非道のバカンス /工事中
NHK《ニュース 地球まるわかり 特集・アニマルウェルフェア》[放送日 2022年2月20日] を観た.
その番宣サイト (見逃し配信あり) には次のように書かれている.
《今や欧米のスタンダードとなりつつある「アニマルウェルフェア」。家畜やペットを飼育する際に動物の立場を尊重するという考え方をさす。特集でその広がりと現状を見る。》
アニマルウェルフェアの意味はWikipedia【動物福祉】に詳しい.Animal welfareを日本語にすれば「動物福祉」だが,人間の福祉とは全く異なる概念なので,誤解されぬよう普通はAnimal welfareをそのままアニマルウェルフェアと書く.
この日の放送は,アニマルウェルフェアの現状を「ペット」「ファッション」「畜産」の三つの切り口から眺めたものである.
このうち,ペットについては,NHK《ビジネス特集・犬と猫がペットショップから消える日》を踏襲した内容であった.
私は老いたトイプードルを飼っているが,これはペットショップで買い求めた.
当時の私は犬猫に関して全く知識がなく,殺処分の問題とか保護犬,保護猫などの存在も知らなかった.ペットはペットショップで購入するものとしか思っていなかったのである.そして私のトイプードルは,鎌倉のペットショップで二十五万円だった.
とはいえその後,実際に飼育を始めると,様々な情報を得ることになった.
しかし今思うと,テレビなどはかなり歪んだ情報を流していたように思う.
典型的な事実歪曲は,欧米は動物愛護の先進国であり,日本は毎年膨大な数の犬猫を殺処分している後進国だという話であった.
この頃から主としてテレビの動物番組で,各地の動物愛護団体の活動が紹介されることが多くなった.
それはいいことだが,テレビ番組としては,それではだめなんだろう.
野良の猫や,飼い主とはぐれてしまった犬が捕獲され,殺処分されることを批判するとの立ち位置がテレビに求められていたと思う.
その際には,欧米社会では犬も猫もペットとして幸せに飼われていると語られるのが常だった.私たち視聴者は簡単に騙された.
ところが,やがて嘘がバレた.バラしたのは他ならぬテレビの動物番組自身だった.
テレビ各局は制作費節約のために,海外で制作・放送された番組を買ってきて,日本でも放送する.
動物番組では,はからずも,欧米の動物愛護団体が,はぐれた犬猫や捨てられた犬猫をレスキューする感動的な映像を頻繁に放送するようになったのだ.
これは「欧米社会では犬も猫も幸せに飼われている」ということがフィクションであることを視聴者に知らしめてしまった.
つまり,動物の虐待が行われているのは日本だけではなかったのである.
コロナ禍でテレワークの人が増えた.それに伴って可処分時間が何時間も増えた人たちがペットを飼い始めた.オンライン会議の最中以外は,上司や同僚の目に見えなくなるため,仕事とプライベート時間の区別が曖昧になりやすい人がいるからだ.
そして暫くすると感染拡大が下火になり,また人々は会社に物理的な意味で出社せざるを得なくなった.すると独身者と,夫婦ともに仕事をもっている家庭では,ペットを朝から夜まで放置することになる.これは動物虐待の入口を一歩入ったことになる.
読売新聞には《また、NPO法人「しっぽの会」(長沼町)には今月上旬、コロナ禍でハスキー犬を飼い始めた男性から「出張が多くなり、家を空ける機会が増えたので、飼いきれなくなった」と相談が寄せられたという。》と書かれている.(《コロナ禍で安易に飼いたくなる犬猫、限界感じ手放す人も増加…専門家「寿命まで飼う覚悟して」》[掲載日 2022年1月14日 10:52])
記事のように「ヒマだからペットでも飼うか」という不純な動機で飼い始めるやつは「忙しいからペットを捨てよう」という不純な動機で動物たちを気軽に捨てることになる.
また,ペットの飼育には意外に費用がかかることに気が付いて「こんなはずじゃなかった」と慌てて捨てる輩もいるそうだ.
雨後の筍のように出現した動物虐待予備軍に対して,全国各地で動物愛護に取り組んでいる人たちは怒り心頭だ.そしてメディアも,コロナ禍で動物虐待が増えたことを報道した.
そのような報道自体は歓迎すべきことだが,私が思うに,それらのコロナ禍初期の報道には日本のことしか扱わないという欠陥があった.
本当は,世界中で動物虐待が増えたのではないか.
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