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2021年12月21日 (火)

軽薄農政

 大根と牛乳が生産過剰で,農家がピンチに陥っているという.
 実際,スーパーに行ってみると,大根は一本では売れないので半分にカットして,それが四十円だったりしている.
 報道記事の解説によると,コンビニでおでんを販売しなくなったせいだとか,居酒屋で刺身が売れないため,ツマの大根も仕入れがないのだとか,サンマが不漁なので大根おろしにする大根も売れなくなった,など色々な説が言われている.
 しかし,直感的に「そんなことで生産過剰になるかなあ?」と思う.
 特に「刺身のツマが……」が事実だとするなら,そもそも大根の需要は本当の需要ではないことになる.ツマの大根のほとんどは捨てられるからだ.
 大根おろし説に関しては,サンマ三尾につき大根一本消費という計算が根拠になっている.普通,そんなに大根おろしを食うかよ.w
 大根の過剰生産は今年だけのことではないという.
 テレビの報道で大根生産農家が「このままでは廃業するしかない」と言っていたが,言うことが極端だ.廃業していまさら会社員になるつもりか.それとも何かITでも起業するのか.
 出荷好調な野菜もあるのだから,他の野菜に転換するしかないだろうに.
 
 酪農は,生乳過剰生産の現状は深刻だ.
 どういうわけかこれまで,政府は酪農家に冷たく当たってきた.
 例えば学校給食では,米飯給食に牛乳は合わないという理由で,長年,牛乳は目の敵になってきたのが実態だ.
 この米飯給食から牛乳を排除するという政策が特にけしからん.
 私は小学校の六年生の時に,それまでの給食の脱脂粉乳に代わって牛乳が出されるようになった.
 確か国内酪農振興のためだと聞かされた.
 それ以後私は牛乳好きとなり,今でも日にコップ三杯の牛乳を飲んでいる.
 余命幾許かの爺が牛乳三杯を飲んでいるのだ.
 育ち盛りの小中学生はもっと飲めと言いたい.
 
 生乳が生産過剰になった場合は,乳製品に加工することが行われるが,これが必ずしも「常に」ではない.
 海外から輸入する乳製品との関係が複雑らしく,スーパーの店頭からバターが姿を消すことが時々あるが,バター等の完全国産化は政治の視野にないようだ.
 このように戦後の農政をマクロに見ると,国内の酪農は行政から冷たくされてきた.
 いまさら農水相が記者会見の場で,コップ一杯の牛乳を飲むというパフォーマンスをやってどうなるというものではない.
 農水大臣は,牛乳の消費拡大を,テレビで国民に訴えてみせる以上のことは絶対にやらないだろう.
 実は現在,コロナ禍による船舶輸送の優先競争が起きており,牛の飼料である輸入牧草は輸送賃が安いせいで競争に勝てず,逼迫している.業界では牛の食糧危機とまでいわれているようだ.
 最悪,酪農家は乳牛を屠殺しなければならぬ事態が起きるかもしれないと,テレビ報道が伝えているので業界情報資料を調べてみたが,政府が積極的に動いている気配は見えない.
 
 余談だが,この種の軽薄なパフォーマンスは,1996年8月のO157騒動 (大阪府内) の時に菅直人厚労相が記者会見の場でカイワレを食って見せたのが最初である.これはWikipedia【菅直人】に小項目《O157とカイワレ問題》が立てられている.菅直人のパフォーマンスは国民に笑われたのみならず,裁判にまでなった.
 
 下らぬパフォマンスを北海道知事もやっている.
 毎日新聞《大量廃棄の危機 牛乳、コロナで需要低迷 北海道知事「味わって」》[掲載日 2021年12月19日 09:30] が報じた
  
生乳余りの原因は、生産が順調だったことと、コロナ禍の外食控えなどで需要が減ったこと。年末年始は学校給食がなくなるため、Jミルク(東京都)は10月時点の推計で、年末に過去最大規模の約5000トンが廃棄になる可能性があるとしている。
 鈴木知事は16日の定例記者会見で、ホクレン農業協同組合連合会の西川寛稔副会長とグラスになみなみ注いだ牛乳を一気飲みしてみせ「うまい!」と一言。道庁は翌日にこの動画をツイッターに投稿した。鈴木知事は「牛乳が苦手でも、ジュースにしたら飲める人もいる。牛乳を大量に使ったシチューは寒い冬に体も温まる。酪農家を応援する気持ちで味わって」と呼び掛けていた。
 
 コップの牛乳を知事が一気飲みするのを見た道民が感激して「おお,私たちも牛乳をたくさん飲もうではありませぬか!鈴木知事に続けっ!」と言うと思ってでもいるのか.
 阿呆なことをするものだ.政治家なら,言葉で説明し,訴えるがよい.
 知事は《牛乳を大量に使ったシチュー》と言ったらしいが,なんだそりゃ.
 知事がクリームシチューをイメージしているのなら,それは無知に過ぎる.
 どうせ料理なんかしたことがないのだろうが,それならレシピを調べてから言え.クリームシチューには少ししか牛乳を使わないのだ.
 
[追記]
 大晦日と元日の二日間,ローソンがホットミルクを半額提供して酪農を支援するという.立派である.

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