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2022年4月27日 (水)

齢を重ねて

 会社員だった高齢者は健康診断で聴力検査をした経験があるだろう.普通の検査では,1kHzと4kHzの純音 (ピーという感じの音) をヘッドホンに出力し,聞こえるかどうかを片耳ずつ検査する.
 1kHzというのは,ヒトの日常会話の周波数の真ん中あたり (資料;《人間の声の周波数帯は500 - 2kHz》) で,4kHzはピアノの音の上限あたり.小鳥の鳴き声はもっと高い音になる.
 ヒトの可聴域は20Hzから20kHzであるという.しかし実際には人によって可聴周波数は異なる.
 一般に加齢によって上限周波数は低下するが,他の原因で高い周波数の音が聞こえなくなることもある.
 私が会社員だった時,部下の男 (四十過ぎ) がオーディオ好きで,色々と講釈をたれていた.
 ところがある年の健康診断で,4kHzが聞こえていないことがわかった.ヘッドホンで大音量の曲を聴き続けた結果の難聴ではないかという.
 それ以来,その男はオーディオ講釈はしなくなった.しても周囲の者に信用されないからであった.
 
 普通のオーディオアンプは20Hzから20kHzがフラットに増幅されるように回路が設計されているが,真空管アンプは敢えてこれよりも狭い周波数特性を示すような回路にする.ただし,20kHzは非常に高い音であるので,普通に音楽を楽しむならそんな高音は聞こえなくても大丈夫だ.
 そこでだ,爺ぃ婆ぁ 高齢者諸君!
 自分の耳はどれくらい高い音まで聞こえているのか,チェックしてみよう.
 そういうチェックに便利なサイト《ボタンを押してみて、音が聞こえますか?》を見つけたのだ.パナソニック補聴器のサイトである.
 これをやってみたら私は,六十代の目安だという10kHzは聞こえるが,五十代の目安の12kHzは聞こえない.
 七十二歳だから,こんなもんだろう.
 10kHzまで聞こえるという状態がどんなもんかという資料もある.《蠱惑の楽器たち 9.楽器の音域》だ.
 ピアノとバイオリンの絃の振動周波数上限が10kHzくらいだ.
 ただし,このあたりの周波数は振動として耳に伝わっているだろうが,音程として聞き取れているわけではない.それはこのサイトにも書かれている.おそらく高い周波数行の音は基本の音程の高調波であり,音の「ニュアンス」に関わっているのだろう.
 それはともかく,10kHzまで聞き取れれば交響曲のCDを楽しむのに不足はないだろうと思う.
 
 先日,七十歳の女性と話をしているとき,ひょんなことから体温計の話題がでた.
 新型コロナのワクチンを射ちに行く日の朝,体温を計ったら体温計が壊れていてピー音が鳴らなくなっていたというのである.
 たまたまその女性はバッグの中に体温計を入れていたので,見せてもらった.
 そして私が体温を測定してみたら,ちゃんとピー音がした.
「壊れてませんよ」と私は彼女に言った.ピーって音がしましたよ,と.
 すると彼女は怪訝な顔で「わたしには聞こえてなかったですけど……」と言った.
 もう一度やってみたが,どうやら私には聞こえる体温計の音が,彼女には聞こえない,そういうことのようであった.
 
 その時は不思議ですなあ,で終わったのだが,あとで調べると,加齢によって体温計の音が聞き取れなくなる現象があるのだとわかった.《電子体温計の終了音が聞こえない?耳と電子音の関係:音の雑学》[掲載日 2020年11月11日] から引用する.
 
これは耳の老化によって起こるもので、耳の中にある音を電気信号に変える有毛細胞が長年の使用によって損傷を受けたことで、音に対する感度が鈍ってしまう現象だとも言われており、どんなに訓練しても気を付けても避けられない現象なのです。
 この聞こえなくなる音の極端な例では、高齢となるとお風呂が沸いた時のお知らせ音、電子レンジの音、電子体温計の音などが徐々に聞こえにくくなるという現象があります。ただし昔ながらの目覚まし時計や、黒電話などベルの音ではこのような現象はありません。
 というのもアナログのベル音は単音に聞こえますが、実際には低音から高音まで幅広い音が含まれていることから、どの年齢の方にも聞こえやすいのです。
 それに対し電子的に作られた体温計や電子レンジなどのお知らせ音は、もともと成人にとってもっともよく聞こえると言われる3000から4000ヘルツの音が設定されていることが多いそうです。
 家電メーカーも「誰にでも聞き取りやすい周波数」ということで設定した音だったのですが、高齢になると徐々にこの周波数の音が聞こえにくくなってしまうということが近年になって判ってきたのです。
 特に女性の方が高い音が聞こえづらくなる傾向が強く、夫には聞こえているのに奥さんには聞こえず、それで喧嘩になってしまうこともあるみたいです。
 そのこともあって近年は家電メーカーも徐々に電子音を低い音に設定するようになりつつあり、平成14年にJIS(日本工業規格:現在は日本産業規格)が高齢者のために「家電の通知音は2500ヘルツ以上の高い音を使わないようにしよう」と新基準を定めています
 ただし高い音でも充分に聞き取れていた人の中には「低い音は刺激的でなく音が小さく聞こえる」という人もいて、年齢幅の広い家族の場合は難しい所もあります。
 そしてこの新基準は強制的ではないので、そのままの音を使用している機器もまだ多くあります。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 確かに,アマゾンで検索してみたら,振動式という体温計がある.高齢者用ということだろう.件の女性にはそのことを知らせておいた.
 
 さて,歳をとると耳は衰える.では歌う声の方はどうだろう.
 少し前のテレビ朝日《ワイドナショー》に武田鉄矢が出演し,歳をとったらキーが下がって,自分が若い頃に作った曲を歌うのが苦しくなってきた,と言った.
 私の「キーが下がる」は六十代半ばになるあたりからだ.当時は仕事からリタイアして年金生活に入る直前で,飲み会のあとに若い人たちとカラオケに行ったりすると,以前は歌えた曲が歌えなくなっていて,自分の「キーが下がる」を実感したのである.
 若い頃から還暦過ぎあたりに至るまで,私は歌唱の音域が広くて,十八番は さだまさし の「道化師のソネット」だった.YouTubeに,さだ がソロコンサート3333回記念ライブ (武道館,2005年) で歌った「道化師のソネット」があるが,これを楽に歌えたのである.今はもう全くだめだ.
 さだまさし 自身もキーを下げていて,若い頃のYouTube《さだまさし 奇跡~大きな愛のように~》と,最近のYouTube《奇跡 2021》を聴き比べるとかなり違う.
 
「奇跡 2021」はテレビCМに使われているので毎日のように耳にする.このCМによって,元のラブソング「奇跡~大きな愛のように」は,しみじみとした人間愛のイメージを付与された.(YouTube《テレビCМ「人が人を支えている」篇》)
 もう一つ,テレビでよく流れるCМ曲に,ビリーバンバンの「ふたり物語」がある.(YouTube《Futarimonogatari》)
 この曲のショートver. が三和酒類の企業イメージCМの最新曲だ.(YouTube《iichiko 2021 ファミリー篇》)
 菅原進の歌唱は昔から変わらない.さだまさし と同じく,時を重ねて菅原の歌うラブソングは人間愛の趣を持つに至った.
 
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ウクライナに自由と光あれ
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(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)


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