新規感染者数がピークアウトして減少するのは自然現象である (二)
TBS系《サンデー・ジャポン》は,漫才師が司会をして,タレントたちが勝手な意見を述べるというもので,この種の番組の中では一番程度の低い番組である.
その《サンデー・ジャポン》で,自称「薄口評論家」の杉村太蔵が頓珍漢なことを述べた.
報知新聞《杉村太蔵、人流変化なし東京の感染者減傾向に「科学的に説明できている方は誰もいない」》[掲載日 2021年9月12日 11:41] から杉村の発言を引用する.
《8、9月で我々そんなに行動が変わった感じがしませんけど、何で急激に感染が減少したのかも、科学的に説明できている方は誰もいない。科学的根拠を求めたい気持ちもわかるのですが、今はちょっと難しいのではないかというのが僕の考えです》
《科学的に説明できている方は誰もいない》とはまた随分と上から目線なことを言うものである.専門家の誰が科学的な説明をしているかどうか,判定をするのは私だ,と杉村は言っているわけだ.いつから杉村は感染症数理解析の専門家になったのか,おいおい,である.
昨年,我が国が新型コロナウイルス感染症の第一波に見舞われたとき,京都大学医学部大学院の西浦博先生 (当時は北海道大学医学部大学院) が「これから先,新型コロナウイルス感染症は,周期的に何度も流行を繰り返すのだが,各流行期のピークをできるだけ低く抑えて医療崩壊を防ぎ,そのように時間稼ぎをしている間に医療体制を作り上げなければならない」と語った.
新型コロナウイルス感染症は,感染者が増加して感染者数が頂点に達したあと,自然に減少する (研究レベルの議論では,感染者数の推移はポアソン分布で近似するようだが,私たち一般国民の理解としては,二項分布をすると見做してもいいだろう) ものなのである.
ここでおもしろいのは,感染が拡大しても人々が行動自粛をしない場合,現在の第五波のように感染者数推移のグラフがきれいな二項分布を示すことである.
その逆に,上図の第三波 (昨年の十二月から二月にかけての流行期) を観察すると波形が崩れているが,これは年末から年初にかけて人々の行動に大きな変動があったことを示している.
いずれにせよ,薄口評論家杉村太蔵が何を言おうと,これまでの新規感染者の増減状況は科学的な説明がつくものである.
したり顔で《科学的に説明できている方は誰もいない》などと言わぬのがよい.
科学的な理解のためには,できれば西浦先生の専門的な論文を読破するのがよいが,それは難解すぎて杉村には無理 (実は私もよくわからぬ w) だろうから,この記事の (一) で紹介した《高校数学で理解する感染症の数理 (2021年1月4日版)》(筆者は愛媛大学理学部理学科数学・数理情報コース教授松浦真也先生) を勉強して欲しい.
この松浦先生の丁寧な解説も理解できぬというなら,新型コロナウイルス感染症の科学については口をつぐんでいるのがよい.
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