利他の人々と 心卑しいライター
NHK《ドキュメント72時間 年末スペシャル2022》の視聴者投票第一位は《“どろんこパーク” 雨を走る子どもたち》だった.
なるほどね,と納得.
《ドキュメント72時間》はできるだけ視聴するようにしているのだが,他の番組と被って見逃すことがある.
この《“どろんこパーク” 雨を走る子どもたち》はその一つだったのであるが,この特番で観てみたら,いまの子供たち,とりわけ義務教育の現実から疎外されている子供たちの置かれている状況が,私のような年寄りにも少しは推察できる良質の作品だった.
“どろんこパーク”は神奈川県川崎市にある市の施設「子ども夢パーク」である.その事業の一つである「フリースペースえん」について以下の説明が公式サイトに書かれている.
《「フリースペースえん」は川崎市子ども権利条例をもとに、市と認定NPO法人フリースペースたまりばの協働事業として日本でも珍しい公設民営のフリースペースとして誕生しました。
ここの特徴は生涯学習(社会教育)の視点にたって、学校外で多様に育ち・学ぶ場としてスタートしたことにあります。》
認定NPO法人フリースペースたまりばのスタッフに年輩のかたがおられて,一人の不登校生徒を温かく見つめているその目が印象的だった.
第二位は《看護専門学校 ナイチンゲールに憧れて》だった.
この映像に登場する学生さんの一人が,この道を選んだ動機として「コロナ禍だから」と語っていた.人のためになる職業だからというのだ.
また別の学生さんが「患者さんに対して一言一言,患者さんが求めている言葉をかけてあげられたら,私も前に進んでいける」と語った.
さらに「人のためを思ってでなければ看護はできない」との言葉もあった.
彼女らの他にもたくさんの学生たち (社会人経験者も多い) が登場したが,みんなフリースペースたまりばのスタッフたちと似た眼差しをしていることに私は感動した.今年の優秀作品にこのドキュメンタリーが選ばれたというのは,NHK視聴者の感性が真っ当であることの証であるように思う.
私は六十四歳の時に冠動脈狭窄が心筋梗塞一歩手前の状態になり,東京都立多摩総合医療センターで心臓バイパス手術を受けた.
入院して,検査等を受けながら手術の日を待っていると,責任ある立場の看護師さんから,看護学校の学生の実習に協力してもらえないかと相談があった.もちろん快諾した.
翌日から,一人の三年生の学生さんが私について,バイタルの測定とか色々な看護作業を行った.
手術は成功し,私が退院する日,病院の玄関で見送ってくれた彼女の眼差しを《ナイチンゲールに憧れて》を観て思い出した.
コロナ禍の当初から,反マスク&反ワクチンの旗を振っているライターの中川淳一郎が,プレジデントオンライン《日本中で繰り返される「大切な誰かのために」という言葉は、個人を窒息させる恐怖のフレーズである》[掲載日 2022年12月29日 12:15] の中で,「利他」が如何に欺瞞的であるかを力説している.長文なので中川自身が書いた【まとめ】を下に引用する.
《【まとめ】今回の「俺がもっとも言いたいこと」
・コロナ騒動以降、日本では「誰かのため」「大切な誰かを守ろう」といった言説がはびこるようになった。
・「誰か」の定義はあいまいすぎる。「誰か」って、誰だよ?・実態がわからない「誰か」のために、利他的に行動することを強要されるのがいまの日本。それができなければ排斥されてしまう。
・「大切な誰か」論法は欺瞞である。早くそれに気づき、主体的に生きるべきだ。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
中川淳一郎の論理は,フリースペースたまりばのスタッフや看護学校の学生たちに向かって「君たちのやっていることは欺瞞だ.それに気づいて主体的に生きるべきだ」と責めるに等しい.
人間には,利他の志を持つ人々と,中川のようなゲスがいるのである.
ちなみに,中川は反マスクを主張しているが,実は以前「みんながマスクをしているところでは自分もマスクをする」と書いていた.中川には,航空機の中で暴れた反マスクおじさん奥野淳也のような一貫性はない.ゲスはどこまでいってもゲスである.
さらにちなみに,奥野淳也は,メディアの取材を受ける時はマスク非着用だが,普段はマスクをしているという.ネットにその写真が流通したのだが,今は見つからなくなっている.中川も奥野も,世渡りマスク派と呼ぶのがいいだろう.
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ウクライナに自由と光あれ
(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)
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