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2022年1月13日 (木)

池森秀一の味覚

 一昨日放送のテレビ朝日《家事ヤロウ》の《2時間SP 芸能人自宅にカメラ設置 年末年始リアル家事24時》で,池森秀一が昨年食べた乾麺蕎麦のお勧め品を三つ紹介した.
 その途端に,大手通販サイトでは入手ができなくなったものがあった.《家事ヤロウ》の視聴者が購入に殺到したのだろう.
 しかし,池森自身が経営している通販サイトでは,そのうちの二つ (桝田屋食品「信州飯山 新富倉そば」と小山製麺「そば通も呻る八割そば」) がまだ買える.(追記;1/13朝現在)
 残る一つ,本田商店の「出雲そば 十割」は池森のサイトでは売り切れだが,本田商店直営の通販サイトで買える.
 ただし「新富倉そば」は,注文が殺到したため,製造者の通販サイトに発送遅延のアナウンスが掲示されている.
 
 池森秀一の乾麺蕎麦についての発信力はすごいものだと感心する.
 が,池森は乾麺の蕎麦の品質についての基礎知識がないから,悪意はないにせよ,私は彼の推す蕎麦は信用していない.
 例えば池森が激賞した「信州飯山 新富倉そば」の原材料を見てみよう.
 
20220113a
 
 表示されている材料は以下の通り.
 原材料:小麦粉,そば粉,小麦たんぱく,食塩,海藻,おやまぼくち/増粘剤 (グァーガム)
 一目瞭然だが,これは乾麺うどんである.すなわち小麦粉が主原材料で,これに蕎麦粉を加えている.
 それだけなら,そこらへんの立ち食い蕎麦 (茹で麺) と同じであるが,呆れたことにこの乾麺は「小麦たんぱく」と食塩を入れている.
 これはもう完全にうどんの製法である.しかも,海藻とオヤマボクチ (*註) はいいが,食品添加物のグァーガムをぶち込んでいる.
 こんな立ち食い蕎麦以下の品質の乾麺が堂々と売られているのだ.これを蕎麦と称するのは詐欺に近い.怒れ消費者,と私は言いたい.
 それ故,この乾麺をうまいと言う池森秀一の味覚を信用してはいけない.
 
(*註)
 蕎麦のつなぎに海藻を用いるのは,越後魚沼の名産「へぎ蕎麦」が有名.海藻は布海苔である.
 信州飯山の「富倉蕎麦」では,オヤマボクチ (キク科の山菜「山ごぼう」) の葉脈をつなぎに使用する.山ごぼうは,山菜と呼ばれているが実際には栽培されている.
 桝田屋食品の「新富倉そば」は,「富倉蕎麦」を名乗れないほどの低品質なので「富倉そば」としていると思われる.姑息だ.
 ちなみに,主たる原材料の表示が「小麦粉,蕎麦粉,小麦たんぱく」と書かれている乾麺の典型的な配合は,小麦粉70%,蕎麦粉20%,小麦たんぱく10%である.
 蕎麦粉八割とつなぎ二割の蕎麦を二八蕎麦と呼ぶが,蕎麦粉二割の蕎麦は,蔑んで逆二八と呼ばれている.誰がそう呼んでいるかというと私だ.
 ただし「蕎麦 (蕎麦切り) はうどんから派生したのであり,最初はうどんに蕎麦粉を少しずつ混ぜて作られたとしても不思議ではない」という理屈で,逆二八こそが本来の蕎麦だと主張する人がいる.しかしその主張は文献に基づいておらず,耳を傾けるに値しない.「としても不思議ではない」は妄想の常套句だ.

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