醗酵済みの糠床を買ってみた
糠床を買って,冷蔵庫で糠漬けを作ろうと思い立った.
スーパーの漬物コーナーに並べてある恰も「キュウリの糠漬け」のように見える食品を見て,苦々しく思ったからである.
例えば,スチロール樹脂製あるいは発泡スチロール樹脂製のトレーに,キュウリ二,三本が入っていて,ラップ包装してある.
そのキュウリには米糠がまぶされている.いかにも糠床から取り出したキュウリの糠漬けのようだ.
しかし,裏面の原材料表示を読むと,キュウリの浅漬けであることがバレバレである.
包装された加工食品には必ず裏面に「原材料表示」がなされているが,その中に「糠醗酵調味液」とか「糠醗酵エキス」など,あるいはこれに類似した材料が書かれていたら,糠漬けではなく浅漬けである.
こういう食品のパッケージ (おもて面に印刷されている商品名) に「糠漬け」という言葉を使用すると法律違反になるので,「ぬか風味」などと書かれている.(この「ぬか風味」という謎の言葉は実際に使用されている)
パッケージのおもて面には消費者を騙す文言が書かれていることが多いので,包装された加工食品を買う場合は,とにかく裏面 (りめん) に印刷された「原材料表示」を読むことが必要である.おもて面に書いてある「本漬け」とか「伝統製法」とか,業者は売るためなら何とでもウソをつくのだ.
例えば実は浅漬けなのに,糠が付着しているキュウリの漬物が実際に店頭で販売されている.しかしキュウリにまぶされているこの糠は,糠漬けに見えるように後から施された「お化粧」にすぎないのだ.そこまでするか,恥を知れと言いたいくらいだ.
しかし,こういう現状を嘆いていても始まらない.
昔風の,大量生産に不向きで自然な作りかたの糠漬けは,自分で作ればいい.昔風の仕方は,子供の頃に父親から仕込まれたのをまだ覚えている.糠だけではおいしい糠漬はできないのであるが,ありがたいことに,必要な品々は販売されているので困らない.
まず,糠床は冷蔵庫で寝かせることが前提となる.こうすると一年中同じ温度で保管できるから,温暖な季節に異常醗酵させてしまう失敗がなくなるからだ.
昔は漬物樽 (フタ付きの木桶) か広口の陶器 (甕) を容器に使用したものだが,これらを冷蔵庫に入れるのは大きさと重さの点で無理で,従って温暖な季節には使えないから,涼しい部屋が必要だ.それに漬物樽は非使用時に衛生的で良好な状態を維持するのがめんどうくさい.安物は糠床で湿潤した後に,洗って乾燥するとバラバラになったりしがちだ.
というような種々の条件をクリアするには,普通の食品容器を流用するのがよい.
私が選んだのは,ポリプロピレン製の密封容器で,値段が四百五十円のもの.ヘニャヘニャでなければ百均でも構わない.容量は二リットル.少量の野菜を漬けるにも糠は一キログラムくらい要るので,容器の大きさはこのくらいがよろしい.
実は最初,チャック付きのポリ袋に醗酵済の糠が包装されていて,「その日から使える」というウリの製品を購入したのだが,キュウリを一本漬けるなんて用途にはいいが,カブとかミョウガとか,色々な野菜を漬けてみるのには不向きであることがすぐわかった.せっかくおカネをかけるのだから暫く続けてみようとお考えの向きは,迷わず約二リットルくらいの四角い食品保存容器をお勧めする.しかも長辺がキュウリ一本ほどで,深さは十センチメートルくらいあるものが使いやすい.
生活系雑誌によく紹介されている白いホーロー製の容器は見栄えが最高で,写真をネットに上げるのによろしいが,価格は何倍もする.だから,何かにコツンと当たってホーローが小さく剥落しようものなら,泣くに泣けない.
あとは,糠をかき混ぜるための道具だ.使い捨ての手袋でももちろんいいが,二リットルの容器に入れた一キログラムの糠なら,ヘラのようなものでかき混ぜるのが簡単だ.
私は最初,飯用のしゃもじを使ってみたのだが,エンボス加工がしてあるために糠が付着してしまうので,普通の料理用ヘラのほうが使いやすい.また,このヘラと料理用トングを使えば,糠に手を触れずに糠から漬物を取り出すことができる.
さて道具立ては以上だが,次は実際の糠漬け作業だ.
私はキュウリを一回に二本ずつ漬け,六時間で取り出して味を見た.ヘラでかき混ぜて,冷蔵庫へ.
翌日,またキュウリを二本漬けた.
これを繰り返すと,最初は固かった糠が,キュウリから抜けた水分で,次第にいい感じに軟らかくなってきた.キュウリを押し込むと糠がムニューとなる感じだ.
こうなったら,あとは食べたい野菜を漬ける.野菜によって漬ける時間は異なるから,試行錯誤だ.
私の目標は,うまい新生姜の糠漬けである.これは売られていないので,自作しかないのである.
季節的にはまだ先の話だが,それまでにとりあえず乾燥柚子とか唐辛子とかを色々加えて,糠を好みの風味に仕上げておきたい.
もう少し経つと糠を足す必要が出てくるが,その仕方はウェブ上に書かれているので,特に注意する点はない.
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ウクライナに自由と光あれ
(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)
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