帯を解け
今日からNHK《カムカムエヴリバディ》の「ひなた編 (京都編)」が始まった.
ドラマの舞台は一人娘のひなとが生まれてから十年後,ヒロインるいは京都の小さな店で相変わらず回転焼を商い,夫のジョーも相変わらずヒモ生活を過ごしている.
そんなある日,ひなたはオモチャの刀でチャンバラ遊びをしたのだが,ひなたは刀を体の前で時計の針が円を描くように回した.
これは言わずと知れた「円月殺法」のマネである.刀を時計の針のように回転させる型の円月殺法は,市川雷蔵主演の映画『眠狂四郎』シリーズ (『眠狂四郎』の映画化は他の俳優主演でも行われた) で使われた演出,殺陣である.
ひなたが小学生の時は,田村正和主演のテレビドラマが関西テレビの制作で放送されたが,田村正和の円月殺法は刀を回転させたりしない.
刀を回転する方式の円月殺法は市川雷蔵作品だけの殺陣なのである.
市川雷蔵の円月殺法を,ひなたがマネしても時代考証的に齟齬はないのであるが,時代劇好きの父親ジョーが,ひなたを映画館に連れていって『眠狂四郎』観たとすると,大きな問題がある.
問題とは,市川雷蔵の『眠狂四郎』シリーズ作品はいわゆるチャンバラ映画ではなく,完全に大人向けの作品であり,まかり間違っても小さな子供に見せてはいけないものだったことである.
どういうことかというと,雷蔵の眠狂四郎には例えば次のようなシーンがあるのだ.
ある日の昼日中,眠狂四郎は馴染みの居酒屋に姿を見せる.
かねてより狂四郎とねんごろになっている店の酌婦は,嬌声を上げて狂四郎を奥の部屋に通し,「今お銚子を」と言う.
すると狂四郎は女に「酒は要らぬ.帯を解け」と言う.
女「なによー昼間っからー,うふふ」
狂四郎「夜でなければならぬという法はない」
このあと時代劇ではよく知られた演出で,狂四郎が女の帯をぐい引くと,女はくるくると回って布団の上に倒れる.
とまあこんなシーンが雷蔵の狂四郎にはあるのだ.
当時から高校生が親に隠れて雷蔵の『眠狂四郎』を観に行くということはあったが,小学生の女児が雷蔵の狂四郎を観たはずはないのである.
ひなたがオモチャの刀で円月殺法のマネをするというシーンは,古い映画ファンの目でみると,時代考証的によろしくないと思う.
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