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2022年4月25日 (月)

俺ら東京さいぐだ

サンスポ《安藤優子、“生娘シャブ漬け”発言に「このセンスの無さでよくマーケティングを…」》[掲載日 2022年4月24日 10:49] から引用する.
 
コメントを求められた安藤氏は「このセンスの無さでよくマーケティングをやってますねっていうぐらいズレてる」と苦笑。受講生のものとみられるSNSに投稿された「田舎から出てきた右も左もわからない若い女の子を無垢・生娘なうちに牛丼中毒にする」といった伊東氏の発言に対し、「田舎ってそんなとこ? っていう。圧倒的都会目線のマーケティングってそういうもんなんだ…っていう、嫌な感じを私は受けました」と不快感をあらわにした。
 つづけて「田舎に何もないって前提じゃないですか」と指摘し、「都会目線のマーケティングってずいぶん上から目線だなって。そういう戦略にもし私たちが踊らされてるなら…はぁ~、わたしたちって愚かなのかしら」とため息交じりにコメントした。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った.以下同様)
 
 安藤優子さんは千葉県市川市 (かなりの都会) の生まれで,その後はWikipediaによれば《千代田区立九段中学校卒業。1974年、東京都立日比谷高等学校に入学。高校在学中、交換留学生としてアメリカ合衆国ミシガン州ハートランド高校へ留学。私立オークランド・カレッジを経て帰国し、上智大学外国語学部比較文化学科を卒業》という非常に華やかな御経歴で,人生を田舎とは無縁に過ごされてきた.(ちょっと注釈すると,市川市は東京から千葉県に入ってすぐのところにあり,IKEAがある船橋より東京に近い w)
 それ故,田舎に対して優しい (田舎の人を見下してはいけないと感じていらっしゃる) のだろう.
 都会で暮らしたことがない私にはそう思える.
 吉野家の元常務である伊東氏の品性のなさには呆れるが,かといって安藤さんの「伊東氏のマーケティング手法が《田舎って何もない前提》に立っているのはおかしい」という意見にはちょっと承服できない.だって,田舎にはほんとに何もないのだ.
 
 田舎には何もない.
 そのことを始めて私たちに強く認識させたのは,吉幾三の「俺ら東京さ行ぐだ」(YouTube) である.昭和五十九年 (1984年) のことだ.
 吉幾三は昭和二十七年 (1952年) に青森県北津軽郡金木町 (現・五所川原市) に生まれた.この歌の歌詞には,吉の少年時代 (1960年〜1970年代) が反映されているという.
 
【ないもの】
 テレビ,ラジオ,ピアノ,バー,電話,ガス,ギター,ステレオ,喫茶,集い,薬屋,映画,ディスコ,のぞき,レーザー・ディスク,カラオケをかける機械,新聞,雑誌,信号,電気
【ほとんどないもの】
 若者,乗用車,バス
【あるもの】
 数珠を握った爺さんと婆さん,おまわりさんの巡回,回覧板,牛を連れての散歩
 
 あれから四十年近くの月日が流れた.
 田舎は,いわゆるトカイナカから限界集落まで様々に多極化した.
 吉幾三は,昭和の田舎は《自動車もそれほど走って無ェ》と言ったが,その後,田舎では鉄道は廃線になりバスもなくなり,それらに代わって自動車がなければ生きていけないことになった.
 ところがさらにその後,田舎は高齢化が進行して自動車を安全に運転できない年寄りばかりになり,再び《自動車もそれほど走って無ェ》ようになった.
 昭和の頃は,村には老夫婦がやっている店があり,洗剤と菓子パンとポリバケツなんかを売っていたのだが,爺様が亡くなったあと婆様もお迎えが来て,やがて日々の買い物にも困った住人のために一週間に一度,移動スーパーがやってくるようになった.(参考資料;NHK《「冬の終わりに 移動スーパー 集落をゆく」》[初回放送日 2022年4月8日])
 テレビでは高齢化も過疎化も少子化もお構いなしに,林先生やバカリズムが,コストコと業務スーパーの売れ筋食品比較なんて番組をやっているが,田舎の人には番組の意図が理解ができない.田舎じゃ「コストコってなに?」だもの.そんなの誰も知らない.
 田舎といっても人口がそこそこある地方都市にはファミレスくらいはあるけれど,カフェはあやしい.スタバとかドトールとか,全国展開しているというけれど,都会偏重じゃないのか.(参考資料;カフェの店舗数)
 大体において,田舎と都会の大きな違いは外食店だ.
 東京,神奈川,埼玉県内では立ち食い蕎麦は掃いて捨てるほどある (ゆで太郎約200店舗,名代富士そば約130店舗,小諸そば約70店舗) けれど,地方では駅のホームにあった零細な店が閉店してどんどん減っているらしい.(参考資料;《小山駅「きそば」閉店 ホームの駅そば、また一つ消える 旅情ある乗換駅からの“新展開”》[掲載日 2022年1月14日])
 田舎では,立ち食い蕎麦ですら減っている.ましてや牛丼チェーンなんて,入って食べたことはないという人が大半だ.
 一般の人がまとめた牛丼チェーン店舗数のデータがある (《牛丼勢力図どうなってる? 「牛丼チェーン店舗数」を都道府県別に調べてみた》 [2020年更新]).
 これを見ると,大手牛丼チェーン三社の店舗は,東京,神奈川,埼玉,千葉,愛知,大阪に偏重していることがわかる.
 つまり,牛丼は極めて都会的な食べ物なのである.
 吉野家の元常務の暴言を取り上げたテレビ番組のМCたちが「牛丼は国民食です」「私は吉野家をしょっちゅう利用します」「吉野家って定期的に無性に食べたくなりますよね」などと騒いでいたが,地方の人たちにすれば「吉野家って,そんなに有名なの?」というのが実際のところなのだ.
 そもそも田舎の人はあまり外食をしない.日常普段の食事をするお店が少ないからだ.夕飯はもちろん昼食だって弁当持参か,コンビニを利用している.
 外食産業は,そのような田舎,つまり自社店舗のないところでは戦えない.だからといって出店拡張計画どころか,このコロナ禍で外食産業は閉店のニュースばかりだ.だから田舎の人が都会に出てきた時が勝負だ.外食チェーンのマーケティングはそれを前提にしている.安藤優子さんも田舎暮しを体験するとよくわかると思う.

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