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2022年11月 2日 (水)

味噌汁に「千代の一番」などを使うのは屋上屋を重ねることだ /工事中

 昨日放送の《家事ヤロウ》を視聴したら,加藤茶御夫婦が出演した.
 たぶん今,高齢者にとってもっとも好感度の高い女性の一人である妻の綾菜さんが,昼頃になって起床してくる加藤茶のために朝食をつくる場面を,予めセットしてあるカメラで撮影した映像である.
 さてようやく起きて来た加藤茶の朝食の希望は,パンと味噌汁の組み合わせだった.
 テレビの料理番組であれば,朝食のパンに合うスープのレシピを教えてくれたりするが,パンと味噌汁の
 ここから綾菜さんは,加藤茶のために一所懸命に減塩の食事を工夫するのだが,味噌汁を作る時の出汁に「QVC 千代の一番」(製造者;株式会社千代の一番,東京都葛飾区) を使った.これはテレビ・ショッピング・サイト“QVC”が販売している「千代の一番」の一アイテムである.
「千代の一番」は出汁パックとしては店頭でよく見かける調味料ブランドである.以下,特定の商品名の中以外の「だし」は漢字で「出汁」と書くことにする.
 その中の「QVC 千代の一番」の原材料をみてみよう.
*****「QVC 千代の一番」の原材料*****
原材料:風味原料 (鰹節粉末,鮪節粉末,そうだ鰹節粉末,鰹エキス,うるめ鰯粉末,かたくち鰯粉末,昆布粉末,椎茸粉末,昆布エキス),食塩 (国内製造),砂糖 (甜菜糖,甜菜オリゴ糖),酵母エキス (酵母エキス,でん粉分解物),粉末醤油,(一部に小麦・さば・大豆を含む)
 
 ちなみに,通販ではなくスーパー等の店頭でよく見かける「千代の一番万能和風だし ゴールド」(公式サイト商品説明ページ) の原材料は以下の通りである.
*****「千代の一番万能和風だし ゴールド」の原材料*****
原材料:風味原料 (鰹節粉末,鯖節粉末,昆布粉末,そうだ鰹節粉末,椎茸粉末,鰹エキス,昆布エキス,鮪節粉末,うるめ鰯粉末,かたくち鰯粉末),食塩 (国内製造),砂糖,鰹だし顆粒,味付鰹節粉末,粉末醤油,酵母エキス/調味料(アミノ酸等),(一部に小麦・さば・大豆を含む)

 これを読めば一目瞭然だが,製造者は「QVC 千代の一番」や「千代の一番」などの「千代の一番」類を「万能和風だし」と称しているが,科学的にも法律的にもこれらは「出汁」ではない.正しくは「出汁」の材料 (鰹節や昆布など) を加工した「風味調味料」である.(後述する)
 この「出汁と風味調味料の差異」について論じるのがこの文章の意図であるが,その前に,関西圏の食文化では「出汁」という言葉の使い方がいい加減であることを指摘しておかねばなるまい.Wikipedia【出汁】には
  
だしは麺類や、おでんなどの鍋料理や煮物など様々に用いられる。また、和え物の味付けに利用したり、酢などを割って二杯酢など別の調味料としたり、一夜漬けなどの調味に使用する事がある。西日本において「だし」と表記する場合は、うどん用のつゆそのものを指すことがあるが、料亭などでは「だし」と「つゆ」を正しく使い分けており、料理に詳しくない者が誤用したものが広がった呼び方である。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 上の引用文中に書かれているように,《料理に詳しくない》関西人のテレビタレントが食レポをする場面で《うどん用のつゆそのもの》を「出汁」と呼んで誤用しているのはよくあることだ.
 しかしその一方で,同じWikipedia【出汁】には,上に引用した箇所とは別の小項目に,次の間違いも書かれている.編集に参加する者に資格を求めず,専門家も馬鹿もお構いなしに複数の人間が寄ってたかって勝手に書き込む方式の Wikipedia では,相矛盾することが同一の辞典項目に書かれることを排除できないのである.
 
東日本では、「だし」と言えば、汁物やスープなどの「つゆ」を指す。》 
西日本では、「だし」と言えば、「昆布や鰹節や煮干しなどの下味」を指す。
 
 この二つの記述は全くの嘘である.東日本でも西日本でも料理の専門家でも,自分で料理をする一般人でも「出汁」と「つゆ」を区別している.なぜなら「出汁」と「つゆ」を区別しないとレシピを正しく書いたり読んだりできないからである.
 しかし自分で料理をしない一部の関西人は「出汁」と「つゆ」の区別できずに混同している.うどんの「つゆ」を飲んで「このお出汁はおいしいですなあ」だけなら阿呆でも言えるからである.
 このように,Wikipedia【出汁】は誤りだらけで役に立たないゴミと化している.
 役に立たないだけならいいが,この種の Wikipediaにおけるゴミ項目が問題なのは,誤情報を世の中に広めてしまうことである.
 Wikipedia【出汁】でいえば,「出汁」と「つゆ」の混同である.これがどのような問題を私たち国民の食生活にもたらしたかを示すことが本文章の趣旨だが,その前に少し前提となる知識を記す.
 
 食品製造業者は,消費者保護を目的として,包装された加工食品の包装に,食品表示法第四条に定める事項を表示しなければならない.その事項は,名称,アレルゲン (食物アレルギーの原因となる物質),保存の方法,消費期限または賞味期限,原材料,添加物,栄養成分の量及び熱量,原産地その他食品関連事業者等が食品の販売をする際に表示されるべき事項である.
 この法律に「名称」とあるのは,商品名ではない.食品表示法に関連する内閣府令「食品表示基準」に「名称」の定めがある食品についてはその定められた名称を表示しなければならない.またこの基準に定めのない食品は,一般的な名称を用いる.(例;「スナック菓子」はよいが「ポテチ」は不可である)
 さてこの基準に「風味調味料」が記載されている.用語の定義は農水省告示「風味調味料品質表示基準」に記載されており,以下の通りである.
*****風味調味料の定義***** 
 調味料 (アミノ酸等) 及び風味原料に砂糖類、食塩等 (香辛料を除く) を加え,乾燥し,粉末状,顆粒状等にしたものであって,調理の際風味原料の香り及び味を付与するものをいう.
 風味原料とは,かつおぶし,煮干魚類,こんぶ,貝柱,乾したけ等の粉末又は抽出濃縮物をいう.

 この定義に合致する食品は表示する「名称」を「風味調味料」としなければならない.
 実際の商品をみてみよう.既に紹介した「千代の一番万能和風だし ゴールド」の原材料を再掲する.
 
原材料:風味原料 (鰹節粉末,鯖節粉末,昆布粉末,そうだ鰹節粉末,椎茸粉末,鰹エキス,昆布エキス,鮪節粉末,うるめ鰯粉末,かたくち鰯粉末),食塩 (国内製造),砂糖,鰹だし顆粒,味付鰹節粉末,粉末醤油,酵母エキス/調味料 (アミノ酸等),(一部に小麦・さば・大豆を含む)
 
 これは「風味調味料品質表示基準」の定義に完全に合致するので,「名称」は「風味調味料」である.

 一般常識として,風味原料 (魚の節類や昆布粉末等) をティーバッグ用の小袋に入れたものを出汁パック等と呼ぶ (実際にそのような商品が多数存在する) が,上記の例のように,風味原料に食塩,砂糖,粉末醤油,そしてコストダウンのためにグルタミン酸Na [←原材料表示においては「調味料 (アミノ酸等)」と書かれることがほとんどである] を加えたものは,本来の出汁パックとは大きく異なる.さらには,このようなものを「出汁」「和風だし」などと呼ぶのは日本語的に全くの誤りである.あるいは,誤りを承知の上で,消費者を欺くためにする表現であると言っていい.
 国語辞書 (精選版日本国語大辞典) には,「出汁」の語義として《鰹節,昆布,椎茸などを煮出した汁で、汁ものや煮ものなどに用いる》とある.つまり「出汁」は液体である.これに対して鰹節,昆布,椎茸などは「出汁」の材料であり,固体である.両者は区別されねばならない.
 しかるに
 




 






 平成18年8月24日に農林水産省は「風味調味料品質表示基準の一部改正について (案)」という文書を公表した.
 その趣旨は以下の通りである.
「JAS規格及び品質表示基準の制定・見直しの基準」(平成17年8月農林物資規格調査会決定) に基づき、風味調味料品質表示基準 (平成12年12月19日農林水産省告示第1669号) について、所要の見直しを行う。


 

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