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2022年10月12日 (水)

婆さんのクレームは珍しいと思う

 二ヶ月ほど前から,左脚がむくみ始めた.左右の脚を見比べると歴然としていて,左足首は太い棒のようになっていて,くるぶしはどこかに行ってしまった.ネットの医学情報を調べると,下肢静脈瘤が原因の一つらしい.
 なんとなくこれは整形外科の範疇かと思って,藤沢駅近くの整形外科のクリニックで診てもらったら,内科の先生に相談してくれと言われた.
 そこでかかりつけの内科 (二ヶ月に一度通院している.院長は循環器が専門) で見てもらった.
 すると,医師は「下肢静脈瘤が脚のむくみの原因である可能性はあるので,専門医に診てもらいましょう」と言って紹介状を書いてくれた.
 普通は市中のクリニックの場合,大雑把に内科とか循環器科などの看板を掲げていているものだが,下肢静脈瘤に特化したクリニックがあると医師は言った.それだけ下肢静脈瘤は患者が多いということなのだろう.
 
 余談だが,少し前に美智子上皇后が深部静脈血栓症の疑いありと診断されたと報道された.
 下肢静脈瘤と深部静脈血栓症は異なる.
 深部静脈血栓症は,いわゆるエコノミークラス症候群のこと.足の深いところにある静脈に血栓が生じ,足の運動によって静脈中を移動して肺の血管に詰まる疾患である.
 下肢静脈瘤は深部静脈血栓症と直接的な関係はなく,静脈瘤ができると深部静脈血栓症になりやすいというわけではない.
 
 さて予約した日に下肢静脈瘤専門クリニックへ赴いた.
 エレベーターの無いビルの二階へと階段をあがると,目立たない幅半間 (90cm) のドアがあり,それを開けると細長く狭い待合室があった.ちょっと見には医院とは思われぬ構えである.
 待合室には壁を背にして長椅子とパイプ椅子が置かれていて,長椅子にすぐ面して受付がある.受付の奥はかなり手狭な事務室になっている.
 長椅子には高齢者らしき患者たちが七人,腰かけていた.もちろん患者が間隔を空けて腰かけるように椅子にはマークがしてある.
 私は,長椅子の前にある受付に設置されている消毒用アルコールの自動スプレーで手指を消毒し,受付の女性に「予約してある○○です」と告げた.
 すると問診票と診察の手順が書かれた印刷物が手渡された.
 下肢静脈瘤の検査はエコーで行うようだ.
 暫く待つと,看護師さんにエコー検査室へ案内された.そしてすぐ検査技師さんが来て,私にもディスプレイを見えるようにして検査が行われた.その後,院長が診察室で検査結果をタブレットに表示しながら結果を説明してくれた.
 詳細は省くが,結果はシロだった.静脈瘤の治療が今すぐ必要な状態ではないのことである.
 ただ,下肢にむくみがあることは事実なので,着圧ソックスの着用を勧めるとのアドバイスをもらった.
 着圧ソックス (弾性ストッキングとも) は静脈瘤の治療ではなく,むくみの対症療法だ.
 
 さて,話は私の脚のむくみのことではない.
 待合室にいた ババア かなり高齢の老女のことである.
 私が長椅子に腰かけていると,その老女がドアを開けて待合室に入ってきた.
 医療事務員の女性は二人いたのだが,その一人に老女は話しかけた.
 聞くともなく聞いていると,「お薬手帖」のことらしい.
 先日,老女がこのクリニックに来て,薬を処方してもらった.このクリニックは処方箋を出すのではなく院内処方だが,老女は「お薬手帖に貼るシール (医薬品の名称が書かれている紙片) をもらっていない」とのクレームをつけているのだ.
 これに対して窓口事務員の女性は「お薬の入っている袋に,お薬の名前が書いてある紙を入れました」と答えた.
 どうやら老女は,紙袋から薬を取り出したあと,薬の名称が書かれている紙片が入っているのに気が付かず,袋を捨ててしまったようだ.
「会計をして薬を受け取る時にお薬手帖を出していただければ,こちらが貼りましたのに…」とも事務員さんは言った.
 話の具合では,老女が一方的に迂闊なのであった.そもそも薬を受け取る時に「お薬手帖」を提出しないのが悪い.
 
 しかしここから,老女がねばり始めた.
 医薬品名を書いた紙を再発行しろと要求したのである.
 再発行は簡単だからそれはいいのだが,再発行された紙片は,シール式ではなくプリンターで印刷した単なる紙だった.老女はそれが気に入らないという.「お薬手帖に貼る紙はシールでなきゃだめ」と老女は主張した.
 老女が言うには,お薬手帖に貼る紙は全国的に様式が決まっているのだとのこと.糊付けではだめで,シール式に決まっているのだと.(これは嘘)
 そしてシール紙片には患者名と日付がプリントアウトされているもんだと言い張った.
 事務員さんは老女のクレームに抵抗せず,わかりましたと言って,手書きで氏名と日付を書き,糊で「お薬手帖」に貼ってやった.
 相手が無抵抗だと張り合いがないと見えて,老女はそのあと,「お薬手帖」の意義を説明し始めた.いわく,「お薬手帖」を使えば薬の飲み合わせを防ぐことができるのだ,云々.
 そもそもこのババアが,窓口に「お薬手帖」を出さなかったのがいけないのに,「お薬手帖」の意義も減ったくれもないもんだ.
 で,問題は,このババアはクレームを言い募りながら,事務室に入ろうとするのだ.
 事務員さんは「カウンターの外に出ていただけますか」と言ってクソババアを押し戻そうとするのだが,ぐいぐいとクソババアは事務室に入ってしまった.
 病院でもスーパーでもコンビニでも,理不尽なクレームをつけるのはジジイと相場が決まっているのだが,私はババアの病院クレーマーを初めて見た.こいつのクレームを聞いていると,もう完全に大脳前頭葉が萎縮しきっていると思われ,嫌なものを見てしまったと腹が立った.
 下肢静脈瘤の患者は老人が多い.クリニックの事務員さんはご苦労が多いだろうなあと同情した.
 
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ウクライナに自由と光あれ
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(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)


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