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2022年10月29日 (土)

妄想の世界に

 現代ビジネス《セブンイレブンに「異変」あり…! “1億総コンビニ時代”の終焉で「コンビニから消えた人」の正体と、「コンビニ格差社会」の“意外すぎる現実”…!》[掲載日 2022年10月28日 5:00] から下に引用する.
 
買い物難民とコンビニ
 さて、それとは別にもうひとつ違う軸でコンビニを利用する3番目の顧客層がいます。それが買い物難民としての高齢者たちです。
 人生百年と政府がいうように、周囲の大人たちの大半は後期高齢者になってしまいました。私のまわりではみんなそこそこ元気なのはよいことですが、話を聞いてみるとやはり生活の中でも買い物が大きな課題になっているといいます。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 上に紹介した記事の筆者は流通分野の評論で名高い鈴木貴博氏である.鈴木氏の肩書を「経済評論家」とする向きがあるが,鈴木氏の書くものはコンビニとかスーパーの経営のことばかりで,これを「経済評論家」と呼んでいいものかと思う.
 それはさておき鈴木氏は《人生百年と政府がいう》と言う.詳しくいうと「人生100年時代構想」は安倍内閣の看板政策であった.しかし現岸田内閣がとっくの昔に放棄した.鈴木氏はまだ五十九歳でお若いのに,それを知らぬとは,いったいどうしたことか.ボケたのではあるまいな
 そもそも「人生100年時代」とは,ロンドン・ビジネス・スクール教授のリンダ・グラットンが『LIFE SHIFT (ライフ・シフト) 100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社) で提唱した言葉である.
 会社員なら周知のことだが,ビジネス書くらいアホな本はない.カネをドブに捨てるようなものだ.
 リンダ・グラットンの『LIFE SHIFT …』もその種の本で,このほら吹き女は《世界で長寿化が急激に進み、先進国では2007年生まれの2人に1人が100歳を超えて生きる「人生100年時代」が到来する》(Wikipedia【人生100年時代】から引用) と主張しているが,これが大嘘のペテンなのである.
 こんなインチキ本でも一緒になってホラを吹くのがビジネス・コンサルという商売で,例えば Schoo for Business というコンサルの《人生100年時代とは?根拠から働き方のヒントまで詳しく解説》には次のように書かれている.
 
人生100年時代とは、どのようなことを根拠に主張されているのでしょうか。 平均寿命や健康寿命などの観点から、3つをご紹介します。
平均寿命が伸びている
 平均寿命とは0才時に何才まで生きられるかを統計から予測した平均余命のことですが、2022年に内閣府が発表した「令和4年高齢社会白書」によると2020年現在の男性の平均寿命は81.56年、女性の平均寿命は87.71年でした。 1950年の男性の平均寿命が58.0年、女性の平均寿命が61.5年だったのと比較するとそれぞれ23.56年、26.21年も平均寿命が伸びているのです。 今後も平均寿命はさらに伸び2065年には男性84.95年、女性91.35年となり、女性の平均寿命は90才を超えると予想されています。 このことから近い将来、100才を超えて生きる人はそう珍しくなくなると言えるでしょう。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 こいつは数字を示せばいいと思っているらしいので,先進国の中でも最長寿国である日本の場合のデータを次に示す.

20221019b
 
 上図の出典は内閣府が公表した「令和4年版高齢社会白書」である.(「第1章第1節 高齢化の現状と将来像」)
 このタイプの変化は,自然現象によく観察されるもので,グラフにプロットすると,立ち上がりは急だが次第になだらかになり,やがて頭打ちになる.
 この曲線の状態では,おそらく女性の平均余命の延びは92歳を超えたあたりで停止し,男性は85歳を超えたあたりで停止する (これは「安定期に入る」とか「プラトーに達する」などの言葉を用いる) と予想される.
 化学反応とか,生物の繁殖とか,この形の推移は自然科学ではおなじみのものである.
 ところがリンダ・グラットンなど「人生100年」論者は,ヒトの平均余命には上限がなく,直線的に増加し続けると思っているようだ.
 Schoo for Business というコンサルのサイトに掲載されている文章中の《今後も平均寿命はさらに伸び》には実は何の根拠もないのである.
 そもそも上のグラフにおいて,2030年以降は,仮定にすぎない条件を組み込んで得られる推計値なのである.
 詳しくは国立社会保障・人口問題研究所が作成した《日本の将来推計人口 平成29年推計》に推計方法の説明があるので参照して欲しいが,要するに計算に用いるパラメーターによって推計結果が異なるのである.
 上図において,女性の平均余命が2020年で頭打ちになるような結果を得ることは可能だし,私見では,むしろその方が自然な変化かも知れない.(上図においては平均余命の不自然な上昇を示す変曲点があるが,何者かに忖度した意図的なパラメーター操作の可能性がある)
 ただ,この推計方法と結果の瑕疵は不問に付して,2020年以降に,あり得ないことだが,直線的に女性の寿命が延びて行くとして強引に直線をグラフに描き入れる (上図に当ブログの筆者が描き入れた青い直線) とする.
 すると,二十二世紀には日本の女性の平均余命は95歳くらいになるだろう.そして次の二十三世紀には「人生100年」になるかも知れない. 
 だがこれは,ほとんどあり得ない仮定の上の推計だし,戦争とか食糧危機とかパンデミックとか気候変動とか様々な社会現象を一切無視して,グラフだけで今から二百年後の世界を推計してどうする,と思うのがまともな話である.
 つまり「人生100年」などというものは,大ぼらに過ぎない.そしてこの大ぼらを吹く輩はペテン師である.
 Wikipedia【人生100年時代】にもはっきりと書かれているが,この大ぼらを日本で先頭切って広めたのは,小泉進次郎である.
 小泉に悪気はなかったのだろうが,悲しいかな彼にはペテンを見抜く学力も知力も見識も教養もなかった.(小泉進次郎の頭の悪さはいわゆる「小泉構文」に明らかである)
 しかるに小泉は,本を読み齧っただけでわけもわからぬのに「人生100年」を安倍晋三に売り込んだ.
 安倍は小泉の話に飛びついて2017年9月,首相官邸に首相安倍晋三を議長とする「人生100年時代構想会議」が設置され,翌年6月には「人づくり革命 基本構想」が発表されるなど政策への反映が進められた.しかし2021年11月,第2次岸田内閣によって両方共廃止された.事実の裏付けがない安倍内閣の政策を,岸田首相は引き継ぎたくなかったのだと思う.
 岸田内閣発足当時,テレビの宣伝広告を見ていると「人生100年」をアピールしている企業がいくつかあったが,今ではたぶんヤクルトだけである.いかにこの会社の宣伝広告担当部署が社会情勢に無関心かよくわかる.
 それは鈴木貴博氏も同じだ.以前の鈴木氏なら《人生百年と政府がいう》などと聞いている方が唖然とすることは言わなかった.
 そればかりか《周囲の大人たちの大半は後期高齢者になってしまいました》はどうしたことか.
 大人たちの大半が後期高齢者になったら,それは日本国の消滅するときだ.もう鈴木貴博氏は妄想の世界にいるとしか思われぬ.
 鈴木貴博氏は会社員に信用されていた評論家であっただけに,まことに残念である.
 
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ウクライナに自由と光あれ
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(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)


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