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2021年12月24日 (金)

北海道ごはんは米過食

 STVニュース北海道《こんな時だからこそ食べるぞ!「ごはんのおともグランプリ」お米大好き記者がおかわり連発》[掲載日 2021年12月20日 19:26] を読んで私は首を傾げた.
 
北海道やJAなどは北海道米の消費を拡大しようと「ごはんのおとも」レシピを募集し、札幌市内でグランプリレシピが発表されました。
「おかず部門グランプリは、エントリーナンバー5番、道産ホタテのみそパン粉焼きです」
レシピは「おかず」、「どんぶり」、「アラカルト」の3部門で募集していて、128件もの応募がありました。
審査の基準は北海道産の食材を使用しているか、ごはんがすすむか、手軽に作れるか、の3点。
おかず部門では火や包丁を使わず、手軽に作れる、「道産ホタテの味噌パン粉焼き」がグランプリに選ばれました。
…中略…
 そのほかどんぶり部門では「道産鮭と札幌黄のキーマカレー丼」、アラカルト部門では「バター香るごきげんおにぎり」がグランプリに選ばれました。
 
 私は昭和に生まれた古い人間なので,最近のひとの言うことはわけわかりませんなあ.
 この引用記事の「ごはんのおとも」とはご飯のお供のこと.ご飯とお供は,いわば主従関係にある.
 日本語辞書のレファレンスたる日本国語大辞典で「御供」の解説を読んでみる.
 
〔精選版日本国語大辞典「御供」の解説〕
〘名〙 (「お」は接頭語)
主人などに付き従って行くこと。また、その人。
※史記抄(1477)一一「子路がやがてをともせうと云たほどに」
② 料亭などで、帰る客を乗せる自動車。
※新西洋事情(1975)〈深田祐介〉日本「業者思想」欧州に死す「席を立てば立ったで、日本では『おとも、おとも』の声が〈略〉『業者』のあいだですさまじく飛び交い」
③ 古物商などが物を買い取るとき、主だった品物と一緒に、ただ同様に持って行く品。
④ かご屋の用語で、かご賃をいう。
※滑稽本・魂胆夢輔譚(1844‐47)三「『だんな、お供(トモ)をいただきたうござります』おともとはかごちんの事なり」
 
 上記の引用中の文字の着色は当ブログの筆者が行った.
主人などに付き従って行くこと。また、その人》とある通り,ご飯のお供とは,主人たる米飯に付き従う食べ物である.おかずの一種である.
 
 農水省は「和食は一汁三菜を基本とする」なんてことを世界中にバラまいてユネスコ無形文化遺産を勝ち取ったのであるが,そうであるとするなら私たちは滅多に「和食」を摂らない.その意味で「主食である米飯」と「主菜一品と副菜二品」および「汁物」「香の物」で構成される一汁三菜は,まさに「遺産」ではある.
 
 私たちの日常食は雑食であり,例えば小さな子のいる家庭では家族揃って家庭用タコ焼き器を囲んで楽しい夕食などというシーンもある.おかずは白いご飯だ.w
 また例えば土曜日のお昼はホットプレートを囲んで,いまや国民食 (「赤いきつね」の三倍も売り上げがあるとかで東洋水産の看板商品だ) とまで言われている特製ソース付きマルちゃん焼きそば (三人前入り希望小売価格290円) を食べる家庭は多いだろう.おかずは白いご飯だ.ww
 NHK《サラメシ》をよく観る視聴者はご承知であろうが,若い女性が自分のうちから弁当を持ってきて職場でランチを摂る場合,まず間違いなく汁物はない.持ってきた弁当だけを食べる.
 私はといえば,昨日の昼はマルちゃんパリパリ無限キャベツのもと (一人前入り希望小売価格160円) と日本三大饅頭の一つ柏屋の薄皮饅頭を食った.
 家庭料理の土井善晴先生は,一汁一菜でいいんです,あるいは具だくさんの味噌汁があれば菜なしで一汁だけでいいんです,と仰る.
 家庭の食事はそうでいいのだろうと私も思う.
 その土井先生が言うところの菜は,きちんとした料理である主菜でなくても構わない.副菜でもいいし,それ以下の食材そのものだってよろしい.丸美屋の「のりたま」なんか,主菜とか副菜とかの官製「和食」の「菜」の範疇には入らないし,おかずといってよいのかどうかもわからない食べ物であるが,「のりたま」をかけたご飯を子どもは大好きだ.
 そのような食べ物と一緒に米の飯をもりもり食うことも私たちの日常にはよくあることだ.
 その「おかずあるいは,おかずといってよいかよくわからない食べもの」を,私たちは「ご飯のお供」と呼んでいる.
 近海産魚介の刺身とか,車エビの天ぷらとか鰻のかば焼きとか,決してそういう御馳走を「ご飯のお供」とは呼ばない.逆にご飯がお供である.
 そう考えるのは私だけではない.軽くウェブを探してみつかった《ご飯のお供人気ランキング!ご飯に合うおいしいトッピングは?》を読むと,これを書いた人は,納豆,辛子明太子,生たまご,キムチ,鮭フレーク,鮭,梅干し,海苔の佃煮,味付け海苔,ツナ缶,いかの塩辛,高菜漬け,韓国海苔,塩昆布,しらす,昆布の佃煮,鶏の唐揚げ,たらこ,海苔,いくら を「ご飯のお供」に挙げている.
「ご飯のお供」は,べつにトッピングしなくてもいいのだが,このランキングを書いた人は,なんでも飯の上に乗っけてくう習性があるらしい.
 それは突っこまないことにして,およそこの人の頭にある「ご飯のお供」も,私と同じイメージのようだ.ただし,鶏の唐揚げは歴とした料理であって「ご飯のお供」じゃないと私は思うが.
 それでは食品業界のプロはどう考えているか.
 小売業の久世福商店は《ごはんお供 商品一覧》に,次のように人気のあるご飯のお供を整理してくれている.
 なめ茸,海苔佃煮,おかず味噌,ほぐし焼魚,混ぜご飯の素,ふりかけ,即席茶漬けの素,漬物,梅干し,佃煮,焼き海苔
 なるほどね.さすが久世福.
 こう見てくれば「ご飯のお供」は「おかずあるいは,おかずといってよいかよくわからない食べ物」としていいと思われる.
 
 さあこれで「ご飯のお供」のイメージがつかめた.そこで冒頭の報道記事に紹介されている《ごはんのおともグランプリ 2021 我が家のラクうま! 北海道ごはん》を見てみる.
 このイベントの主催者は北海道米販売拡大委員会で,これに北海道米食率向上戦略会議が協力していると言う.
 ずごい.なにしろ戦略会議だ.構成諸団体は,北海道,北海道農政事務所,生活協同組合コープさっぽろ,北海道スーパーマーケット協会,北海道全調理師会,北海道農業協同組合中央会,ホクレン農業協同組合連合会など錚々たる大組織である.すごい.
 このイベントでは「ご飯のお供」を三つに分類している.
 常識的には久世福の分類にあるように「ふりかけ部門」とか「佃煮部門」あるいは「漬物部門」だろう.しかし北海道はそんなことはしない.
 何と「おかず部門」「「丼部門」「アラカルト」の三部門なのだ.
 奇想天外なジャンル分類だが,とりあえず先に進む.
「おかず部門」グランプリ一位に輝いたのは「道産ホタテの味噌パン粉焼き」だ.レシピと料理写真はこちら
 どうみてもこれは,主菜にもなるちゃんとした一品料理である.これのどこが「ご飯のお供」なのか,理解に苦しむ.
「どんぶり部門」グランプリ一位は「道産鮭と札幌黄のキーマカレー丼!」だ.このあたりから,このコンテストはおかしな具合になっている.「ご飯のお供」に丼物を食うというのだ.
 北海道の行政機関も生協も農協も,キーマカレー丼をおかずにして白いご飯を食べるのを絶賛しているわけだ.キーマカレーをおかずにしてご飯を食べるのならわかるが,キーマカレー丼をおかずにするのは,米食率向上戦略とはいえ,いくらなんでも米の食いすぎだと私は思った.
 しかし「アラカルト」部門第一位の料理写真を見るに至って,私はこのコンテストの意図を察した.
《ごはんのおともグランプリ 2021》の公式サイトから,スクリーン・ショットとして引用する.
20211226a
 
 どのようにしたら,このお握りを「ご飯のお供」として食べることができるか.
 まず蕎麦用の丼 (例えばこんなの) に白いご飯を軽く盛る.その上に「バター香るごきげんおにぎり」を一つ載せる.
 これに熱い煎茶を注ぎ,茶漬けにする.
 こうすることで,バター醤油と煎茶の香りが食欲を著しく増大させることとなったのである.
 しかし何しろご飯の量が中途半端ないので,途中でいわゆる味変をする必要がある.そうしないと飽きる.
 めんつゆ,揚げ玉を足して,悪魔系のお握りにしてみたらこれが旨かった.悪魔のごきげんおにぎりである.
 北海道米食率向上戦略会議の戦略は,道民に米の飯をもりもり食わせることであるとすれば,見事に炭水化物多食と血糖値上昇に成功するだろうと評価される.よかったよかった.

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