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2022年4月29日 (金)

科学オンチ

 AERAdot.《花粉症「花粉」に罪はなかった? 作家・下重暁子が調べてわかった“真犯人”》[掲載日 2022年4月29日 07:00] から下に引用する.
 
私が子供の頃には、花粉症などというものはなかった。
 花粉は飛んでいたはずだから、戦中戦後のたいへんな時期、花粉症などにかかっているひまもなく、花粉症はぜいたく病だったのか。そういえば花粉症とは、どことなくなまめかしい命名ではある。
 ほんとうに花粉症はなかったのか。調べてみると、その頃の花粉は杉も檜もブタクサもみなきれいで、清潔な花粉だったから病にはならなかったという。
 では近年季節病のように繰り返す花粉症とは何か。花粉が汚れているから病気になるのだそうだ。
 花粉そのものに罪はない。きれいな花粉が、空気中で大気汚染に巻きこまれ、汚れてしまう。
 結局、人工的な病なのだ。
 山場の杉林や檜林の近くに住んでいる友人がいる。彼らは、花粉症になどならないという。黄色い花粉が手に触れるほど近くにあるのに。なぜか?
 免疫ができているのだろうという説もあるが、どうやら飛び始めてまもない花粉には汚れがないから、症状などをひきおこさない。その花粉が街々を流れ流れて都会に到達する頃には、症状は徐々に重くなっている。
 その花粉を吸い込んで、花粉のせいだといい、花粉の少ない杉や檜を開発しようというのは、どこか違うのではないか。
 私たちは全ての原因を正さないで一つの現象が起きるとすぐ対症療法を考える。花粉症という病には、薬は何を飲んで、何をつければ良いか。花粉症に限らず、私たちは原因究明を怠ってともかくその場しのぎに頼りがちだ。
 だからいつまでたっても新型コロナのようなウイルスがはびこり、自国の利益のため気に入らない国に戦争をしかける。この連鎖はいつまでたっても終わることがない。
 
 毎朝テレビをオンにするとニュース番組で気象予報士が「今日のスギ花粉は……」と言うの聞いて,視聴者は花粉症の季節になったなあと知る.スギ花粉でアレルギー反応を起こす人はヒノキにも反応することが多いので,スギ花粉に続いてヒノキ花粉の情報が放送される.
 花粉症を引き起こす植物は多いが,花粉症の原因はスギ花粉,ヒノキ花粉が主だ.秋のブタクサ花粉症は患者がマイナーなためか,飛散する花粉を量的に把握するのが困難 (つまり飛散量が少ない) なせいか,気象情報で取り上げることはまずない.
 下重さんは《私が子供の頃には、花粉症などというものはなかった》と書いているが,花粉症の主体であるスギとヒノキの花粉症についていえばそりゃ当然だ.これらの花粉が原因であるアレルギー症候群を花粉症と呼ぶようになったのは,それほど古いことではないからだ.昔は患者数が実際に少なかったのだが,患者数が増えたので花粉症という言葉が定着したのである.下重さんのように,自分の記憶にないことを理由にして《花粉症などというものはなかった》と断言するのは 無知な年寄りの傲慢 困ったことだ.
 なぜスギ花粉症が昔は少なかったかは,スギの植林が急激に増えたことと,そのスギ人工林が荒廃したことと関係している.
 Wikipedia【花粉症】には次の記述があり,スギ・ヒノキ花粉症が増えた (「昔は花粉症はなかった」は誤り) のは,これがほぼ定説である.
 
元々日本の森林は広葉樹を主体とした多種多様な樹木が分布しており森林の90%近くが広葉樹であった。しかし高度経済成長による建築用木材の需要増大で生育が早く加工が容易でまっすぐに成長する杉や檜などの針葉樹の植樹が各地で行われた。その結果森林全体では針葉樹が50%を占めるようになった。人工林では99%が針葉樹となっている。
 高度経済成長の終息や海外から安い木材が輸入されるようになると日本の針葉樹林は放置され大量の花粉を排出するようになった。杉や檜は樹齢30年を過ぎると子孫を残す段階に移行するため、特に多くの花粉を排出するようになる。近年の花粉症患者の増大はそのためと考えられる
 
 間伐を怠って密林と化したスギの林から,まるで霞のように花粉が飛散する様子をテレビで観た人は多かろう.あれこそが放置荒廃したスギ人工林の姿なのである.
 私は農学部の学生時代 (昭和四十六年) に,林学の実習講義を履修した経験がある.ちょうどスギ花粉症が社会問題化した頃で,実習をやった千葉県の山中にある東大演習林でも,花粉を少ししか作らないスギの苗を植えて,花粉症対策の研究が始まっていた.
 スギは家屋の柱として使用されるので,フシができぬように「枝打ち」(末尾の註参照) という手入れが欠かせない.枝はスギの樹の下部のものを早めに伐り落とし,上のほうにだけ残す.これを怠ると,製材したときに幹からフシが抜けて,使いものにならなくなる.その枝打ちを実際にやってみたのである.スギの樹は上に登るとユラユラと揺れて,高所恐怖症の人は絶対に枝打ちはできない.w
 間伐も欠かせない.これをしないと成長しても伐採が困難になり,林は放置される.
 要するに,花粉を盛大に飛ばすスギ林は,日本林業衰退の結果なのである.
 そういうことを実際に目で見ようともせず,文献・資料を読んで学ぼうともせず,ネット記事を読んだだけで《調べてわかった“真犯人”》などと書き殴って原稿料稼ぎをするのは,無知な年寄りの傲慢 困ったことだ.
 下重さんは《花粉が汚れているから病気になるのだそうだ》と書いている.花粉を顕微鏡観察すると,大気汚染物質の微粒子が付着しており,これと花粉症発症に関係があるのではないかと言う人がいるが,現時点では仮説以下の思い付きレベルの話である.この思い付きは,もう少し研究が進められて,仮説としてよい時になって初めて「花粉が汚れているから病気になるのかも知れない」とするべきである.
 
 さて下重さんは次のように書いている.
 
私たちは全ての原因を正さないで一つの現象が起きるとすぐ対症療法を考える。花粉症という病には、薬は何を飲んで、何をつければ良いか。花粉症に限らず、私たちは原因究明を怠ってともかくその場しのぎに頼りがちだ。
 だからいつまでたっても新型コロナのようなウイルスがはびこり、自国の利益のため気に入らない国に戦争をしかける。この連鎖はいつまでたっても終わることがない》(引用文中の文字の着色は当ブログの筆者が行った)
 
 なんだろう,この《だから》の唐突感は.
 この論法が世の中で通用するなら,花粉症に限らずなんでもかんでも,新型コロナとロシアの侵攻に結論を流し込むことができる.
 ○○や 根岸の里の詫び住まい それにつけてもかねの欲しさよ
 というアレだ.それにつけても新型コロナよ,である.w
 
[註]
 Wikipedia【枝打ち】から下に引用する.
 
商品価値を確保するための行為
 樹木の枝の部分は、製材した際に節として現れるが、この節の部分が生じないよう、生じたとしても抜け落ち(抜け節)たりしないように、あらかじめ下層の枝を切り落とし、製材にした際の商品価値を高めるという人工林では重要視される作業である。生きている枝が節になってできる「生き節」は、無節より自然である、また木材が割れにくくなるとして評価されることもあるが、枯れた枝が巻き込まれてできる「死に節」は、見た目も悪く、強度も劣るため、避けられる。
 社会的要請からの行為
 1990年代以降は商品価値の観点ばかりではなく、スギやヒノキについては枝打ちが花粉症対策に効果があるものとして、補助制度の拡充が行われるなど、必要な森林整備の一つとして重要視されるようになった。また、間伐と同じく林床の下層植生の成育を通じて土壌流出の防止にも効果があることから、劣悪な状態の保安林などにおいては公共事業としても実施されている。》(引用文中の文字の着色は当ブログの筆者が行った)
 
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ウクライナに自由と光あれ
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(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)


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