入歯をしていない老人には答えられないアンケート
横浜市の健康福祉局から「健康とくらしの調査」という高齢者向けのアンケートが来た.市当局が,どうせ使いもしないデータを集めて暇つぶしをするんだろうと放置していたら,ちゃんと出せとの督促状が来た.ということは,どうやら暇つぶしではなく本気のようだと認識を改め,記入した.
しかし,色々ツッコミどころの多いアンケートだった.
例えば,私の歯は,親知らずは全部抜歯したが,残りはすべて治療済あるいは治療中の自前の歯である.自前の歯の本数を記入する設問にそのように回答したのに,それに続けて「入歯の掃除をどうしているか」という設問があった.老人は入歯のあることが前提になっている.ダメだなあ.この設問は記入不能だ.
暮しの情報源について,ずらりと羅列された選択肢の中で,あてはまるものを答えるという設問があった.だが「テレビ・ラジオ」は選択肢にあるが「インターネット」はない.なぜだ.
その代わり,「これからやってみたいもののすべてに○をつけてください」という設問の選択肢に「インターネット」と「スマートフォン」がある.つまり老人は「インターネット」と「スマートフォン」を,まだやっていないというのが前提になっている.年寄りをなめるな.w
「料理」が「これからやってみたいもの」の選択肢に入っている.だがその前の別の設問で,自分の食事は自分で作っていると答える設問があったのだ.だとするとなぜ「料理」が「これからやってみたいもの」の選択肢に入っているのかわからない.
「eスポーツ」も選択肢に入っている.対戦型ゲームは選択肢にあるが,RPGがないのはなぜだ.ww
そしてこの設問は,既に色々やっている人ほど「これからやってみたいもの」が減ってしまうという結果になる.無気力で何もしたくないし実際に何もしていない老人の回答と,積極的に色々やっている老人の回答が,同じになるのである.
すなわち,市の健康福祉当局は「高齢者は,ネットとかスマホとか若い人たちが普通にやっていることをやっていない (しかしやりたいと思ってはいる) 」という結果を欲しがっているのだ.
この誘導質問的な設問から得られる間違った情報に基づいて行政が行われる.
こういうアンケートは,まじめに作れば行政に大変役立つ資料になるだろうが,今回のアンケートは先入観でこしらえた余りにもお粗末な内容なので,結局は公務員のアリバイ作りなんだろうなあとしか思えない.高齢者のインターネット利用状況に関するデータは,入歯の掃除方法のデータよりもずっと重要だと私は思う.
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ウクライナに自由と光あれ
(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)
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