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2022年4月23日 (土)

お求めやすい価格の納豆 (よく言うなあ)

 ITmediaビジネスONLINE《「タレ」「からし」抜いて納豆を安く イトーヨーカドーの低価格ブランド、累計販売金額が20億円を突破》[掲載日 2022年4月22日 15:15] から下に引用する.
 
イトーヨーカ堂は4月22日、低価格が特徴であるプライベートブランド「ザ・プライス」の累計販売金額が20億円を突破したと発表した。
 ザ・プライスは、2021年7月に販売を開始した。コロナ禍で内食需要が堅調に推移したことや、原材料価格の高騰で消費者の節約意識が高まったことを背景に開発した。シンプルな商品作りを追求することでコストを削減。生活必需品を品質を変えずに低価格で提供することを目指した。また、デザインの色を削減したり、物流と生産効率を上げたりして低価格を実現したという。
 具体的な商品としては、タレとからしを抜いている「極小粒納豆 40g×3」(51円)、「焼そば 5食入」(138円)、「小麦の味 そのままの食パン6枚」(95円)、「保存用ポリ袋」(78円)などをラインアップしている。全国のイトーヨーカドー129店舗で販売している。
 取り扱い数は146アイテム(食品が95アイテム、日用雑貨などが51アイテム)まで拡大している。
 同社は「今後もより一層お客さまに喜ばれるお店を目指して、お客さまがお求めやすい価格に挑戦する」としている。
 
 私がまだ若かった頃,納豆の大手メーカーの技術者と仕事上のことで会食することが何度かあった.
 その時に聴いた話をする.
 今はどうか知らぬが,スーパーマーケットは中小食品企業に対して無理難題をふっかけることがしばしばあった.
 スーパーの定番商品にしてもらえると,一定の販売数量が見込めるから,それと引き換えに値下げを強要するのである.これを専門用語で「不当なバイイングパワー」(買手パワーとも) という.(資料;公正取引委員会《流通市場における買手パワー(Buyer Power)の競争への影響について―大規模小売業者を中心として―》)
 昔は納豆にはタレも辛子も付いていなかったのだが,今は同梱しているのが普通である.こうなったのは大規模小売業者が「不当なバイイングパワー」を行使したからであった.
 納豆は製造工程が単純で,昔々はそれなりに利益が得られる商品だった.ところが小売業の中でスーパーが圧倒的な強さを持つような時代になると,スーパーはメーカーに定番商品化と引き換えに値下げを要求するようになった.
 メーカーが「それなら定番化を諦めます」と言うと,スーパーは「それじゃあ値下げはしなくてもいいから,辛子を添付しなさい」次に「タレも添付しなさい」と命じた.メーカーにしてみれば,辛子とタレを添付することと,値下げは,利益が減る点では同じだが,添付品を付けることの方がメリットはある (販売量が確保できると固定費の関係で有利になる).
 そこで納豆メーカーは辛子やタレを添付することを選び,やがてこれが一般化したと,納豆メーカーの技術者は私に語った.
 
 それから幾星霜,我が国の勤労者の生活はじり貧に陥っている.実質賃金が下がり続けているからだ.高齢者の年金支給額もまた減り続けている.そのことについての最近の資料を下に紹介する.
資料1.東洋経済ONLINE《日本だけが「低賃金から抜け出せない」2つの理由 「アベノミクスは成功した」と言うけれど……》[掲載日 2021年10月25日 13:00]
資料2.野村総研《実質賃金の大幅下落が個人消費の逆風に》[掲載日 2022年2月8日]
 
 このような昨今の家計状況に対して,スーパーはプライベート・ブランド (PB) 商品を《生活必需品を品質を変えずに低価格で提供》することで対応しようとしている,というのが冒頭の経済記事の趣旨だ.
 だが,ここで疑問が生じる.記事中の《「極小粒納豆 40g×3」(51円)》だ.
 極小粒納豆の原料大豆は全量が輸入である.従って,近年まれに見る円安の状況下に,納豆メーカーは原料高に苦しんでいる筈.
 想像するに,納豆メーカーはスーパーに値上げ要請をしたに違いない.
 ところがスーパーは,プライベート・ブランド商品を製造しているメーカーの値上げを飲むわけにはいかない.パンや麺類など小麦関連製品,油脂類,肉類 (飼料が輸入品),などナショナル・ブランド (NB) 商品が一斉に値上げされる中,むしろプライベート・ブランド商品で家庭の食卓を席捲するチャンスだ.
 そう思ったスーパーは,納豆メーカーの値上げ要請に「プライベート・ブランド商品の値上げは受け付けません.むしろ値下げしてください.その代わり辛子もタレも要りません」と言ったのだろう.
 それがイトーヨーカドーのPB納豆だ.
 でも,それは《品質を変えずに低価格で提供》という謳い文句と違ってないか?
 だってこれまで添付されていた辛子もタレも省かれてるんだよ?
 だから実際は「品質 (サービス) を落として低価格で提供」だよね.私のうちは醤油もチューブ入りの辛子もあるから別にそれでもいいけど,嘘はいけない.
 
 それと,昔は納豆に辛子とタレを添付させてメーカーの利益を削っておいて,今度は辛子とタレの添付を省かせてメーカーの利益を削っている.
 要するにスーパーは,PB商品については,なんとしてでもメーカーの適正な利益を削りたいのである.自分の利益を確保するために.
 それを「ザ・プライスは,お客さまがお求めやすい価格に挑戦する」と言いつくろっている.元食品会社の社員だった私は常日頃から,PB商品は買わぬことにしている.高くてもNBを買う.メーカーを応援したいからだ.
 消費者がみんなPBばかり購入するようになったら,日本の食品産業は窮地に陥るのである.
 
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ウクライナに自由と光あれ
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(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)


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