食中毒一歩手前の肉ワンタン
珍しい物を見た.以下はその話.
もう何年も前になるが,現在は年金暮らしの私がまだ食品企業の現役会社員であった時のこと.
その会社の子会社の中に,マーガリンを製造している会社と,焼売などの惣菜を製造している会社があった.
私は親会社の品質保証部門の長で,その両子会社の食品衛生を指導していたのだが,幸いなことにいずれも食中毒事故を起こしたことはなかった.
そのため,重大な食中毒事故を起こす可能性が高い商品の実物をこの目で見たことはなかった.
およそ食中毒は,飲食店や家庭で発生することが多い.工場で製造された製品が原因で起きた食中毒はあまりないと言っていい.
工場製品は大抵の場合,包装されているが,食中毒菌に汚染された食品は,その包装状態が異常を呈することがあり,そのため喫食に至らずに済むことが多い.これが飲食店や家庭で作られた料理・食品に比較して,工場製品を原因とする食中毒の少ない理由である.
その「異常」とは,保存しているうちに包装が膨らむことである.
この「膨らむこと」は,包装の内部で発酵が生じていることを示している.
必ずしもすべての場合に,この発酵の原因菌が食中毒菌であるとは限らないのだが,喫食したときの発病リスクはかなり高い.
さて先日,私は藤沢駅北口のスーパーダイエーで,紀文の肉ワンタンを購入した.
下の画像がその商品の写真だが,冷蔵庫で保存しているうちに,トレーにかけたラップが異常に膨らんできた.
この記事をアップするのは八月三十日だが,賞味期限は九月二日であり,まだ賞味期限前である.
下の写真は包装された商品を横から撮影したものだが,指でラップの表面を叩くと,パンパンに膨らんでおり,そのうちに破裂しそうな勢いである.

ポリスチレン製のトレーにラップをかけると,ラップに張力がかかるので,表面は平らになる.
ところが八月二十八日頃から,この商品は表面がプックリと膨らんできたのである.つまり明らかに中でガスが発生している.
私はかつて静岡県の依頼で,中小食品会社に勤務している社員や,静岡県立大学の学生を対象にして,毎年夏に食品衛生の講義をしていた.
その講義で「缶詰,レトルトパウチ,真空包装食品,トレー&ラップ食品などが膨らんだ場合,食品中で食中毒菌が増殖して発酵あるいは腐敗し,その結果発生したガスで内圧が高くなったことによるものである可能性が高い」と述べてきたが,実はその種の微生物汚染された製品の実物は初めて見る.
それほど包装内部での発酵はレアな現象なのだが,実物を見て「ほお,なるほど」と感心した.
たぶんこの肉ワンタンは,製造ラインの異常により,加熱が不充分であったと考えられる.加熱不充分な食肉加工食品は,食べれば食中毒になる可能性が高い.
私が購入したのと同一ロットの紀文の肉ワンタンを,誰も食べていないことを祈る.
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