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2022年9月14日 (水)

ロイヤルな喪装 /工事中

 日本では葬儀の際の服装にドレスコードはないが,暗黙の了解事項として,男性はいわゆるブラック・フォーマル (いわゆる略礼服) 以上の様式の洋装喪服を着用することになっていて,明治時代以降,一般的には洋装の正装 (モーニング・コート) が行われる.紋付袴で葬儀に参列した人を私は見たことがない.
「ブラック・フォーマル以上」の「以上」という意味は,喪主がモーニング・コートを着る場合があるからである.
 また略礼服 (安価な既製服が売られている) よりも格式高いものに,ダーク・スーツがあり,このスーツの仕立てについての詳細は省くが,紳士服の○○あたりで売っている既成の略礼服よりお高い.というか,普通はオーダー・メイドである.
 ま,ほとんどの場合は略礼服で用が足りる.
 余談だが,日本経済のバブル時代に,若者たちが友人の結婚式のためにタキシードを拵えるのが流行ったなあ.まっ昼間の披露宴にタキシードを着てくる阿呆も多かった.
 誰が着てもモーニング・コート (英語で正しくは morning dress という; morning coat は上着を指す ) はサマになるのだが,タキシードは,寄席のイロモノ芸人のように見える男がほとんどだった.最近の人でタキシードが似合うのは新庄剛史さんくらいのものだ.w
 
 さてしかし,女性の場合はちょっと事情が異なる.男性の洋装であるモーニング・コートは衣服としての仕様がきっちりと決められているのだが,女性の洋装はデザインの自由度が非常に高いからである.
 冠婚葬祭において,主催者 (新郎新婦の母親,喪主) の場合は和装正装の留袖一択であるが,ゲスト (招待客,弔問客) である場合は洋装が無難だ.しかしその場合は自分でデザインの選択をしなければならないのでこれが困る.大抵は葬式にも披露宴にも使える黒地のワンピースが略礼服とされているので,これを選ぶのが普通だ.安いし.w
 ところが,故エリザベス女王の追悼演説を行ったトラス英首相の服装があれでいいのか調べている途中で,ツッコミ所満載のこと書いているブログを見つけた.《葬儀のマナー 女性の葬儀の服装で最もフォーマルなのはワンピースではない》[掲載日 2021年10月24日] である.このブログの筆者は葬儀社のベテラン社員で,自己紹介に《専門分野はお葬式の担当と葬儀・葬儀業界の分析です。 葬儀の現場から独自の視点でリアルな情報を発信します。月間アクセス45万PV達成》とある.葬儀のプロだ.しかし葬儀のプロでも嘘は嘘と指摘せねば.
 指摘すべきことの最初は,本題から外れるが,《ツーピースはスカート+ブラウス+ジャケットの組み合わせのこと。アイテム3つなので、これはスリーピースと呼ぶべきで、アンサンブルの方がツーピースと呼ばれるのにふさわしいのではないかと個人的に思ったりもしますが、ややこしくなるので私の意見は忘れてください》と書いている箇所.
 女性社会人なら誰でも勉強して知っているが,ジャケットを着る場合のブラウスはインナー扱いである.男性のツーピース・スーツ (ジャケット+パンツを含む) の場合にワイシャツがインナー扱いなのと一緒である.
 ジャケットなしでも見苦しくないデザインのブラウスはアウター扱いである.もちろんインナーとしてもアウターとしても着られるブラウスもあって,これが女性服の自由度の高さである.
 従って,女性服のツーピースは,スカート+ジャケットの組み合わせである.上の《ツーピースはスカート+ブラウス+ジャケットの組み合わせのこと》は真っ赤な嘘である.女性のスリーピース・スーツももちろんあって,男性服と同じくジャケット+ベスト (ジレ) +スカートの組み合わせだ.欧州映画を観ていると,上流階級の子女が通う学校の女子生徒の制服がこれだったりする.日本の会社の受付嬢やホテルの社員のユニフォームにも見かける.
 それはそれとして,《葬儀のマナー……》の筆者は,次のように述べている.
 
さてフォーマル度が ワンピース>アンサンブル ってことは、アンサンブルのジャケットを脱ぐとよりフォーマル度が高まるということになって、ヘンじゃない?
 という疑問がわきました。
 高級レストランのドレスコードからも分かるように、メンズの服ならジャケットを羽織った方がフォーマルというのは大原則です。
……
 つまり日本で喪服として着られるワンピースは、先程の画像の通り装飾がなく化学繊維でできたつなぎのスカートといった風体なのですが、一方であちらの(ワンピース)ドレスは、光沢も装飾もOKで、パーティー文化の背景を感じられるものです。
 それで国際基準上(ワンピース)ドレスがフォーマルランキングの1位に来ているのです。
 というわけで私の仮説。
 そもそも (ワンピース)ドレス>アンサンブルが正式な国際基準である。
 それが日本に伝わった際、本来 (ワンピース)ドレス>アンサンブルとすべきところを日本には(鹿鳴館の失敗以来)ドレス文化がないので、受け入れられる素地が無かった。そこで「ドレス」という単語の方を省いてしまった結果 ワンピース>アンサンブル という誤った解釈が日本のルールとして定着したということではないでしょうか。
……
 というわけで今後日本のお葬式で、ドレス文化が今さら根付くことはなさそうなので、現実的な対応として女性のお葬式のフォーマル度は アンサンブル>ツーピース>パンツスーツ>黒のワンピース の順にすべきじゃないでしょうか。
 日本で出回っている葬儀用の黒のワンピースはドレスなんかではなく、「ジャケットを脱いだだけのアンサンブル」にしか過ぎないのですから、最下位でしょう。
 
 上に《女性社会人なら誰でも勉強して知っている》と書いた.これまた女性なら周知のことだが,現在の女性服のツーピースは,若き日のココ・シャネルがデザインした服が源流である.彼女以前の女性服は,ウエストを締め付けたドレス・スタイルであり,労働には著しく不向きであった.折しも女性の社会進出が
 また愛用者の多いパンツ・スーツのスタイルも,シャネルが確立したものである.
 
 
 
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20220914b
 
 画像1で明らかなように,



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