不誠実かつ無責任なアナウンサー
フリーアナウンサーの膳場貴子アナウンサーがTBS系《報道特集》に出演し,ウクライナへの武器供与について戦争を長期化させる「危うさ」があると指摘した (5/14放送).
デイリー《「報道特集」膳場貴子アナ ウクライナへの武器供与で戦争長期化を危惧》[掲載日 2022年5月15日] から下に引用する.
《続けて「大切なのはどうすればこの戦争を早く終わらせることができるのかということです」と戦闘の継続ではなく終結を目指すべきと主張。武器を供与している国々は「戦争を終わらせる」視点が必要とした。
……
日本はウクライナへの支援として、自衛隊保有のドローン、化学兵器対応の防護マスク、防護衣の供与を決めた。ドローンは監視用の市販品とされており、武器輸出についての「防衛装備移転3原則」の対象外としている。
膳場アナは「日本が提供したドローンも、いったん戦場に持ち込まれたら使用目的をコントロールできないのは分かりきったことですからね」と疑問符。「戦争の長期化を食い止めるためにも日本政府には停戦を呼びかけてその交渉を仲介するような役割を果たしていってほしいと期待しています」と装備品の供与よりも外交力の発揮を期待した。》(引用文中の文字の着色は当ブログの筆者が行った)
1.《大切なのはどうすればこの戦争を早く終わらせることができるのかということです》について
「プーチンの戦争」を早く終わらせたいと,侵略されたウクライナはもちろん,ロシア以外の全西側諸国が願っている.そんなことは膳場アナに言われなくても当然のことだ.当然すぎて,なぜそんなことを今更言うのか,視聴者には理解できない.
戦争の終結はプーチンが阻んでいるのだ.
「プーチンの戦争」を早く終わらせるのに一番良い方法はウクライナがロシアに降伏することだと,戦争が始まってすぐに橋下徹と玉川徹が主張した.だが降伏すれば,ウクライナの国民はどうなる.
ロシアの兵隊たちが蹂躙したウクライナの土地で何が行われたか.膳場アナは知らぬふりをするのか.
働ける男たちはロシアに連行されたまま行方不明だ.ウクライナの北部と東部のロシア支配地域では,老人と子供は後ろ手に縛られて頭を銃で撃ち抜かれた.女性たちはロシア兵たちに辱められた挙句に殺されて,耳から貴金属を引きちぎられた.略奪された電気製品やスマホはロシア兵たちがベラルーシの店で売り払った.
無抵抗の守衛を打ち殺して会社の建屋に押し入ったロシア兵たちは,部屋で見つけた酒で飲み会を開いた.防犯カメラに残されたその映像をBBCが報道した.海外メディアが報道したそういう映像を,膳場アナは観ていないのか.
ロシア兵は第二次大戦の時と同じことをやっている.それがロシア軍なのだ.そもそも軍としての規律なきロシア兵にとっての戦闘とは,昔も今も殺戮と略奪とレイプである.私たちは,かつてロシア兵に襲われた満蒙開拓団の悲劇を忘れてはならない.
ロシアにいる日本人がテレビのインタビューに答えていたが,ロシア兵たちの暴虐映像はロシア国内でも観ることができる.しかしそれでもロシア国民は圧倒的な支持率をプーチンに寄せている.ウクライナを地上から消滅させよ.それがロシア人の意思なのだ.
だから,絶対にロシアに降伏してはいけない.それがEUあるいはNATOの方針に同調する欧州諸国民のコンセンサスだ.
ならばロシアに降伏せずに戦争を終わらせるにはどうしたらよいか.方法はただ一つ.
戦争には資金が必要だ.戦費の調達なしに戦争は不可能だ.
しかし今のロシアには,全人類を絶滅できるほどの核兵器はあるが,戦争をする経済力がない.現在のロシアは韓国以下の経済力しかない.だからプーチンは,首都キーウを電撃的に攻撃して占領するプランで侵略を開始したのである.ロシアにできることは短期決戦しかないのだ.
だがウクライナ軍はロシアの大戦車隊の攻撃に耐えた.欧州自由主義諸国がこれからすべきことは,ウクライナ軍の兵員と兵器の損耗を可能な限り抑えつつ戦闘を長期化することである.
自明のことだが,ロシア経済は国軍の損耗に耐えられない.ロシアの国力では,分不相応に肥大した軍を維持するだけでも大変なのだ.
それ故,持久戦で戦い続けてロシア経済の疲弊を待つのが「プーチンの戦争」を終わらせる唯一の方法だ.これがNATO諸国国民のコンセンサスなのである.逆説的に聞こえるが,「プーチンの戦争」を早く終わらせるには,ウクライナの祖国防衛戦争を長期化することが必要だ.
首相がウクライナへの武器供与に消極的だったドイツは,最近の選挙で国民の意思をはっきりと示した.ドイツ国民は,ウクライナへ武器を供与するべきだというのである.フランスの大統領選も同じ文脈である.
また今までNATO非加盟だった国々が続々とNATO加盟を表明している.これでロシアは北欧との国境に兵員と兵器を割かざるを得なくなった.それは,ロシアがウクライナに追加の戦力を投入する妨げになる.すなわちこれは,ロシアが疲弊するのを待とうという北欧諸国民の意思の表明である.
この緊迫した欧州情勢を完全に無視して,能天気に《大切なのはどうすればこの戦争を早く終わらせることができるのかということです》と述べるのは,ウクライナ降伏論を主張した橋下徹や玉川徹と同列である.《この戦争を早く終わらせること》がなぜ大切なのか,その理由を示さないのは報道人として不誠実以外の何物でもない.
2.《戦争の長期化を食い止めるためにも日本政府には停戦を呼びかけてその交渉を仲介するような役割を果たしていってほしいと期待しています》について
現在の日本政府が「プーチンに停戦を呼び掛ける」とは具体的には何をすることなのか.手段はあるのか.
岸田首相がプーチンに会いたいと伝える外交ルートが日本にはあると膳場アナは考えているようだが,「私が取材したところでは,そのような外交ルートがあることを確認しました」というのでなければ,彼女の《日本政府には停戦を呼びかけてその交渉を仲介するような役割を果たしていってほしい》は妄想に過ぎない.
また,日本が会談を希望したとしても,プーチンには日本政府の呼びかけに応じる義理はない.しかるに膳場アナが「プーチンは呼びかけに応じる」と考える根拠はあるのか.その根拠を視聴者に示さずに,勝手な妄想で日本政府に突拍子もない役割を期待するのは報道人として無責任極まる.
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ウクライナに自由と光あれ
(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)
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