サルは魚を食べることの映像証拠
昨年秋 (2019年11月),生き物好きには興味ある論文がNature系の科学専門誌Scientific Reports誌に掲載された.
論文タイトル;Winter diet of Japanese macaques from Chubu Sangaku National Park, Japan incorporates freshwater biota
リンク;Scientific Reports
信州大学理学部東城幸治教授らの研究グループが,ニホンザルの38個体の糞サンプルに含まれるDNAを解析したところ,サケ科魚類や水生昆虫類などのDNAが検出された.すなわち上高地のニホンザルは,厳冬季における栄養源として河川に生息する動物を摂食していることが実証されたのである.
さらには,この論文掲載の報道を知ったフリーカメラマンの後藤昌美氏と同行者の鈴木裕子氏が,魚を喫食しているまさにその決定的な写真を撮影したとの連絡が研究グループに寄せられた.
しかし話はこれで終わらず,研究グループの竹中將起氏 (現在は筑波大学生命環境系特任助教) は,NHK《「ダーウィンが来ちゃった!スペシャル」》[初回放送日 2022年7月24日] の取材班と共同で,上高地のニホンザル行動域にカメラを設置し,魚を捕獲して喫食する場面の動画を撮影することに成功した.さすが《ダーウィンが来た!》である.
ところで,NHKの動画撮影成功の前に,共同通信《サルが魚食、写真公開 上高地、信大など研究班》[掲載日 2022年1月7日 05:57] が報道した記事がある.
《長野県松本市の上高地で、ニホンザルが魚類を食べて越冬することを発見した信州大などの研究チームは7日までに、魚を食べる様子を捉えた写真を公開した。》
これを読んだネット民がコメントを付けているが,その中に次のものがある.
どこのバカ中学生か知らぬが,研究グループの論文の価値を理解することができぬなら,コメントなんぞ付けるでないわ.この愚か者め.
東城幸治教授らは,バカ中学生がバカ日本語 (能動形と受動形の混在w) で《知ってる人は相当前から知られてる》と書いている,まさにその《知ってる人》の一人なのである.
東城教授らは,別個体の糞であることを確認した試料を分析し,複数個体が魚を喫食していることを実証した.そのことの価値がわからない中学生は黙っておれ.この馬鹿者め.
日本の霊長類学研究はこれまで世界のトップレベルであり続け,京都大学霊長類研究所がそのセンターであった.
まことに残念なことに,霊長類研究所は研究費不正経理 (*註) が行われたことにより今年の三月に解体された.
(*註) Wikipedia【京都大学霊長類研究所】から引用.
《研究費の不正使用
2006年(平成18年)から2012年(平成24年)まで所長を務めた松沢哲郎が、同研究所などの設備工事に絡み、国からの研究資金を不正に使用していたとして、京大が内部調査していることが、2019年(令和元年)12月6日に一部新聞で報じられた。2020年4月22日、京都大学の調査委員会は、教員4人が入札前に業者に予算額を伝えたり、入札にすべき発注を随意契約にするなどにより、研究費約5億円が不正支出されていたとする報告書を取りまとめた。
この不祥事を受けて、大学は研究所を2022年3月で解散、「ヒト行動進化研究センター(仮称)」に改める組織改編を2021年10月に発表した。》
京都大学霊長類研究所の業績で一般人にもよく知られているのは「幸島のサルの芋洗い行動」だろう.(動画;Japanese Macaques Washing Potatoes ニホンザルの芋洗い行動)
その説明には,霊長類研究所経理不正を行って輝かしい伝統ある同研究所に解体をもたらした松沢哲郎氏本人が書いた解説から引用しよう.
日経新聞連載「チンパンジーと博士の知の探検」第18回《幸島のサルに文化の起源》
《野生ニホンザルの研究で、欧米で最も広く知られているのは、宮崎県の幸島にすむ野生サルのイモ洗いだ。ちょうど50年前の1965年に、河合雅雄が『プリマーテス』という英文の国際学術誌に論文を書いた。
調べてみると、これまでほかの学者によって691回、引用されている。引用は論文の影響力を測る指標で、この数字はすばらしい。
第一発見者は地元の小学校教師、三戸サツエだ。53年夏、1歳半のメスがイモを水で洗っているのを見た。餌付けのために与えたイモに土がついており、それを洗って食べていた。
知らせを聞いた京大の研究者がこの子ザルに「イモ」と名付け、行動を注意深く見守り続けた。のちに京大教授となる川村俊蔵が日本語で最初の論文を書き、発見から12年後、河合の英語論文に結実した。
幸島のサルのイモ洗いは、人間以外にも文化と呼べるものがある証拠となった。文化には重要な側面が3つある。「起源」と「伝播」、そして「変容」だ。
まず起源。イモという子ザルが始めたものだ。次に伝播。血縁と遊び仲間という2つの経路で群れの中に広がった。イモの母親やきょうだいが洗うようになり、さらにイモの1歳上や下の子ザルがまねをした。
そして変容。最初は小川で洗っていたが、世代を超えて伝わるうち、浜辺までもっていって海水につけて食べるようになった。土を落とすという当初の目的が、塩味をつけることに変わったらしい。3つの側面を備えたイモ洗いは、まさしく文化と呼べるだろう。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
NHK取材班が,上高地のニホンザルが魚 (研究グループのDNA解析によればサケ科魚類であることは間違いなく,上高地に多く生息するイワナとブラウントラウトの交雑系統であるという) を捕獲して喫食するシーンの撮影に成功した時,同行していた竹中將起氏はその場にいなかったのであるが,戻ってきて撮影された映像を観ると,感極まって目頭の熱いものを拭った.
竹中氏の心中の感動は,実によくわかる.氏らは,我が国のニホンザル研究に新しいページを拓いたのである.
山岳に棲むニホンザルが厳冬期に魚を食べる行動が,文化的基礎を持つものか否かはこれからの研究に待たねばならないが,次のステップは,サルたちを個体識別 (ナンバリング) し,群れの在り方を調べ,魚捕獲行動の起源と伝播と変容を観察することになる.私たち門外漢にも容易に想像がつくが,かなり長期の研究になるだろう.
ちなみに研究グループの東城幸治教授も竹中將起助教も,実は専門は昆虫である.ニホンザルは植物性食物の少ない冬季には水生昆虫を食べているわけだが,それを調べている過程で魚を捕獲して食べていることも確認したというわけである.
学問というものはおもしろいもので,昆虫を専門にしていた東城教授らはこれからニホンザルの生態も視野に入れて,いわば上高地の生態系研究に進んでいくのだろう.
そしておそらく,これからNHKもその映像技術をもって上高地の生態系研究に一役買うことになる.
このsamuraiとかいう小賢しい野郎は一生科学と無縁な無知の人生を生きていくのだろう.
だとすれば,こいつが二度と科学記事に間抜けなコメントを付けぬように願っている.
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ウクライナに自由と光あれ
(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)
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