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2021年9月 8日 (水)

一国のリーダーは泣かないという俗説を受け売りする人

 JBpress《外野から見た菅義偉首相の不出馬騒動》[掲載日 2021年9月8 06:00] から一部引用する.この記事の筆者は勢古浩爾だが,勢古は私と同世代のエッセイストで,人生論を多く書いてきた作家である.しかし政治や社会評論は不得意のようで,かといって専門分野があるわけでもない.そのためか,あまり事実を調べずに書き飛ばす傾向がある.
 
ともあれ、政治家たちは「驚き」の感想を述べ、二階幹事長はいつもの木で鼻をくくったような顔で「(首相が)熟慮の上、高い立場から決断した」と述べたにとどまり、小泉進次郎はなんに感極まったのか涙を流した。それを見てわたしは、ああもしここがアメリカなら、進次郎が大統領になる目は永遠に消えたなと思った。この程度のことで公然と涙を流すような軟弱な政治家は、一国のリーダーをとても任せられないからである。
 
 米国では,政治家は国民の前では泣いてはいけないとされている,という俗説がある.泣くということは精神的なタフネスに欠けているのであり,そういう人物に政治をまかせてはいけない,ということのようである.この説の出処は知らないが,たまーに書いている人をみつけることがある.(外山滋比古は著書『老いの整理学』に《アメリカでは、人前で泣いてはいけない、ことにエリート、リーダーに涙は禁物だという暗黙のコンセンサスがあるようだ》と書いている.出典を示していない上に「あるようだ」と書いてうまく逃げているので,ホントかどうか不明)
 だが,この説の出処は知らないが,真偽を私は知っている.
 例として挙げれば,オバマ元大統領は五年前,銃規制強化の大統領令を発するときに泣いた.(BBC《オバマ米大統領、涙ながらに銃規制強化訴え》[掲載日 2016年1月6日])
 また大統領として最後の演説のときにも泣いた.(アバマイメージ《オバマ大統領、最後の演説で涙》)
 オバマ氏は割とよく泣く人だった.
 バイデン現大統領も,就任以来何度も泣いている.(AFP BB News《バイデン氏、亡き息子の名冠した基地で感極まり涙 首都へ》[掲載日 2021年1月20日 10:35])
 古い話では,外山も『老いの整理学』に書いているが,米国第三十七代大統領のリチャード・ニクソンは,ウォーターゲート事件で窮地に立たされ,テレビに出た時に泣いた.(もともと涙もろい人だったと書いている伝記だかを読んだことがあるが,誰の書いた本か忘れた)
 このように,ちょっと調べただけでも,米国大統領は結構泣いていることがわかる.最近の米国大統領が泣いたシーンは写真が残っているので,隠しようがない.昔のことを詳しく調べれば,もっと「泣いた大統領」の例は出てくるだろう.
 しかるに勢古浩爾は《ああもしここがアメリカなら、進次郎が大統領になる目は永遠に消えたなと思った。この程度のことで公然と涙を流すような軟弱な政治家は、一国のリーダーをとても任せられないからである》と書いた.ダメだなあ.テレビや新聞のレベルでいいから,もっと調べてから書いてくれ.

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