イジメられた少年を猫が励ます
深谷かほる『夜廻り猫』の第三巻の199話に,イジメられている少年の話が描かれている.
『夜廻り猫』は各話一ページの短い構成だが,199話のイジメの始まりは,教師の無神経な言動だった.
少年の家は貧しい.そのことを教師はクラスメートの前であからさまにしたのだ.
少年はその教師にイジメのことを訴えたのだが,「(少年をイジメる連中は) そんな奴らじゃないぞ 被害者意識が強いなあ」と一蹴されてしまう.
少年は夜廻り猫に言う.
「何でも出来て上の受けもいい いじめる奴って人気者なもんなんだ 教師は皆知らん顔 見て見ぬ振りか眼中にない」
作者の深谷かほるさんは,イジメの実際を目にして知っているのだろうと思う.
もう昔のことだが,私の息子が小学校でイジメられた.
怒った私は担任教師に談判に行った.
するとその教師は「イジメってのは,イジメられる子に原因があるんです」と言い切った.
私の息子をイジメていると生徒たちについて「そんな子たちではありません」と言い,私の息子が悪いと断じた.
そして,小学校の同級生たちは同じ中学に進むので,中学でもイジメは続いた.
そのため私の息子は,高校は神奈川県から東京まで通学することにした.片道一時間半だが,息子はよく耐えた.イジメられるより余程楽だったからである.
イジメが原因で命を絶った子供があると,その後必ず,学校側が教育委員会に報告しなかったとか,教育委員会が事実を把握したとしても握りつぶしたとか,そんな報道が続く.
学校側と教育委員会が頑強に「イジメはなかった」と抵抗すると,時には文科省が学校と教育委員会に指導に入ることもある.
裁判になっている例も多い.
私は自分の経験から思うのであるが,学校におけるイジメは教師に原因がある.もちろんそんな教師ばかりではないとは思うが,生徒ではなく教師がイジメの先頭に立つことがあるのを,これまで報道された実例で私たちは知っている.
子を持つ親は担任教師にイジメについてどう思うか訊いてみるといい.ほとんどの教師が「イジメってのは,イジメられる子に原因があるのです」と言うだろう.イジメられている生徒を,職を賭してかばう教師 (校長にしてみれば,職員室の和を乱すとんでもないやつだ) がいたという報道が皆無であるのが,その証左である.
同級生をイジメても教師がかばってくれる.それどころか,見て見ぬ振りをするだけでなく,時には教師がイジメてくれる.そういう教育を受けた生徒が長じて教師となったらどうなるか.生徒の先頭に立ってイジメをするだけではない.同僚教師のイジメもやる.イジメが悪いことだなんて思っていないからだ.
それが神戸の東須磨小学校で起きた「激辛カレー教員いじめ事件」である.
この事件のリーダー格でメディアに「女帝」と呼ばれた教師は,祖父が教育者で父親も教育委員会に所属していたことがよく知られている.
だから「女帝」は校長の「お気に入り」だった.
そういう構造が全国各地にあると思う.
[追記]
この事件で男性教師二人が懲戒免職となったが,張本人の「女帝」は停職三ヶ月ののち,晴れて現在は神戸市教育委員会に勤務しているという.イジメ教師が教育委員会にいるのだ.これはもう悪い冗談としかいいようがない.(講談社・現代ビジネス《「教員いじめ・暴行事件」、加害者たちは今何をしているのか》)
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