情報サイトOVOに掲載された《食品値上げ2万品目突破 10月に予定されているのは6,500品目!》[2022年9月2日 17:00] が,今秋の怒涛の如き生活物資価格値上げを伝えている.
《コロナ禍や戦争と、消極的要因は目に見えているから仕方ないとはいうものの、値上げに続く値上げで、庶民のお財布は音を上げそうだ。帝国データバンク(東京)の調査によると、値上げラッシュの第3波がやってくる。10月には食品の6,500品目で値上げが予定されており、年内最多の月になりそうだ。
「加工食品」で値上げ1万品目に迫る チーズなど乳製品も値上げが相次ぐ
上場する食品メーカー主要105社について、2022年以降の価格改定計画(値上げ、実施済み含む)を調査。8月末までに累計2万56品目の値上げが判明した。初めて1万品目の値上げが判明した5月末時点から3カ月間で新たに1万品目の値上げ計画が明らかになっている。このうち、9月単月の値上げは2,424品目に上り、今年初めてとなる2カ月連続・2,000品目超の値上げ。食用油や小麦などの食材高に加え、原油高に伴う包装資材や容器、物流費の高騰、急激な円安が重なり、ほとんどの食品・飲料で値上げが行われているのが特徴だ。
分野別に見ると、値上げが最も多いのは加工食品で8,530品目。値上げ率も平均で16%に達し、年後半にかけて大幅に値上がりする食品が多いという》
食品の価格上昇は,国民の貧富差をあからさまにする.
食品価格が一割二割上がったところで富める者には大した影響はないが,貧しい者には大きな打撃である.食い物の質とか量が次第に低下するのはしみじみと情けない思いがする.かつて私は本当に貧乏学生だったので,財布に硬貨しかない時の切なさはいまだに忘れられない.
街頭で射殺された安倍元首相は,貧しい者への心配りを一切しない政治家だった.カネがなくて腹を減らしたことがないからだろう.今日の飯を食うのに必要なカネが財布にないということは,想像もできなかったに違いない.
殺された元首相は,非正規雇用を自由な働き方だと言った.そしてこの長期政権の間に,高等教育を受けて世に出た青年たちの無視できぬ部分を待ち受けていたのは非正規雇用であった.
低賃金の彼らには,家庭を築き子を育てる余裕はない.なのに政府は,お飾りの少子化対策担当大臣を任命し続けてきた.そして子供は減り続けた.
貧困化したのは若い男だけではなかった.女性の貧困化も進んだ.女性の最貧層の実態は統計的な資料がないのだが,昨年の四月に東京都渋谷区のバス停で,弱者に対して異様に厳しくなった社会の片隅で,住むところを失った一人の女性が,何の面識もない男に撲殺されて亡くなった事件は,私たちに衝撃を与えた.
殺された女性は八円しか持っていなかった.もはや生きる術のなくなった彼女を,無慈悲に殴り殺した男は「邪魔だった.痛い思いをさせればいなくなると思った」と警察に供述した.
私たちの社会は,街頭で殺された首相の統治下に,いつの間にか,こんなことになってしまった.無関係の人を「邪魔だ」から殺してしまう世の中になった.だが彼女の死後も,政府は貧しい人々に何の関心も示さなかった.
呆れるほどものすごい豪邸に住んでいた元首相は,貧しい人々からカネを奪い取る邪教団体との密接な関係が指摘されているが,政府は「元首相は『死んだ人』だから」という理由で,彼が宗教団体と結託して何をやってきたかは不問に付すことにした.しかし国民は,おそらくカネのつながりがあっただろうと思っている.
死んだ元首相は「戦後レジームからの脱却」を主張して,この国を,己が望んだ通りの弱肉強食の国にして逝った.その政治を継承すると表明した前首相は,公助の前に共助,共助の前に自助せよと述べた.人間らしい最低限度の生活を国家が保証することこそ,戦後レジームの一つであったからである.その次の現首相は,内閣支持率の低下をものともせずに元首相を国葬に祀って称え,そのために国費を濫費するという.
FNNプライムオンライン《財務官「あらゆる措置を排除せず」 急激な円安で政府と日銀が意見交換》[掲載日 2022年9月8日 21:10] は以下のニュースを伝えた.
《政府と日本銀行は、急激に進む円安の対応について意見交換し、政府としてあらゆる措置で必要な対応をとる準備があると強調した。
会合では、政府、日本銀行として「急速な円安が経済・物価に与える影響を高い緊張感をもって注視していく必要がある」ことを確認した。
会合後に財務省の神田財務官は会見し、このところの円安を「明らかに過度な変動だと思われる」と指摘。「政府、日銀としては、こうした動きを極めて憂慮している」と強調し、「政府としてこのような動きが継続すればあらゆる措置を排除せず、為替市場において必要な対応をとる準備がある」と語った。》
《高い緊張感をもって注視していく》は死んだ元首相の常套句だった.注視するだけで何もしません,という意味である.政府と日銀は,円安に関して何もしないと言明したのである.
死んだ元首相の経済政策がいまだに生きていることを,神田財務官はこの常套句を使うことで国民に知らしめた.
政府が円安を放置するのだから,この秋に,国民の食生活は質的に大きく低下することが確実である.本来なら国民の健康栄養と食糧の確保に責任を有する厚労省も農水省も,政府と日銀が「高い緊張感をもって国民生活水準の低下を注視する」のを横で見ているだけである.
《為替市場において必要な対応をとる準備がある》とは,「為替市場において必要な対応をとる」という意味ではない.準備しているだけだ.
なぜ準備ではなくただちに実行に移さぬかというと,為替市場への介入を日本政府単独でしか行い得ないからである.
「為替市場において必要な対応」とは円を買いってドルを売ることだが,これを少しでも有効な対策とするためには日米同時に介入することが必須だが,米国は米国内のインフレ対策上,ドルを売ることができない.従って日本単独で行うことになる.
過去の例で明らかだが,単独介入は有効ではない.一時的に効果があるだけで,すぐ元の円安トレンドに戻るだろう.
これ以上の円安を食い止める手段がないとすれば,政府は何をすべきか.
円安に適応することである.適者生存則だ.変化に適応する者は生き延びる.
日本国民の食生活は輸入食糧によって支えられている.いずれ将来,深刻で世界的な食糧不足の状態になったら,小麦もトウモロコシも,安い円では買い負ける.
つい最近まで,金額ベースでは,とっくに日本人の主食は米ではなく小麦製品 (パン,パスタ) になっていた.しかし現在は,米がパンを抜いて主食の地位を回復しつつある.無策の政府を尻目に.国民は既に円安に適応を始めているのだ.
そう遠くない時期に,日本は必要充分な量の小麦を調達できなくなると思われる.食糧輸入超大国化しつつある中国に買い負けるのだ.
その時に米を,小麦に代替する穀物とするためには,どれくらいの米増産のための作付けが必要なのか.それを試算するのは農水省の仕事であるが,農水省がその任務を認識しているか疑わしい.現在の農水官僚は,入省以来,減反政策しかやってこなかったからである.
専業でも兼業でも,個人営農者が米の生産をするのは生産性が低すぎる.
米作農業を補助金漬けにした報いが来ているのだ.
となれば,農業の法人化が一つの方向である.
テレビ番組を視聴していると,各地で若い人たちが農業法人を設立して先進的農法に取り組んでいる様子が取り上げられている.
家庭菜園ではないから,営農は一人ではできない.一緒に営農する家族がいなければ,社員を雇用して法人化するほかはない.
そのような農業をしてみようという若者のトレンドの他に,過疎の集落に移住して生活したいという若者たちもいる.NHKは移住という切り口で番組を一つ持っているくらいだ.
最近の幾つかのテレビ番組で取り上げていたが,四国は徳島県の山間僻地に,移住してきた青年たちが働いている「未来コンビニ」がある.
このコンビニは,創業の精神も立派だし,経営的にもちゃんと成り立っているという.
また既存の企業ではアイリスオーヤマが東日本大震災を機に精米事業を開始したのはもうかなり前のことになった.
アイリスオーヤマは,農業に直接かかわる気はないが,米の流通改革によって米の消費を増やそうと言う思いはあるのだとのこと.
こういった様々なところで私たちの食糧安全保障と国民栄養に関わる動きがあるのに,政府農水省からはなんの意欲も情報も国民に向けて発信されていない.
思い起こせば,1ドル360円の固定相場で始まった日本の戦後は,1973年に変動相場制に移行してから一貫して円高トレンドにあった.
だが経済大国の地位から滑り落ちつつある今は,円安に適応していくしかない.問題はいつ円安適応に踏み切るか,だ.
しかるに現在の日銀と政府は《高い緊張感をもって注視していく》傍観政策から一歩も出ようとしない.
次の衆院選で政府の目を覚まさせるしかない思うのだが如何か.
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ウクライナに自由と光あれ
(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)
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