ネタ枯れYouTuberの悪行
弁護士ドットコムニュース《とんかつ屋のソース容器を舐めたYouTuber炎上、法的にどんな問題ある?》[掲載日 2022年11月29日 18:29] に違和感がある.その箇所を下に引用する.
《こうした行為が道徳的にいけないことは当然のことですね。法的にはどうでしょうか。
まず、刑事の問題になります。わざとなのかどうかはわかりませんが、もしわざとだった場合、今回のような行為は、器物損壊罪(刑法261条)にあたる可能性があります。
ここで「損壊」の意味は『目的物の効用を害する一切の行為』をいいます。今回のようにソース自体を壊したわけではありませんが、他の人が使うのをためらうような状態にしているので、損壊したといえます。
仮にネタとして、わざと舐めたのであれば、3年以下の懲役または30万円以下の罰金を科される可能性があります。
ただし、この犯罪については、被害者が警察に処罰を求めることが必要になります(親告罪)。したがって、店側が警察に処罰を求めなかったような場合、処罰されないことになります。
次に、民事の問題について説明します。
お店のソースを事実上、使えなくしたわけですから、民法709条の「不法行為」にあたり、お店は損害賠償を求めることができます。
損害賠償の金額については、ダメになったソースの代金がベースで、場合によっては、元動画によって被害を受けた損害の賠償も加算されます(金額としては大きくならないかと思います)。
今回は、あとで謝罪したということなので、お店との間では大きな問題にならなかったようですね。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
少し前にこの種の行為の動画を投稿することが流行した.今回の事件の当該 YouTuber であるヒロックは,投稿ネタに困って過去の事件を再現しようとしたものと考えられる.
過去の例では問題行為を行った者がアルバイト店員だったことが多いが,客の場合もあり,回転寿司のスシローで醤油容器を舐めた例と,鼻の穴に醤油容器の注ぎ口を突っ込んだ例がある.この例は醤油とソースの違いがあるだけで,ヒロックの行為と同じである.ヒロックが参考にしたのはこの事件かと思われる.
さて,これらの行為は,店員でも客でも法的な区別はなく,Wikipedia【バイトテロ】には次の記述がある.(事例については Wikipedia【バカッター】に記載あり)
《刑事においては信用毀損罪・業務妨害罪(刑法第233-234条、234条の2、3年の懲役および50万円の罰金)などに該当する。また、商品や什器を破壊した場合は器物損壊罪(刑法第261条、3年の懲役および30万円の罰金)、不衛生な状態に置かれた食品を販売・提供した場合は食品衛生法違反にもなる。
民事では什器のクリーニングや顧客に対する返金、商品の返品・交換、また営業休止や閉店に追い込まれた場合、契約解除に対する取引先への違約金や、バイトテロと無関係な従業員を解雇する際の給与の補償、テナント立退き料などが発生する。実際にバイトテロを直接の動機として閉店に追い込まれた、後述のブロンコビリーやそば屋「泰尚」の事件では元店員に対する巨額の損害賠償請求が見込まれていたが、泰尚の事件では2015年(平成27年)3月に元アルバイト店員らが連帯して200万円を店側に支払うことで和解が成立した。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
上の引用箇所にある通り,本件の場合も過去の例にあるように,刑事では,当該 YouTuber のヒロックには信用毀損罪,業務妨害罪,器物損壊罪の疑いがあり,ヒロックの行為によって被害を受けたとんかつ店は,被害者でありながら食品衛生法違反に問われる可能性がある.
民事では,とんかつ店 はヒロックに損害賠償請求ができる.
冒頭に紹介した記事の筆者である神戸マリン綜合法律事務所の西口竜司弁護士は,自身も YouTuber であるという.
そのためか西口弁護士は本件の影響を意図的に,器物損壊罪だけに矮小化している.
しかし昨日時点で,いわゆる「特定班」が,とんかつ店を特定しつつあり,店の営業に被害が生じるのはこれからである.
すなわちヒロック側が「一回謝罪したから,その後に発生した店の損害と賠償のことは知らないよ」と言うことは道義的にも法的にもできない.ヒロックが行った口頭謝罪は民事事件における和解ではないからである.
従って西口弁護士の見解《あとで謝罪したということなので、お店との間では大きな問題にならなかったようですね》は,あたかも「謝罪すれば大きな問題にならない」かのような印象を与え,いわゆる迷惑系 YouTuber をそそのかすものであり,非難されるべきである.
*********************************************
ウクライナに自由と光あれ
(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)
| 固定リンク
最近のコメント