ボルシチはウクライナ料理
今朝 (4/23) のNHK《おはよう日本》で,米英側諸国による経済制裁が,ロシア国民の生活に与えている影響を取り上げた.
その中のインタビューで,ロシアの老婦人が「マクドナルドが撤退してうれしい.子供たちが私の作るものを食べるようになった」と述べた.
ロシア料理はマクドナルドに負ける.さもありなんと深く納得した.
五木寛之は,小説現代新人賞を得た『さらばモスクワ愚連隊』で世に出たが,この作品はソ連政府の機嫌を損ね,五木がその後長くソ連訪問を拒否されたことはよく知られている.
その一方で,五木は若い頃からピロシキが好物だと初期のエッセイに書いていた記憶がある.
我が国のパン屋では,カレーパンは定番中の定番だが,私はピロシキを見かけたことはほとんどない.なぜだろう.
鎌倉は私の行動範囲であり,コロナ禍以前は季節折々に訪れたものだが,四十年ほど前,小町通りに露西亜亭というロシア料理店ができた.
しかしいつ頃からか料理店はやめてしまって,ピロシキのテイクアウトだけになった.
それも一昨年に閉店してしまったので,この店は今はない.
鎌倉の観光ガイドブックに「露西亜亭のピロシキ」と書かれるくらいの鎌倉名物だったが,あれってほんとにおいしかったのだろうか,と今は思う.店の前に列を作っているのは一見さんの若い女の子ばかりだったからなあ.
で,あらためてWikipedia【ピロシキ】を読んでみたら,
《ピロシキ(ロシア語: пирожки)またはプィリジキ(ウクライナ語: пиріжки)は、東欧料理の惣菜パンである。主にウクライナ、ベラルーシ、ロシアなどで好まれている。小麦粉を練った生地に色々な具材を包み、オーブンで焼くか油で揚げて作る。》
と書かれていた.
ところが料理王国《ロシア料理で世界中のVIPを呼び寄せる天才シェフ》[掲載日 2021年5月21日] に,ピロシキやボルシチについてロシア人の料理人が,
《それは本当のロシア料理ではありません。そうしたステレオタイプが蔓延した原因は、ソ連時代の影響が大きいと考えています。》
と述べている.
ということは,ピロシキとボルシチは,東欧であるウクライナとベラルーシの食べ物であることになる.それがソ連時代にロシアにも広まったと.特にビーツを使った真っ赤なボルシチは,ウクライナ料理の代表だ.
でも日本人は,それらがロシアの伝統料理であると完全に誤解している.
そのせいもあってか,ウクライナ人が経営しているロシア料理店に対する嫌がらせが流行っているとニュースでやっていた.
私は思うのだが,いかにもロシアを想起させるような店名とメニューをやめてしまったらどうだろう.
私のような年寄りにしてみれば,「赤の広場」なんて店名は虫唾が走る.「赤の広場」は昔からソ連=ロシアが,最新式ミサイルや重戦車の物々しいパレードを行ってきたところであるから,戦争嫌いの若い連中の嫌がらせを誘発するような名称だ.
そういう事を荒立てるようなのは止めにして,店名をもっと平和的なものに変え,ピロシキとかボルシチとか,その他のウクライナの伝統的郷土料理をシェフお勧め料理にして,ウクライナの国旗を店の前に掲げるといい.イタリア料理店とかフランス料理店がよくやっている装飾だ.きっと嫌がらせは激減すると思う.
普通の日本人は,誤解でロシア料理といえばボルシチを思いつくだろうが,「ほんとはウクライナ料理なんです」と客に説明すれば,おいしいボルシチの定食だけで店をやっていけるんじゃないだろうか.
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ウクライナに自由と光あれ
(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)
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