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2022年6月 2日 (木)

学校給食用の米の不安

 テレ朝news《給食用の精米工場“ハトまみれ”…保護者激怒 大阪》[掲載日 2022年5月31日 10:52] から下に引用する.
 
ハトが群がっているのは、大阪府枚方市にある「JA北河内営農センター」です。
 ここでは、学校給食用などに精米した米を、枚方市、守口市など4つの市へ納入していましたが…。
 PTA関係者:「あそこに皆おるんちゃうん。ほらほらほら、顔出してる」「めっちゃ、ふん落ちてるで」「ふんだらけやん」
 複数のハトが精米工場に入り込み、不衛生な状態が、数年にわたり続いていたとみられています。
 
 子どもたちの給食を巡るこの問題。先週、開かれた説明会では…。
 守口市のPTA関係者:「JAと契約しているなら、必ず監査に入っているはずなんですよ。写真も撮って、報告上げていると思います。教育監、それありますか?」
 守口市教育委員会・森田大輔教育監:「直接、精米所に行くことはしていません」
 PTA関係者:「どうですか? このいいかげんさ」
 
 ハトは日本中にいる.
 精米所も日本中にある.
「家の中でゴキブリ一匹を見かけたら,百匹いると思え」と俗にいう.
 ということは,JA北河内営農センターは氷山の一角で,ハトだらけの精米所は全国に百ヶ所はあるのだろう.
 鳩が精米所内に蔓延しても何ら対策を行うことなく数年間も放置していたJA北河内営農センターの悪質さは言語道断であるが,それを助長したのは枚方,守口,寝屋川,門真の四市の教育委員会である.教育委員会が査察に来ないとわかれば,カネのかかるハト対策をするわけがないからである.
 全国の教育委員会トップは,学校給食用の米を納入している精米所に査察を行うよう担当者に指示するべきである.
 教育委員長のトップダウンの指示がなければ,担当者が面倒くさい査察なんかするわけがないからである.
 とはいうものの,教育委員会の担当者は食品衛生に関して素人に違いなく,そんな人間が査察をできるわけはないのであるが.
 
 ところでテレビでこのニュースに接した視聴者は「わたしの食べているお米はだいじょうぶだろうか」と心配になるかも知れない.
 通販で取り寄せる米の安心安全は保証の限りではないと思う.
 実際,アマゾンで販売されていた国産長粒種の米はあやしかったので捨てたことがある.
 大手量販店やコンビニは,サプライチェーンの川上に遡って品質保証を行う品質システムを保有しているので,生産者や中小の精米業者から購入するのに比較すれば,はるかに安心であることは論を待たない.
 
 ハトで思い出したことを書く.
 私は会社員時代,本社の品質保証部門の長だった.社長直轄である.
 品質保証部門というのは検察と警察を合体したみたいな部署であり,各地の工場の長とは緊張関係にあった.製品の回収を余儀なくされるような品質事故が発生すれば,工場長を指揮する権限を持っていたからである.
 企業体質にもよるが,多くの会社では工場はピラミッド型組織であり,品質管理担当者といえども工場長の指示に逆らうのは困難である.
 そういう場合に,品質管理担当者が私にタレコミをする.
 タレコまれた私はただちに工場に赴いて,工場長に改善命令を出す.なにしろ社長直轄だから有無を言わさない.
 ある日,主力工場の一つの社員からタレコミがあった.工場内の製品倉庫にハトの死骸が複数あったというのである.何となく異常を感じるとのことだった.
 そこで私はその工場に出張し,環境管理室という部署の管理職を問い詰めた.
 初めは工場内のハト対策全般をやんわりと訊いたのであるが,建屋の中に侵入定住したハトはどうするのか訊ねると「忌避剤を使っています」と言う.
 そこでその忌避剤の成分を答えさせると「市販の忌避剤なので成分まではわかりません」と言った.
 それでは商品名は何だと問うと忘れたとのこと.
 これはいかにも不審である.従ってここから先は質問ではなく尋問だ.
 続いて,環境管理室の資材購入伝票ファイルを持ってこい,忌避剤の伝票を提出しろと言ったら,観念して白状した.
 忌避剤ではなく農薬を使用したというのである.
 ハトの死骸が工場の中で見つかったのは当然だった.
 
 ハトに限らず鳥類による被害は厄介だ.鳥獣保護法があるからで,既に侵入されているハトを勝手に駆除すると法違反に問われるからだ.
 この農薬でハトを駆除した件では,環境管理室の管理職が独断で行うことは考えにくく,工場長が関与しているのが明らかだった.
 そこで私は工場長に,倉庫建屋の工事を含む抜本的なハト対策を策定し,必要な予算措置を講じるようにとの指示を行った.もしこれを怠るならば,コンプライアンス案件として経営会議に報告すると釘を刺しておいた.
 その後,残る主力の三工場に査察を行ったが,違法行為は上記の一件だけであったので安堵したことを記憶している.
 
 JA北河内営農センターの件に戻ると,そもそもこの精米所から購入した米に金属異物が混入していたことが事の発端だった.
 その調査でハト問題が発覚したのである.
 JA北河内営農センターは,米は密閉されたラインを通るのでハトの糞や羽毛は混入しないとしているが,それなら密閉ラインのどこで金属異物が混入するというのか.JA北河内営農センターの,しゃあしゃあと嘘をつく体質がこの件の底にあるのだ.
 
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ウクライナに自由と光あれ
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(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)


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