昭和史資料としての献立
NHK Eテレ《365日の献立日記 スペシャル「沢村貞子さんと私のお正月」》[放送日 2022年1月3日 18:00~] を観た.
この番組は以前からやっていたようだが,私はこのスペシャルが初見だ.
今回の特番を視聴したのは,たまたま,この番組のナレーションを鈴木保奈美さんが担当していることを知ったからである.
鈴木保奈美さんは例の《家事ヤロウ》に二度もスペシャル・ゲストとして招かれ,その時はバカリズム,カズレーザー,中丸の三人が,緊張したせいで口数が減ってしまったほどの女優さん.
保奈美さんの料理の手際はテレビ画面で見てもかなりのもので,NHK《365日の献立日記》にキャスティングされているのは,料理上手ということがあるからだろう.
《365日の献立日記 スペシャル》を観て思ったのは,これは普通の料理番組ではないということだ.
普通の料理番組は,料理の作り方,つまりレシピを視聴者に紹介するのを目的としている.
しかし沢村貞子は,日々の献立を日記のようにして大学ノートに書き残したが,それには料理の名称だけを記して,レシピは残さなかった.
そこでNHKは,沢村貞子が書き遺した料理名を頼りに,どんな料理だったかを推測することにした.それが《365日の献立日記》である.
料理の再現はレシピも料理写真もないから不可能だが,料理家の飯島奈美さんが「こうだったのではないか」という試みをしている.
飯島さんは『かもめ食堂』や『深夜食堂』の製作にも参加している著名な料理家である.
彼女は《365日の献立日記》で作った料理を『沢村貞子の献立 料理・飯島奈美』(リトル・モア,2020年3月10日)) にまとめて出版している.
この書籍は,昭和を代表する女優にして一級の家庭人だった沢村貞子のありし日の暮らしを偲ぶためのものだ.
しかるにこれを,レシピ本だと考え違いをして購入し,これは料理本ではないと言ってアマゾンのレビューで貶している阿呆女のなんと多いことか.しかしチコちゃんは知ってい
それはともかく,私が《365日の献立日記 スペシャル「沢村貞子さんと私のお正月」》を観て興味を引かれたのは,沢村貞子著『わたしの献立日記』(新潮社,1988年) の原稿ではなく,彼女の献立日記そのもの,つまり肉筆原本が番組の資料になっていることだ.
放送画面には芹沢銈介作品の紙 (カレンダーと思われる) で丁寧にカバーがけされた日記が,ずらりと並べられた.もちろん飯島奈美さんは,これを手に取っているわけだ.
うらやましい.これは昭和史の貴重な生活資料だからである.
そして,この日記がいまどこにあるか知りたいと思った.
そこでウェブをあちこち検索した結果,ようやく所在が判明し,「あ,やはりそこにあるのか!」と納得した.
結果は敢えて記さない.沢村貞子の献立日記に御関心ある向きは検索して頂きたいと思う.日記の所在を私たちに教えてくれるのは,諸兄御存知のあのかた,手練れのエッセイストのHさんである.
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