経営者が違法行為を (三) /工事中
前回の《経営者が違法行為を (二)》で,私が豊年製油の嶋雅二専務 (当時のポスト;コーンスターチ部門担当) と研究所長のK,スターチ部門のT課長に謀れて,知らぬこととはいえ密輸の片棒を担がされたことを書いた.今でも忘れられぬ痛恨の出来事だった.
密輸されたアフラトキシン汚染トウモロコシは,大部分がコーンスターチに加工されてビール原料になり,一部は挽き割り (グリッツ) に加工されてスナック菓子に使用されたことを後で知った.
また,カビの生えたトウモロコシを人為的に取り除いた試料を検査用に偽装するために植防の職員と何らかの接触をしたとの噂を後に耳にしたが,その事実関係については私は今もよく知らない.
さてこの企業犯罪は繰り返されようとした.しばらく後に再び,米国から日本へ向かう穀物輸送船から船倉のトウモロコシにカビが生えたとの連絡が本社に入ったのだ.
研究所長のKとT課長は,同じ手口で植防を通過させればいいと考えて,また私にカビていないトウモロコシの試料を作れと言ってきた.
しかし私は,なぜそんなことをするのか,どうもおかしいと感じたので,Kを問い詰めた.
するとKは,実は植防に出す検査試料だと私に説明した.
驚いた私は,そんな重大犯罪に加担するわけにはいかないと,きっぱりと拒否した.
押問答の末にKは,業務命令を出すと言った.そこで私は,業務命令を出すなら植防に訴えてでると答えた.
この私の強硬な態度に窮したKは,その場は引き下がったが,嶋専務と謀議したと見え,後日,研究所長室に私を呼んで,こう言い渡した.
「お前は嶋さんに逆らった.もうこの研究所に置いておくわけにはいかない」
こうして私は閑職に転勤命令を受けたのである.
ちなみに,当時の豊年製油の研究所でアフラトキシンの微量分析をできるのは私だけだったから,私に非合法作業を拒否されれば前回と同じ手口は使えない.やむなくカビたトウモロコシは廃棄されたと後になって聞いた.
翌年 (1989年,平成元年),嶋専務は社長に就任した.この年の株主総会から少しあと,私は嶋社長の部屋に呼び出された.
今でも忘れない.社長は「俺の目の黒いうちは,お前にいい思いはさせない.覚えておけ」と言い放った.こうして私の会社員人生は詰んだ.
そしてその年,在京管理職を集めて行った社長講演で,明らかに私のことを指しているとわかるように「無能な管理職には厳しいく処遇をする」と述べた.
その講演会には,Y課長が出席していた.最初の密輸作業の時に船倉に入ってサンプリングをやったY課長である.
Yさんは後援会が終わったあと,私の側に来て「ひどいことを言うなあ」と言って同情してくれた.もしかするとYさんも非合法作業を拒否したのかも知れない.定年になったあと普通は嘱託再雇用されるのだが,Yさんだけは定年後に再雇用されなかった.それも私の左遷と同じく,嶋が言った「厳しい処遇」だと私は推測した.
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