「人財」は古い言葉だ
withnews《「人財」なぜ流行?背景に「命令断れない国民性」今野晴貴さんの分析 働き手を食い潰す〝無抵抗の論理〟》[掲載日 2022年6月3] から下に引用する.
《「人材」を「人財」と書き換えた単語を、街中で見かけることはありませんか? 労働者を財産と捉える言葉として、求人情報などに用いられ、今や辞書にも関連項目が載るほどメジャーです。積極的に使われるようになった背景に「企業の命令を断れない国民性」があると、労働問題の専門家・今野晴貴さんは分析します。会社を中心に回る日本社会の現実について聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)》
《「これはあくまで推測ですが……」。今野さんはそう前置きしつつ、「人財」の成立過程にまつわる持論を教えてくれました。いわく、キーワードとなるのが、「日本型雇用」とも言うべき雇用慣行です。一体、どういうことでしょうか?
日本の企業は、働き手に様々な命令を下します。度重なる異動や単身赴任、サービス残業をしなければこなせないほどの量の業務など、その内容は過酷なものになりがちです。反面で、企業側は社員教育と長期雇用を保障してきました。
「『過労死』が世界共通語になるほど、日本人の労働時間は国際的に見ても長い(*註)。そもそも、働き手を企業に埋没させる論理があるんです。その代わり、企業は責任を持って社員を一人前に育て、終身雇用や年功賃金を約束してきました」
ところが経済成長が鈍化し、2000年代に入ると潮目が変わります。「スキルアップ」「キャリアアップ」といった考え方が叫ばれるようになったからです。法改正で労働派遣の対象業種の幅が広がるなどして、非正規雇用者が増えた時期とも重なります。
「こうした中、企業と働き手の間の、一種の取引関係が壊れてしまいました。仕事に必要な技能や知識の習得はもちろん、雇用の維持さえも『自己責任でやれよ』という流れが強まったんです」
「当時の『人財』という言葉には、『自らスキルアップせよ』という意味合いが重なっていたように思います。エンプロイアビリティー(雇われる能力)という言葉も、この頃から広がっていきました。自己責任論が強まる中、企業の絶大な命令権は維持されているという意味で、いわば『日本型雇用進化バージョン』の出現と言えるでしょう」》
上の引用箇所は,「労働問題の専門家」という今野晴貴氏が主張している説である.
氏は,2000年代に入った頃,「日本型雇用」という雇用慣行が崩れ,《『自らスキルアップせよ』という意味合い》を重ねて「人財」という言葉が使われるようになった,と主張している.
私が就職したのは昭和四十七年だが,その会社ではその当時は「人事部」があった.
ところがその数年後に「人財」という造語が企業社会でブームとなった.この言葉を1970年代に使い始めたのは日本生産性本部だろうと思う.今野氏が論じている2000年代よりも三十年も昔だ.
私の勤務先の企業はブームに乗って,昭和五十年頃に人事部を「人財開発部」に変更した.
松下幸之助が遺したことばに「企業は人なり」がある.「人財開発」という用語には,人事部門は単に適切な人事異動などを行うだけでなく「社員を会社の財産として育成することが任務である」という意味合いが込められていた.
そして,今でいうスキルアップを会社主導で行うのが当時のブームとなった.私の勤務先の会社では,社員を国内外に留学させたり,国家資格の取得費用を会社持ちにしたりする制度ができた.
「人財」には《『自らスキルアップせよ』という意味合い 》があるという今野氏の見解と正反対である.
今野氏は若いから,「人財」という用語の起源について全く知識を持っていないのだろう.この用語はそもそもは「人財開発」だったのである.
だとすれば,氏は「人財」という言葉が造られた歴史を調べて理解し,そこから立論すべきであった.
なにごとも調べてから書くことが大切である.
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ウクライナに自由と光あれ
(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)
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