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2022年2月 6日 (日)

「打ち手」の恥ずかしい誤用

 スポーツ報知《玉川徹氏、10代や高齢者へのコロナ感染拡大に「こうなってしまえば有効な打ち手はないというのが現実」》[掲載日 2022年2月7日 09:27] から下に引用する.引用中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った.
 
「分科会や政府の発表するコメントを見ていても基本的には有効な手段がないってことが伝わってきます。これだけ感染が広がってしまったら有効な手段がない。最も有効な手段はワクチンだった。それは去年からそう言われていたし、諸外国はワクチンが最も有効な手段だということで政治決断で3か月とか期間を前倒ししてでも、どんどん打つって形で資源を最大限投入することをやっていた。結局、日本はそれをしなかったツケが全部回ってきているなと思います」と指摘。 その上で「今からワクチンをで打つと言っても今、こんな感染状況で間に合わないですよ。こうなってしまえば、有効な打ち手はないというのが現実だと思います」とした。
 
 この文章は,テレビ朝日《羽鳥慎一モーニングショー》(2/7放送) での,玉川徹氏の発言を記事にしたものである.
 その中の《有効な打ち手はない》について,私は最初「有効な打つ手はない」のミスタイプだと思った.
 日本語の語義と用法についての基本レファレンスである日本国語大辞典では「打ち手」を次のように解説している.(精選版から引用する)
 
(1) 一般に、打つという動作をする人。
(2) (討手) 敵を攻め滅ぼしに向かう人々。また、罪人などを捕えたり、殺したりする役の人。うって。おって。殺し手。
(3) 銃砲、石、刃物などをうつ人。
(4) 太鼓、鐘などをたたいて鳴らす(役の)人。また、そのすぐれた人。
(5) 面など、材料を鍛えて作り出す人。また、そのすぐれた人。
(6) ばくち、すごろく、碁などをする人。また、それらにすぐれ、あるいは好きな人。
(7) 空手の手技の一つ。こぶし、手刀などで相手の急所を打ったり、かかってくる相手の手足を打って防いだりする技。
 
 これに対して「打つ手」の語義は一つで,以下の通りだ.
 
とるべき手段。施すべき方法。
 
 上に引用したスポーツ報知の記事では「打ち手」を,文脈からして「とるべき手段」「施すべき方法」に用いているが,これは誤用だ.
 従って,これはスポーツ報知の記者のミスタイプだと私は考えた.放送人である玉川氏がこんな誤用をするとは思われなかったからである.
 だがしかし,「打つ手」の意味に「打ち手」を用いる誤用についてもう少し調べてみると,驚いたことに,ビジネス書の分野ではこの恥ずかしい誤用が定着し,一般化しているようだとわかった.ビジネス書なんてのは無教養な人間が書くものだから,ありそうな話である.
 すなわち,玉川氏はビジネス書に影響されて「打つ手」の意味で「打ち手」を誤用している可能性があるのだ.
 もしそうだとすると,私はこれまで玉川徹氏を教養と学力のあるかただと思ってきたので,大変残念である.

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