肉まんアウトレット
藤沢駅北口にある老舗デパート「さいか屋」の地下一階で,何かうまそうなものはないかとウロウロしていたら,中華弁当店「大珍キッチン」の冷蔵ショーケースの中に「アウトレット中華まん 各種三百円」と書かれたポップがあった.
私は「アウトレット」と聞くと高級服飾品とかスポーツ用品とか,高価な商品を安く販売するショップあるいはその集合体であるショッピング・モールを思い浮かべる.
ところが私の眼前にあるのは「アウトレット中華まん 各種三百円」である.落差が大きすぎ.
そこで,冷蔵ショーケースの前に立っている大珍キッチンの女性店員さんに訊いてみた.
私「普通の肉まんは五百円だけどアウトレットの肉まんは三百円だよね,どう違うの?」
もしかすると中国人の店員さん「サンビャクエンのはカタチがね,ツブレテいて,ウリモノにならない,それアウトレットね」
「アウトレット」の語義解説を下に集めてみた.
Wikipedia【アウトレットモール】
アウトレット (outlet) とは,英語で水や煙などの排出口をあらわす言葉である.商業施設のアウトレットとは「工場から直接出てきたもの (ファクトリー・アウトレット)」を意味する.
もともとアメリカの流通業界において、ブランド・メーカーの衣料品やアクセサリーなどの,流行遅れ商品や通販のクーリングオフ品,実用上は問題のない欠格品 (いわゆる「半端もの」「訳あり品」「棚ずれ品」など) を処分するために,工場や倉庫の一角に「アウトレットストア」と呼ばれる在庫処分店舗が存在していた.
これらの複数メーカーの在庫処分店舗を一堂に集め,モール化したものをアウトレットモールと呼ぶようになった.日本ではつくば万博 (1985年開催) 跡地を再利用したショッピングモールが始まりとされる.多数のブランドや業種を揃えた利便性で購入者の選択幅をモール全体として提供している.
アウトレット店舗には,メーカーなどが自社企画品や自社生産品の直接販売を行う「ファクトリー・アウトレット」と,小売店がメーカーから仕入れた在庫品を販売する「リテール・アウトレット」の2種類がある.「ファクトリー・アウトレット」では通常,販売するブランド名を掲示しメーカー直販を明示する.
ブリタニカ国際大百科事典
多少傷のついた商品,季節外や旧型の商品,売れ残り品,またはその販路.本来は出口,はけ口の意味.通常の使用に耐えうるこうした商品を値引き価格で販売する小売店をアウトレットショップ (ストア),ショップが大規模な敷地に集積したものをアウトレットモール (パーク) といい,1980年代のアメリカ合衆国で発展し,1990年代に日本に進出した.製造業者が工場や倉庫の近くで流通コストをかけずに販売するファクトリーアウトレット(工場直販) と,百貨店などの小売業者が運営するリテールアウトレットがある.
リフォーム用語集
もともとアメリカの流通業界において,ブランド・メーカーの衣料品やアクセサリーなどの,流行遅れ商品や通販のクーリングオフ品,実用上は問題のない欠格品を格安で購入出来るシステム.
精選版日本国語大辞典
型落ち品や新古品などを,新品より安い価格で売る品.
上の引用のうち,精選版日本国語大辞典のみが「アウトレット」を「アウトレット品」の意味で解説している.
他は「アウトレット」は「ファクトリー・アウトレット」または「リテール・アウトレット」の略語であるとしている.
さて話を元に戻す.
デパ地下に入っている大珍の店舗は,横浜中華街のレストラン「大珍楼」の製造部門である「大珍食品公司」が運営する「大珍キッチン (ロゴは<大珍厨房>)」(公式サイトはここ) の直販店であり,これは「ファクトリー・アウトレット」であるということになる.(横浜中華街にも大珍キッチンの店舗があり,また同社は通販もやっている)
大珍キッチンの公式サイトは,トップページに大々的に《横浜中華街大珍楼の味をアウトレット価格で》として,次のように書かれている.
《大珍キッチンとは
大珍キッチンは、昭和22年(1947)創業の横浜中華街老舗 大珍楼の工場部門「大珍食品公司」が運営するアウトレット通販サイトです。
大珍楼はもちろん日本中の中華有名店や高級ホテル向けの中華食材:飲茶・点心・菓子のB品などを、お任せセットで超お得に販売します!
ご家族でたっぷり楽しむのもよし、ご友人とシェアするのもよし、あなたの「おうち時間」を充実させる美味しい中華の逸品をご賞味ください。》
これを読んだ限り,大珍キッチンの公式サイトでは「アウトレット」を「工場直販」という意味で用いている.
ところが「さいか屋」地下一階の大珍キッチン店舗の店員さんは,「アウトレット」を,形が悪いために検品で規格外とされた「訳あり品」との意味で使用している.
その結果,冷蔵ショーケースの中で「正常品質の工場直販アウトレット肉まん」と「訳あり品の工場直販アウトレット肉まん」が混在してしまった.
「工場直販アウトレット」でも「訳ありアウトレット」でも,どっちでもいいが,大珍キッチンはアウトレットの意味を社内できちんと統一すべきだろう.

上の写真は,「訳ありアウトレット肉まん」だ.正常品は肉まんの上部に皮の生地をつまんで捻った「つむじ」がきれいにできているのだが,上の商品は「つむじ」が半分なくなっている.おまけに真空包装の減圧が強すぎて,横からみるとペシャンコだ.
手成形なのか,包餡機・包装機の不具合なのかわからないが,これを五百円で売るのは強欲というものだろう.コンビニ肉まんより大きいから,せいぜい頑張って三百円だろう.
横浜中華街の二大肉まんは,華正樓と聘珍楼のものだと言われている.誰が言っているかと言うと,私だ.
華正樓の肉まんは,掌に載せるとずっしりとする重量級で,餡から出た豚脂が底面の皮にしみ込んでいる.昭和の名力士に喩えれば一代年寄北の湖敏満である.
これに対して聘珍楼の肉まんは,野菜の旨味と食感が絶妙で,同じく力士に喩えれば,軽量ながら奮闘した十一代二子山貴ノ花利彰である.
それならば大珍の訳あり肉まんの序列は如何に.

上の断面写真で明らかなように,餡は野菜が多くて豚肉が少ない.従って豚脂の旨味は全くない.
味はボケていて,パサパサである.前頭下位に居座り続けて遂に廃業した無名の力士を思わせる.
これなら大船駅のエキナカにお店がある PAOPAO肉まん (二百円;番付は小結) のほうが遥かに旨い.
「さいか屋」地下の大珍キッチンで,店員の娘さんは私に「アウトレット肉まん,あと二つしかナイ.今年のアウトレット,これで最後ね」と言った.
私は「買う買う」と声を出して二個買ったのだが,今は後悔している.
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ウクライナに自由と光あれ
(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)
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