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2022年5月 6日 (金)

崎陽軒の方針

 先日,うちの近所のファミリーマートで食べ物をいくつか買った.
 カゴに入れてレジに行くと,若い女子バイトさんがバーコードを読み取った.
 が,納豆巻を手に取って「あ」と言った.
「すみません,これ,もうすぐ期限切れなんでお売りできません.よろしかったら他のものはどうでしょう」
 いつもの私なら棚の商品の期限はちゃんと確認するのだが,この時はうっかりした.
「気が付かなかったよ,ありがとう.じゃ,それは止めて,おにぎりにするよ」
 
 コンビニによって少し違うようだが,弁当惣菜類は,だいたい消費期限の二時間から三時間前に棚からおろす.
 購入した客が家に着いたら消費期限が切れてました,なんてことのないようにするためである.
 だが,これに反対する人がいる.期限ぎりぎりまで売るようにすれば,食品ロスが減るじゃないか,という主張だ.
 それはそうだが,期限切れ一分前まで売るというのは,コンビニとしては大変な作業である.たくさんの弁当惣菜類にはそれぞれの消費期限があり,その期限が切れた瞬間に棚からおろす,というやり方は,言うは易く行うは難しである.たいていのコンビニは,ワンオペの時間帯があるから,そういう時間帯は一人で販売と商品管理をしなければいけない.それを客が強要してよいものか.考えなくたってわかる.
 常識人がそういうと ああ言えば上祐は 少しくらい期限が切れたって死ぬもんじゃないし,とか言うのだ.
 彼らは,食品ロスを減らすことは地球環境を守るための大切な手段であると言う.
 消費期限なんて細かい事は,食品ロス削減に比べりゃ大したことじゃない.つべこべ言うなっ! と言う.
 食中毒なんかを恐れていて地球環境を守れるかっ!と.
 彼らは,健康のためなら死んでもいいと言う健康オタクに似ている.
 こういう連中に限って,万が一食中毒が発生すると,管理ができていないと言って店を轟々と非難するのである.
 
 昨日,買い物に街に出たついでに,崎陽軒の売店でシウマイ弁当を買った.昼を少し過ぎていた時で,夕飯に食べようと思ったのである.
 スイカで支払いをして弁当を受け取るときに,店員さんが二時までにお召し上がりください,と言った.
 あと二時間ない.
「えーっ,そんなにぎりぎりなの? そんなにすぐ食べなきゃいけないなら買わなかったのにー」
 店員さんはニコニコしながら (マスクをしているが目はにっこりと微笑んでいる)「申し訳ありません」と言った.
 スイカの返金てのは対応店でないとできないので,その崎陽軒の売店が取消処理をしてくれるかどうかわからない.
「申し訳ありません」しか言わないところをみると,キャンセル処理をしてくれる気はないようだった.
 たかが弁当でもめるのは嫌なので,そのまま買って帰った.帰宅した時は期限が切れていた.
 
 崎陽軒は徹底的に食品ロスをなくす経営方針で知られる.たとえ販売機会を失っても,廃棄するよりはマシだという.
 デパ地下でも駅ナカでも,崎陽軒の売店に午後行くとわかるのだが,何種類もある弁当類のほとんどは,売り切れ,あるいは入荷待ちの状態になっている.
 販売予定数量がかなり少なく設定されていて,それ以上は製造しないのである.客が欲しいと思っても買えない状態を意図的に作り出している.作れば売れるだろうが,売れ残る可能性が高まる.だから作らない.
 崎陽軒のこの方針は徹底している.たしかこの件に関する記事が経済誌に載っていた覚えがあるのだが,検索してもどういうわけかヒットしないので紹介できないのが残念だ.
 
 余談だが,検索してヒットするのは,コロナ禍の初期に横浜港に停泊したクルーズ船の乗客とスタッフに,緊急に4,000食ものシウマイ弁当を寄付したのに,これが行方不明になった (廃棄された) という崎陽軒黒歴史の記事ばかりである.だがこれはこれで教訓が大であるので,記事の所在を示しておく.
 YAHOO!ニュース《ダイヤモンド・プリンセスに積み込まれた崎陽軒のシウマイ弁当4000食はどこへ?》[掲載日 2020年2月14 13:55]
 YAHOO!ニュース《消えたシウマイ弁当4000食どこへ?積み込み当日の昼、英国人男性がふ頭で発見》[掲載日 2020年2月16 14:21]
 
 さて,崎陽軒の弁当は「売り切れ御免」なのであるが,例外は看板商品のシウマイ弁当だ.
 これが入荷待ち,あるいは売り切れ状態になっていることはあまりない.
 これだけは最後の最後まで売り切るのだと思われる.
 そのため,私の場合のように消費期限が残り二時間以下になっていて,買ったあと用事が済んで帰宅したら消費期限が過ぎていた,ということが起きる.(上に紹介した記事を読むと,シウマイ弁当の消費期限が製造後何時間に設定されているかがわかる.関心がある向きは記事を読まれたい)
「そういう方針を納得できる消費者だけが崎陽軒のお客様なのです」と言われれば,はあそうですかとしか言いようがない.
 残る興味は,いったい崎陽軒の売店では,残り消費期限がどれくらいになるまで販売するだろうか,ということである.
 一分前だったらおもしろい.
「シウマイ弁当くださーい」
「はい,おひとつですか?」
「はい」
「八百六十円になります」
「スイカでお願いします」
「はい承知いたしました」
(ピッ; スイカ入力音)
「こちら,お品物になります.消費期限は午後二時ですので,残り二十秒です.間に合いました! お早めにお召し上がりくださいませー」
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 レジ打ちの前に残りの賞味期限を教えて欲しいものだ.

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