄積してきている。神経系、心臓血管系、腸管、腎臓などの機能への影響などもしばしば報告されている
……
 各臓器について、定量的PCRによるウイルスRNAの量が測定され、ほかに電子顕微鏡によるウイルス粒子、または蛍光抗体法によるウイルスタンパク質の検出も行われていた。したがって、ここで得られた結果は、必ずしも感染性ウイルスの存在を示すものではない。図では、ウイルス量は紫色の濃淡で示されている。微量のウイルスまで含めると、咽喉頭、気管、肺、血液、心臓、血管、腸、精巣、脳、腎臓と、身体全体に広がっている。これらの結果は、ウイルスが粘液、唾液、尿、脊髄液、精液、母乳に含まれる可能性も示しており、新型コロナウイルス感染症は全身病とみなされた》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 新型コロナウイルス感染症は全身病である.季節性インフルエンザにも脳症など呼吸器以外の疾患はあるが,新型コロナウイルス感染症ほどの全身性は示していない.これは「新型コロナウイルス感染症は,内臓の持病を悪化させて死に至らしめる感染症である」と言い換えることができる.これこそが,第八波における高齢死者数急増の意味するところである.
 
 コロナ禍が始まった当初,三浦瑠麗や橋下徹を始めとする経済優先論者たちは「新型コロナウイルス感染症よりもインフルエンザのほうが怖い.インフルエンザは年間三千人も死んでいるが,コロナは死亡率が低いから怖くない.感染したら家でじっとしていればいい.だから国は,感染防止策に力を入れるよりも経済を回すのを優先するべきだ」と主張し,我が身の感染リスクをものともせずに奮闘する医療従事者たちを嘲笑した.同じく金子恵美氏も尻馬に乗って経済優先を主張してきた.
 だが,この感染流行第八波では,毎日数百人が死亡し,この一ヶ月で死者は一万人を超えた.彼らが流したデマは破綻したのである.
1) NHK NEWS WEB《新型コロナウイルス 1か月余りで死者1万人超 その背景は》[掲載日 2023年1月11日] 
2) NHK NEWS WEB《新型コロナ 全国の死者数489人 一日の発表としては過去最多》[掲載日 2023年1月12日]
 
 国内の感染状況は,流行のピークが発生するごとに感染者数と死亡者数が右肩上がりに増加するトレンドになっている.
 現下の問題は,第八波では政府が感染者数を把握できなくなっていることだ.NHKの報道によると,新規感染者が自治体に感染登録をしなくなっていることがその原因である.なぜ感染登録をしないかというと,登録手続きが一般人には煩雑な難しい作業だということと,登録してもメリットがないからであるという.
 それ故,新規感染者は,医療体制の外で,必要な医療の提供を受けることなく自宅で逼塞 (自主隔離) しているのである.
 こうして西浦教授の推測のように,ウイルスは,呼吸器の急性症状が発症後,自覚症状のないままに感染者の心臓血管系や他臓器を損傷し続ける.
 将来そのダメージは心筋梗塞となって現れる可能性がある.あるいは膵臓もダメージを受けるとすれば,これは糖尿病予備軍を生み出すことを意味し,ことは重大である.
 また山内先生が指摘しているように,ウイルスが精液や母乳に含まれる可能性があるとすると,今の勤労者世代から,将来生まれてくる世代に垂直感染的にウイルスが伝播していくかも知れない.
 
 経済優先論者である金子恵美氏は《(高齢感染者の死亡の)『急増』というワードに動揺することなく冷静に見るべきだ》と言うが,頭の中は大丈夫か.日本経済どころか,日本の次世代の健康が危ういかも知れないと知って動揺しないほうがおかしいだろう.
 感染症専門家も行政も,第八波の状況について警鐘を鳴らしているが,金子恵美氏たち経済優先論者はそれを理解できないし聞く耳も持たない.まことに知的レベルが低いということは悲しいことである.
 
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ウクライナに自由と光あれ
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(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)


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