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2022年10月 9日 (日)

無知で性格が悪いのは如何ともしがたい

 名護市のアメリカ軍キャンプ・シュワブのゲート前で行われている辺野古移設に反対する座り込みについて,ひろゆき氏のツイート (下記) が物議を醸している.
 
座り込み抗議が誰も居なかったので、0日にした方がよくない?
『座り込み』その場に座り込んで動かないこと。目的をとげるために座って動かない。知らない間に辞書の意味変わりました?》
《1日20分ぐらいの抗議行動を平日に3回やる事を『座り込み3011日』と表現するのは誤解を招く行為なので、「抗議行動』に変えたら?」と、話しかけられた現地の人に言いましたが、まともな返答はありませんでしたよ。
 
 辺野古移設反対運動をしている人たちの神経を逆なでしたのは《知らない間に辞書の意味変わりました?》だろう.嘲笑的な言い回しで相手を揶揄し逆上させるのが,ひろゆき氏の常套手段だ.
 しかし,ひろゆき氏には「座り込み」戦術に関する実際の知識も経験もないから,「座り込み」の意味について,辞書つまり国語辞書を持ち出した.これはまさに,ひろゆき氏の無知を示している.しかも,ひろゆき氏の言う「辞書」とは,国語辞書としてはお手軽なネット辞書「デジタル大辞泉」であるところが情けない.
 揶揄された側の人々は,そのところを突くべきだ.国語辞書を調べても「座り込み」の実際は書かれていないぞ,と.
 現在の日本でもまだ行われている「座り込み」は,単に《『座り込み』その場に座り込んで動かないこと。目的をとげるために座って動かない》ことではない.辺野古移設反対運動のような社会運動における「座り込み」戦術は,戦後における我が国の労働運動の具体的闘争戦術の一つが受け継がれたものであるから,ひろゆき氏のように,辞書に書かれている語義を持ち出すのは,中高生並みの知識レベルであるとしか言いようがない.
 
 さて国語辞書では社会運動における「座り込み」について知識が得られないので,百科事典を参照してみよう.残念ながら Wikipedia【座り込み】は,編集合戦が行われていてまともな状態ではないので,いささか資料としては古いが,日本大百科全書(ニッポニカ)「座り込み」の解説を下に引用する.
 
座り込み
 運動主体が特定の場所に座り込むことによって、運動の敵に対して直接的な打撃を与えることを意図したり、自分たちの要求を第三者に広くアピールしたりすることをさす。本来はおもに、労働者が生産点に座り込み、自分たちの職場を守り、職制に対して直接的な攻撃をかける闘争(シット・ダウン・ストライキ sit-down strike)のことをいった。これは、会社側のロックアウトを防いだり、団体交渉に応じない会社側を交渉のテーブルにつかせたり、組合員の団結力を固め、表示するために有効であった。アメリカの公民権運動において、白人のランチカウンターに黒人が座り込む sit-in 戦術をとって以来、労働組合運動だけではなく、社会運動一般において、自分たちの要求や主張を広く国民にアピールするために用いられることが多くなっている。[矢澤修次郎]
[参照項目] | 団体交渉 | ハンガー・ストライキ
 
 上に示した日本大百科全書 (1984年出版)「座り込み」の解説はかなり昔に書かれたもので,今となっては言葉遣いが難解かも知れないので以下に少し解説を試みる.
 私が会社に就職した頃 (昭和四十年代の末) は,まだ労働組合のナショナル・センター (労働組合の全国中央組織) として総評 (Wikipedia【日本労働組合総評議会】) が存在していたが,民間企業の労働組合は次第に脱退し,官公労が主体の組織になっていた.民間企業の労働組合は,合化労連などわずかな組織を残すのみで,ほとんどは会社経営者との協調を原則とする右派労働運動が執行部を占めていた.
 その後,総評は社会党の退潮と共に急速に勢力を失い,昭和六十四年 (1989年) に遂に解散した.それと共に日本では労働争議が姿を消し,ストライキや座り込みなどの労働組合員の闘争は行われなくなった.労働争議の消滅は昭和という時代の終わりでもあった.
 さて当時の労働者側の闘争手段であった「座り込み」は具体的にどのようなものであったか.ひろゆき氏は「座り込み」を「ずっとその場に座り続ける」と歪曲しているが,上の日本大百科全書の「座り込み」の解説を読めばわかるように,「ずっとその場に座り続ける」などという意味はないのである.
 例えば,ある会社で社員が不当解雇されたとする.
 その会社の労働組合が総評系だった場合,被解雇者と組合は不当解雇反対闘争を始めるのだが,団体交渉を申し入れても会社側が応じない場合,まず穏やかな手段の「ビラ配り」や集会や「座り込み」などを行う.
 具体的には例えば,社員が出勤してくる始業前の時間帯などに,会社の玄関前などに組合員が座り込み,組合旗を立て,ビラを配り,マイクとスピーカーを使って道行く人たちに会社の不当解雇の事実を訴える.これは労働争議では採用されないハンガー・ストライキと異なり,専従ならともかく一般組合員は一日中やっている必要はない.そんなことをしたらトイレに行けないし,会社の中に人がいなくなった夜などには座り込む意味がない.w
 私は青年時代に組合青年部の役員だったことがある.その経験から言うが,「座り込み」は,ひろゆき氏が主張しているような「ずっとその場に座り続ける」形ではなく,割と柔軟な戦術であると組合運動では理解されていた.
 ひろゆき氏は労働組合運動の経験も社会運動の経験もない.だから「座り込み」戦術の実際のやり方を知らない.そのため,自分の主張の根拠として「辞書にはこう書いてある」と書いて無知をさらけ出した.まことに愚かである.
 いや,無知なのはともかくとして《知らない間に辞書の意味変わりました?》と嘲笑的な文章を書くところが,ひろゆき氏の性格の悪さを示している.
 無知な上に性格が悪い.これは如何ともしがたい.
 
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ウクライナに自由と光あれ
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(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)


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