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2022年11月17日 (木)

非ステロイド性抗炎症薬の奇妙な副作用 /工事中

 精密な診断 (MRI) を受けたわけではないのだが,整形外科医は私の左膝は変形性膝関節症だと言う.左膝が炎症を起こしていわゆる「水」がたまっている.
 治療は解熱消炎鎮痛剤「ロキソプロフェン」(Wikipedia【ロキソプロフェン】) の服用と,膝に経皮鎮痛消炎剤「ジクロフェナクナトリウム」のテープ剤を貼ることである.代表的なロキソプロフェン剤の商品名はロキソニンであり,ジクロフェナクナトリウムはボルタレンがよく知られている.
 なかなかよくならないうちに,ジクロフェナクナトリウムのテープ剤は副作用が生じた.テープ剤を貼った膝の部位に強い痒みを伴うカブレができたのである.
 そのためテープ剤の貼付は止めて,ロキソプロフェンの服用だけにした.
 最初は一日に朝昼晩の三回服用だったが,やがて朝晩の二回で済むようになり,発症から五ヶ月後の現在は朝に服用するだけである.
 ロキソプロフェンは色々な副作用があり,それらは Wikipedia【ロキソプロフェン】やロキソニンの説明文書に記載されている.
 しかし説明文書自体には書かれていないがよく知られている副作用がある. それはロキソニンに特有の副作用ではない「薬物乱用頭痛」である.
 これについては第一三共ヘルスケア社の公式サイトに説明 (《薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)の原因は?月に10日以上鎮痛薬を飲み続けている人は要注意!》) がある.
 ここでは Wikipedia【薬物乱用頭痛】から下に引用する.
 
薬物乱用頭痛とは、片頭痛や緊張型頭痛の患者が、急性期頭痛薬を乱用することによって、頭痛頻度や持続時間が増加して、慢性的に頭痛を呈するようになった状態と定義される。薬物乱用が是正されない限り頭痛は持続する。原因薬物を中止すると、頭痛は改善し、薬物乱用以前の頭痛に戻ると考えられている。薬物の乱用とは、単一成分の鎮痛薬ならば1か月に15日以上の使用、それ以外の鎮痛薬ならば、1か月に10回以上の使用である。
 原因となる頭痛薬は、アセトアミノフェンやNSAIDsなどの鎮痛薬、トリプタン (医薬品)、複合鎮痛薬(鎮痛薬とカフェインの合剤など)、エルゴタミン製剤、オピオイド、バルビツール酸などがある。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 上の引用文中の《NSAIDs》は非ステロイド性抗炎症薬のことである.Wikipedia【非ステロイド性抗炎症薬】から下に引用する.
 
非ステロイド性抗炎症薬は、抗炎症作用、鎮痛作用、解熱作用を有する薬剤の総称。
 ……
 疼痛、発熱、炎症の治療に用いられる。代表的なNSAIDにはアセチルサリチル酸 (商品名アスピリン、バファリン)、イブプロフェン (商標名ブルフェン)、ロキソプロフェン (商品名ロキソニン)、ジクロフェナク (商品名ボルタレン) がある。また外用薬もある。
 NSAIDsというのは先行するステロイド系抗炎症薬の副作用が問題視された後に登場したステロイドではない抗炎症薬。ところがこのNSAIDでも、NSAID潰瘍のような、死亡につながる可能性のある副作用は2000年前後にアメリカ合衆国で毎年3,200人、あるいは過剰推計ともされるが1万6,500人が死亡しているという2つの推計がある。COX-2への選択制を高め胃腸作用を減らしたNSAIDのいくつかでは心臓の副作用が増加した。
 様々なNSAIDsは作用には大差がなく、異なるのは用量、服用方法である。NSAIDsの胃粘膜 保護に関する試みで最も成功したのは、アセチル化とpHの調整、また、胃粘膜保護作用を持つ薬剤との併用である。胃酸分泌抑制効果のあるH2ブロッカー (例:ラフチジン (プロテカジン®)、ラニチジン (ザンタック®) や、ミソプロストール (サイトテック®) が、アメリカ合衆国では最も成功した薬剤である。例えば、ジクロフェナクとミソプロストールを合剤にしたオルソテックなどもあり、非常に効果的だが、高価である。日本では、バファリン®等の合剤がある。
 一般医を受診する患者の25%は変形性関節症で、その半数から全ての例がNSAIDsを処方される。65歳以上の人口の80%にX線上有意な変形性関節症が存在するとされており、そのうち60%が疼痛などの症状を訴える。2001年には、アメリカ合衆国では7,000万錠のNSAIDsが処方され、300億錠が薬局で販売された。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 この解説によると《一般医を受診する患者の25%は変形性関節症で、その半数から全ての例がNSAIDsを処方される》だという.この箇所に書かれている「変形性関節症」が膝の関節症かどうか不明だが,とにかく関節の痛みに膨大な量の NSAIDs が処方されていることがわかる.
 そして非ステロイド性抗炎症薬には胃に潰瘍ができる致命的な副作用があり,米国で年間数千人の死者が出ているという.
 もちろんこの副作用が野放しになっているわけではなく,医師は NSAIDs を処方する際は胃粘膜保護作用を持つ薬剤も処方する.
 これで膝関節の痛みに NSAIDs 連用して大丈夫かというと,既に述べた薬物乱用頭痛がその先に待っている.
 だが幸いなことに,膝関節症に対する NSAIDs 連用が原因の薬物乱用頭痛は発生頻度が高くない.Wikipedia【薬物乱用頭痛】には次の記述がある.
 
病態生理
 急性期頭痛薬を乱用することで、痛みの症状が増悪するというのは様々な疼痛疾患の中でも稀である。関節リウマチの治療では大量に鎮痛薬を使用するが新規の頭痛が問題になることは稀であり、片頭痛または緊張型頭痛の病態そのものが薬物乱用頭痛を起こす素因と考えられている。
 
 急性期頭痛薬とは NSAIDs などの頭痛薬である.上の記述は,関節リウマチなどの頭痛以外の痛みに NSAIDs などの頭痛薬を乱用した際に,新たに頭痛が生じることは希だと述べている.薬物乱用頭痛は,元からある頭痛に急性期頭痛薬を乱用した時に生じるというわけだ.
 そういうわけで,実際に私は,膝痛に対してもう何ヶ月もロキソプロフェンを連用しているが,頭痛は起きていない.
 以上,非ステロイド性抗炎症薬についての注意点をまとめると,(1) 重大な副作用として胃潰瘍のリスクがあるので,胃粘膜保護作用のある薬剤を併用すること,(2) 頭痛持ちの人は乱用すると薬物乱用性頭痛が起きる可能性があるのを知っておくこと,の二つである.
 
 さて,これで一件落着かというと,そうではないのである.
 製薬会社の公式サイトにも,ロキソニンなど非ステロイド性抗炎症薬の説明文書にも,また百科事典にも書かれていないが,ウェブ上でのみ知られている (警告が発せられている) 副作用があるのだ.
 それは,ハゲ である.

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